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コト八日―二月八日と十二月八日 (双書フォークロアの視点 (8))


コト八日―二月八日と十二月八日 (双書フォークロアの視点 (8))

 本書の題名、「コト八日」とは、何でしょうか?
 それは、忘れられつつある、日本の風習の一つです。

 コト八日は、一年に二回、やってきます。十二月八日と、二月八日です。
 この二日間に、特別な行事を行なう地方が、かつては、日本の各地にありました。

 現在、十二月八日と二月八日といえば、「針供養の日」という地方が、多いでしょう。
 本書によれば、針供養とは、コト八日の変種らしいです。
 昔は、さまざまな行事を行なうコト八日がありました。それらのうちから、なぜか、針供養だけが生き残っている状態のようです。

 今や、コト八日は、ほとんど消え去ろうとしている風習です。コト八日の解説書も、ほとんどありません。
 本書は、コト八日について、まとまって読める、貴重な解説書です。日本各地のコト八日の風習が、取り上げられています。

 分野としては、民俗学の本ですね。日本の民俗学に興味がある方は、ぜひ、お読み下さい。

 日本の妖怪に興味がある方も、本書を読むといいでしょう。
 なぜなら、「コト八日には、妖怪が現われる」という伝承が多いからです。

 例えば、コト八日の晩―多くの場合、八日の前夜の七日の晩―を、「おっかなの晩」と呼び、魔物が出歩くとする地方があります。
 かと思えば、コト八日には、「ミカリ婆さん」や、「ようかぞ」や、「一つ目小僧」が来るとする地方もあります。コト八日専用の妖怪が来るわけですね。

 コト八日に妖怪が来るのは、元は、「神が来る」はずだったのではないかといわれます。
 「神さまのために、物忌みをする」習慣だったのが、いつの間にか、元の意味が忘れられ、物忌みの習慣だけが伝えられたとします。「なぜ、物忌みをするのか?」という問いに対して、「それは、恐ろしいものが来るからだ」と説明され、妖怪が現われることになったのだろう、というわけです。

 本書には、このようなコト八日の風習が、たくさん載っています。興味深いですね(^^)

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

十二月八日と二月八日      山口 貞夫【やまぐち さだお】
おっかなの晩        金塚 友之丞【きんづか とものじょう】
こと八日と山の神         土橋 里木【つちはし りき】
師走八日とオッカナの晩     佐久間 惇一【さくま じゅんいち】
正月のコト節供         井之口 章次【いのぐち しょうじ】
ミカワリと三隣亡【さんりんぼう】 小島 瓔禮【こじま よしゆき】
田の神信仰と二月八日の伝承   藤田 稔【ふじた みのる】
ミカリ婆さんの伝承         大谷 忠雄【おおたに ただお】
こと                西谷 勝也【にしたに かつや】
山と里の事八日感覚
 ――会津地方の場合――   橋本 武
コト八日           北島 寿子【きたじま としこ】
静岡県の「コト八日」伝承
 ――その事例と考察――    富山 昭【とみやま あきら】
コト八日について          斎藤 武雄【さいとう たけお】
コトとその周圏         小野 重朗【おの じゅうろう】

解説             大島 建彦【おおしま たてひこ】
参考文献



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