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魔法少女の系譜、その107~『ウルトラマンA【エース】』~


 今回は、『ウルトラマンA【エース】』を取り上げます。
 八つの視点で、『ウルトラマンA』を分析します。

[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?
[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?
[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?
[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?
[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?
[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?
[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?
[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

の、八つの視点ですね。


[1]魔法少女の魔力は、何に由来しているか?

 『ウルトラマンA』のヒロイン南夕子は、最初は、普通の人間でした。それが、M78星雲からやってきた宇宙人のウルトラマンAに取り憑かれて、超常的な能力を発揮できるようになります。
 南夕子は、「憑依型」の魔法少女ですね。

 ところが、シリーズの半ばに、「南夕子は、じつは地球人ではなかった。かつて、月で高度な文明を栄えさせた月星人の末裔だった」という設定が明かされます(*o*)
 月星人には、自分の体を巨大化させたり、テレパシーを使ったり、空を飛んだりといった超能力があります。つまり、南夕子は、「生まれつき型の魔法少女」でもありました。
 ウルトラマンAの能力と命を預けられ、北斗とともにウルトラマンAに変身したのは、憑依したウルトラマンAの力でした。それとは別に、月星人の力も持ちました。

 南夕子は、憑依型と生まれつき型と、二重の魔法少女でした。

 なお、これまで、南夕子は成人だと書いてきました。が、正確な年齢は、十九歳です。『ウルトラマンA』は、昭和の時代の作品ですから、当時としては、ぎりぎり、「成人前の少女」といえる年齢です。最高齢の魔法少女ですね(笑)
 ただし、作品の中では、少女扱いされることは、ありません。超獣攻撃隊TAC【タック】の一員として、一人前の働きを求められています。


[2]大人になった魔法少女は、どうなるのか?

 南夕子は、シリーズの半ばで―正確には、二十八話で―、ルナチクスという超獣を倒すと、月星人の正体を明かします。それまで、ずっと隠していて、それらしいことを匂わせたことは、一切ありませんでした。
 それと同時に、南は、北斗に地球のことを託して、冥王星へと旅立ちます。冥王星には、月星人の仲間がいるからです。

 じつは、ルナチクスは、かつて、月星人の文明を滅ぼした超獣でした。南夕子は、ルナチクスを倒すために、月星人の生き残りが逃げた冥王星から、地球に派遣されていたのでした。
 目的を果たしたために、南夕子は、彼女にとっての故郷である冥王星へと帰ります。

 ここで、南夕子は、『ウルトラマンA』から、事実上、退場してしまいます。その退場の仕方は、あまたの「生まれつき型の魔法少女」と同じように、「自分の本来いた場所へ帰る」というものでした。

 憑依型の魔法少女として登場したヒロインが、生まれつき型の魔法少女という正体を現わして、自分の故郷へ帰るという、いささか性急な退場でした。

 南夕子は、成人しないまま、物語から去ってしまいます。彼女が帰った冥王星では、彼女は「普通の人」ですから、そのまま成人して、月星人としての「普通の生活」を送るでしょう。
 この点は、『魔法使いサリー』から引き継がれる、日本の魔法少女の型にのっとっています。


[3]魔法少女は、いつから、なぜ、どのように、「変身」を始めたのか?

 南夕子は、ウルトラマンAに憑依されたために、ウルトラマンAに変身します。変身するようになったのは、ウルトラマンAに憑依された時からです。
 何のために変身するかと言えば、超獣と戦うためですね。


[4]魔法少女は、「魔法の道具」を持っているか? 持っているなら、それは、どのような物か?

 南夕子は、ウルトラリングという魔法道具を持ちます。リングの名のとおり、これは、指輪です。北斗星司も、同じウルトラリングを持ちます。

 ウルトラリングは、北斗と南とが、ウルトラマンAに変身するための道具です。二人が互いのリングを接触させると、ウルトラマンAに変身します。

 南夕子が、月星人の正体を現わして、冥王星に帰る時に、自分のウルトラリングを北斗に渡します。一人になった北斗は、両手に一つずつのリングをはめるようになります。以後は、北斗が、一人で両手のリングを合わせて、ウルトラマンAに変身します。


[5]魔法少女は、マスコットを連れているか? 連れているなら、それは、どのような生き物か?

 南夕子は、マスコットは連れていません。


[6]魔法少女は、呪文を唱えるか? 唱えるなら、どんな時に唱えるか?

 南夕子は、変身の際に、北斗星司とともに、「ウルトラタッチ!」と叫びます。これは、呪文というより、変身ヒーローにお約束の「技名を叫ぶ」に近いです。


[7]魔法少女の魔法は、秘密にされているか否か? それに伴い、視点が内在的か、外在的か?

 南夕子と北斗星司がウルトラマンAに変身することは、秘密にされています。これは、ウルトラシリーズに共通のお約束ですね。


[8]魔法少女は、作品中に、何人、登場するか?

 『ウルトラマンA』には、南夕子以外、魔法少女と言える存在は、登場しません。なので、魔法少女は、一人です。


 南夕子は、憑依型と生まれつき型と、二重の魔法少女であることが、ユニークですね。いろいろな意味で、『ウルトラマンA』は、画期的な作品でした。
 変身ヒーローものの主役に、女性を起用して、「変身ヒロイン」を登場させたのは、昭和四十七年(一九七二年)という時代を考えれば、斬新でした。

 これには、当時の子供向けテレビ番組の状況が影響しています。当時は、子供向けの特撮テレビ番組が、百花繚乱でした。
 昭和四十七年(一九七二年)に放映されていた特撮番組を、挙げてみましょう。『アイアンキング』、『愛の戦士レインボーマン』、『怪傑ライオン丸』、初代の『仮面ライダー』、『シルバー仮面』、『人造人間キカイダー』、『好き!すき!!魔女先生』、『スペクトルマン』、『超人バロム・1』、『突撃!ヒューマン!!』、『トリプルファイター』、『変身忍者 嵐』、『ミラーマン』……二〇一九年現在では、考えられない数の特撮番組がありました。
 これらに加えて、NHK少年ドラマシリーズで、特撮を使った『タイムトラベラー』と、『続 タイムトラベラー』も放映されました。

 特撮おたくにとっては、天国のような環境でした(笑) でも、そのぶん、視聴率競争も激しかったのです。とにかく、他の特撮番組と差別化しないと、企画すら通らなかったでしょう。
 こういう中で、「ウルトラマンに変身するのが、一人ではなく、男女のペア」という設定が生まれたのだと思います。南夕子は、変身して戦うヒロインの初期の例となりました。

 特撮番組の戦う変身ヒロインとしては、南夕子より、月ひかるのほうが、わずかに早いです。月ひかるは、『好き!すき!!魔女先生』の主役ですね。
 日本の特撮番組に、最初に登場した変身ヒロインは、おそらく、月ひかるです。けれども、南夕子も、ごく初期の特撮番組の変身ヒロインとして、忘れてはならない存在ですね。

 そういえば、月ひかるも、「ムーンライトリング」という魔法道具を持ちます。ムーンライトリングを月にかざして、月軌道上にある宇宙船から、エネルギーをチャージします。
 月ひかるは、南夕子と違って、月星人ではありません。とはいえ、名前にも、魔法道具にも、月のイメージが強いです。南夕子と、月ひかると、同時期の「変身ヒロイン」が月と関係が深いのは、月に女性的イメージがあるからでしょう。

 そして、戦う変身ヒロインのずっと後輩の『美少女戦士セーラームーン』も、月と関係が深いのでした。月=女性戦士のイメージが、長く受け継がれています。

 今回は、ここまでとします。
 次回も、『ウルトラマンA』を取り上げる予定です。




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