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魔法少女の系譜、その98~『タイムボカン』、補足~


 今回も、前回に続き、『タイムボカン』を取り上げます。
 前回に書きましたとおり、『タイムボカン』の本当の主役は、丹平と淳子ではなく、奇想天外なメカニックたちです。だから、題名が、『タイムボカン』なのですよね。

 『タイムボカン』は、ジャンルとしては、魔法少女ものとは、言えません。何というジャンルに分けるべきか、難しいです。それまでの日本のアニメには、なかった世界観だからです。
 あえて言えば、「SFアクションコメディ」でしょうか。前回の『魔法少女の系譜、その97』に対する読者さんの反応がありまして、その指摘で気づいたのですが、米国のハンナ・バーベラ・プロダクションのアニメに似ています。『チキチキマシン猛レース』などですね。直接的な影響があるかも知れません。

 あまりに人気が出たために、『タイムボカン』は、シリーズ化されました。少しずつ設定を変えて、同工異曲の作品が、八年ほども続くことになります。それらの作品群は、『タイムボカンシリーズ』と銘打たれました。

 二〇一九年現在では、『タイムボカン』に始まるこれらのシリーズ作品は、『タイムボカンシリーズ』というジャンルだと見なされています。大量のメカが登場するのに、普通は、「ロボットもの」とは、されません。
 『タイムボカンシリーズ』と言えば、多くの人が、「少年と少女が主人公で、敵役が女一人男二人の三人組で、SFチックな設定があって、面白いメカがいっぱい出てくる、どたばたコメディ」と、認識できるでしょう。
 『タイムボカン』は、一つのジャンルを創始した作品なわけです。偉大な作品ですよね(^^)

 『タイムボカン』がシリーズ化されたのは、日本のアニメ界にとっては、幸運なことでした。
 例えば、『キューティーハニー』のように、非常に画期的で、人気も出た作品であっても、すぐに続編が作られたり、シリーズ化されたりは、しませんでした。
 これには、いろいろな理由があるでしょう。単純に、一九七〇年代の日本では、アニメの生産量が多くなかったことが、一つの原因として、挙げられます。他には、画期的過ぎて、「似たような他の作品」を作れなかった、なども、ありそうです。

 けれども、『タイムボカン』は、シリーズ化されました。この後に、どんなに面白い作品が続いたかは、一九七〇年代に少年少女をやっていた方々ならば、わかるでしょう(^^) 日本のアニメ界に、一つの豊穣な流れを作ってくれました。

 『魔法少女の系譜』シリーズ的にも、『タイムボカンシリーズ』は、重要です。

 正直なところ、『タイムボカン』が単体の作品でしたら、『魔法少女の系譜』では、取り上げなかったかも知れません。淳子とマージョは、広義の魔法少女であって、狭義の魔法少女とは言えないからです。
 しかし、『タイムボカンシリーズ』の次の作品には、狭義の魔法少女が登場しました。そして、その流れが、しばらく続きます。

 次回には、その作品を取り上げます。

 最後に、『タイムボカン』について、もう一つだけ、書いておきます。
 ヒロイン淳子の髪の色についてです。

 淳子は、肉体的にも精神的にも、普通の小学五年生の女の子です。なのに、彼女の髪の色は、青いのです!

 日本のアニメで、それまで、髪の色が緑や青など、あり得ない色で描かれるのは、「ヒトを超えた超人」だけでした。『海のトリトン』の主人公トリトンや、『魔女っ子メグちゃん』の魔法少女ノンなどですね。
 漫画のカラーページまで含めても、『超人ロック』のロックや、『超少女明日香』の明日香のように、「常人以上の力を持つ人」だけが、あり得ない髪の色で描かれました。
 「あり得ない髪の色」は、「超人のしるし」でした。

 ところが、淳子は、「普通の少女」です。なぜ、彼女の髪を青くしたのか、当時のスタッフに訊いてみたいです。たぶん、コメディだから許されると思われたのでしょうね。

 一般的には、日本のアニメで、普通の人の髪の色が、自然にはあり得ない色になったのは、『伝説巨神イデオン』からだといわれますね。これは、おおむね、正しいと思います。
 その先駆として、『タイムボカン』の淳子を挙げておきたいです。



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