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イヌは匂いの夢を見る―なぞに包まれたイヌの嗅覚を科学する (香り選書 6)


イヌは匂いの夢を見る―なぞに包まれたイヌの嗅覚を科学する (香り選書 6)

 イヌの嗅覚を中心に、匂いの研究について、書いた本です。

 この本を読むと、匂いの研究が、あまり進んでいないことに、驚かされます(^^;
 著者の外崎肇一【とのさき けいいち】さんが書いてらっしゃるとおり、匂いの研究には、いろいろと難しいことが付きまとうからです。

 どのように難しいのかは、ぜひ、本書を読んでみて下さい。
 匂いの難しさを知ることは、すなわち、匂いの正体に迫ることです(^^)

 イヌの嗅覚や、匂いの研究について、ばっちり解明されたことを期待して読むと、がっかりするかも知れません。
 けれども、おそらく、この本に書かれている程度しか、人類の匂いの研究は進んでいないと思います。本書は、匂いの研究へのとっかかり、と考えたほうがいいです。

 個人的には、イヌを使った匂いの研究のやり方に、興味を持ちました。
 ただし、イヌ好きの人にとっては、本書は残酷と思われるかも知れません。著者は、かつて、匂いの研究のために、実験で、何頭ものイヌを死なせたことを、正直に告白しています。

 もちろん、イヌを死なせないで済む実験のやり方もあります。
 たいへん「お利口」なイヌと、そのハンドラーとの協力により、素晴らしい実験の成果が出ています。人類とイヌとの未来を感じさせる成果です(^^)
 その成果についても、本書に載っています。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

はじめに

一章 嗅覚の研究
 一、嗅覚と味覚
 二、イヌと人
 三、ネコと人
 四、日本のイヌの歴史
 五、感覚の種類と刺激の種類
 六、匂いがあまり解明されていないことを知っていますか
 七、匂いの嗜好性
 八、嗅覚の研究は難かしい〔注:原文のまま〕
  (一)感覚の研究  (二)イヌの嗅覚の研究

二章 イヌと人間の鼻
 一、なぞに包まれたイヌの嗅覚の生理
 二、未開拓な研究分野
 三、匂い伝達のメカニズム
  (一)鼻の構造  (二)匂いの情報のとらえかた

三章 イヌは匂いの夢を見る
 一、イヌの匂い受容器の広さ
 二、イヌの匂い応答
  (一)イヌと匂い  (二)動物臭の匂いについて
  (三)イヌと鼻を比べる動物えらび  (四)動物臭へのイヌの嗅細胞の応答
  (五)イヌとカメの鼻の動物臭への応答の違い  (六)イヌとカメの行動観察の比較
  (七)快い匂いに対するイヌの行動
 三、イヌの匂い記憶の長さ
 四、ハンドラーの性格で変わるイヌの行動
 五、鼻の感度は雌イヌのほうが上
 六、鼻を使わないで匂いを嗅ぐ?(鋤鼻器【じょびき】の働き)
 七、イヌの鼻は夜のほうが良く働く

四章 イヌはどのように匂いをとらえるのか
 一、人間と同じようにイヌも味と匂いが大切
 二、二種類あるイヌの匂いのとり方
 三、イヌは嗅覚と視覚の両方を用いている
 四、優れた嗅覚は素質と訓練による
 五、鼻の高さの空気の流れと天候関係
 六、吸気と呼気では空気の流れる部位が異なる?

五章 経験したアメリカのイヌ
 一、アメリカでの三つのエピソード
  (一)安楽死について  (二)イヌ好きの人か判断するイヌ
  (三)緑色の目をしたテリア

六章 匂い探知犬「マリーン」
 一、人間の病気の匂いとイヌ
 二、鼻のよいイヌ
 三、「マリーン」との出会い
  (一)最初の出会い  (二)二度目の出会い  (三)脳波記録余談
 四、がん探知犬誕生
  (一)がんの匂いを捜す  (二)もうひとつの結果
 五、病気には匂いがある

七章 がんの匂い
 一、がんの匂いはどんな匂い
 二、がんは匂いでわかる
 三、外国での研究 がん探知犬のはじまり
 四、イヌの訓練
  (一)麻薬・爆発物発見の訓練は楽ではない  (二)がん探知犬の訓練

八章 イヌの嗅覚の未来
 一、匂いセンサー
 二、嗅覚の訓練と遺伝子研究
 三、がん探知犬でのテスト
  (一)培養がん細胞の匂い  (二)試行錯誤で選ぶ匂いとがんの匂い
 四、近未来の匂いの話
  (一)匂いの文化  (二)匂いのわかるロボット

おわりに
謝辞
参考文献



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