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昔話のコスモロジー―ひとと動物との婚姻譚 (講談社学術文庫)


昔話のコスモロジー―ひとと動物との婚姻譚 (講談社学術文庫)

 昔話や民話と呼ばれるものの、構造を解析した本です。
 単純に、お話を楽しみたい人には、向きません。それには、もっとふさわしい本が、いくらでもあります。

 昔話や民話と呼ばれるものを、分析してみたい人には、最適です(^^)
 昔話には、明確な構造があります。それは、昔話を語り伝えてきた人々の心性を表わしています。そういったことが、明るみにされてゆく過程が、面白いです(^o^)

 主に、日本の昔話が扱われていますが、その他の世界の昔話も、たくさん登場します。
 それは、比較対象とするためです。比較するものがないと、どこにどんな特徴があるのか、わかりにくいですからね。

 本書は、昔話の中でも、「ひとと動物との婚姻譚【こんいんたん】」に、焦点を当てています。この手の話は、たいへんよくあるパターンだからでしょう。
 ぱっと思いつく範囲でも、「蛇婿【へびむこ】入り」や、「鶴【つる】女房」など、有名な話がありますよね。

 これらの日本の昔話は、例えば、ヨーロッパの昔話と比べて、どこがどう違うんでしょうか?
 それは、日本人のどんな心性を、表わしているのでしょうか?

 本書に、答えがあります(^^)

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

序章 民話の比較研究
   昔話・民話とは何か  民話の比較研究の必要性と可能性

第一章 ひとと動物との婚姻譚――動物の夫
 I 動物が、あることの代償として娘を要求する
   日本の異類【いるい】婚姻譚の比較研究  日本の異類婚の例――猿婿入り
   「猿婿入り―畑打ち型」  父は猿を猿として見、しかも友好的   末娘の決意
   「猿婿入り―里帰り型」の場合  日常感覚からくる嫌悪感  導入部による分類
   など
 II 夜の来訪者
   『古事記』の「三輪山伝説」  昔話としての「蛇婿入り」
   ヨーロッパには見あたらない話型  朝鮮半島の蛇婿譚   「かにと結婚した女」
   婿がかにでも親は驚かない  文芸の登場者としてのかに
   生き物はみな人間の姿と形になることができる
 III 神の申し子
   「たにし息子―打出の小槌型」  たにしを拾う語り方と生む語り方
   娘と父親の世俗的判断  「蟾【ひきがえる】息子」  変身は魔術的行為でない
   「蛇婿」  結婚も変身も別離も魔術師的教団の支配のもと

第二章 ひとと動物との婚姻譚――動物女房
 I 動物が娘の姿で妻にくるが、正体を見られて去る
   「つる女房」  ことばにしないで別れを味わう  自然な変身
   「蛙【かえる】女房」  女房の素姓への疑いと追放
   日本の異類婚姻譚にみられるふたつの文芸的特質
   など
 II 動物が娘の姿で妻になり、正体を暴露されて怒って去る
   「虎女房」  「天人女房」との構造的類似
   夫にとって別れは悲しいものではない  魔術によらない変身
 III 動物が娘の姿をしているとき、むりに妻にされる
   「天人女房」  妻は羽衣を発見するとすぐに去る決心をする
   妻を探索にいく話  天は板の床、天人は農民的――水準化作用
   日本の異類婚の昔話は別れを好む  「人間の妻になった鴨【かも】」
   など
 IV 第一章と第二章のまとめ
   民話の比較研究  これまでの分析の整理  ヨーロッパの異類婚姻譚の特徴
   日本の異類婚姻譚  西洋化された文明の下に自然に近い考え方がある
   異類配偶者への強い拒否  素姓がばれれば結婚生活は破滅する
   美しく悲しい別れ  図式的にまとめると

第三章 異類婚姻譚からみた日本昔話の特質
   異類パートナーは来訪する
   来訪したパートナーは何をするか、その結果何が起きるか  「つる女房」
   「蛙女房」  主人公は結末で再びひとりになる  エピソードの接続機能
   など

あとがき
索引



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