- 運営しているクリエイター
#俳句
自由俳句 #21 鳥鍋
腹すかせ行くよ冬至の月の下
冬至の空は、明るく雲が速く流れていく印象です。忘年会で集まった座の上に月が浮かんでいます。お酒か寒さのせいか目尻に涙がたまり、光を滲ませます。
✳︎
鳥鍋
手の内へ紙の把手を三つ提げ
電飾や空へと掛けるオリオン座
金色のリボンが袋の口絞る
鳥鍋や箸を持つ手の薬指
自動販売機開けば駅寒し
四色のマークの車街冴ゆる
背表紙の分厚さ第二関節ほど
自由俳句 #20 ありがとさん
「止まりますランプ」は赤ぞありがとさん
クリスマスが近づいて街の賑わいを感じます。「有りがたうさん」という、川端康成の小説を原作とした映画がありました。伊豆から東京へ向かうバス、道ゆく人とすれ違うたびに運転手は「ありがとう」と声をかけて行きます。
✳︎
ありがとさん
唐草の風呂敷置かれバスの棚
冬の田の畦踏みならす獣をり
ふと悲し環状線を冬の暮
外套は吸はぬがゆえに煙草臭し
自由俳句 #14 しだれ紅葉
憲法の内の自由は泳ぎにくし
街宣車烏と帰る秋の暮
電柱の傾いてゐる刈田道
秋風や母のメールへ空返事
寿司どれもネタの小さき十三夜
思ひ出やしだれ紅葉の先白む
独身は老後まで楽散る紅葉
父母の家行き来轍の霜柱
なぜ離婚したのと冬の市歩く
冬も半ズボン人を蹴りたる足
ぎんが
自由俳句 #12 月の車
スポーツの日の財布に軍手履かせけり
今年の10 月11 日は、スポーツの日でした。体育の日で祝日だと思っていたら違うのですね。Siri にスポーツの日を尋ねると
「祝日ではありませんでしたよ」
と言われ、ぎくりとしました。
✳︎
#12 月の車
父母の借家どちらも鬼門足袋寒し
明日の作業服着て横たはる夜長かな
葉脈の栞が透けて灯火親し
唐揚げの鶏の形なき残暑かな
秋の暮パト