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#推薦図書

『ルバイヤート』オマル・ハイヤーム

『ルバイヤート』オマル・ハイヤーム

ペルシアの詩人、ウマルの四行詩ルバイヤートを黒川恒男訳で読んだ(青空文庫に小川亮作訳がある)。この詩人は、同時代の数学者と混同されてきたようである。

詩集には、酌人である美しい若者や盃、酒壺などを詠んだものが多い。それは、宗派の定める戒律よりその実質的な徳や美観を重視するためであったと思う。この詩人は、悲しむ人や賢人、清らかな人たちへ酒を飲もうと呼びかける。その手にある盃は、以前は人であった土か

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虫眼鏡で観る世界〜『中谷宇吉郎の森羅万象帖』〜

虫眼鏡で観る世界〜『中谷宇吉郎の森羅万象帖』〜

初めての化学実験は、結晶をつくることでした。小学生のときみょうばんや氷砂糖、ハイポといった結晶をはじめ、フェルトと液体接着剤で人工雪を作ったりもしました。原子や元素という言葉を知ったのもその頃です。

 この本は、「雪は天からの贈り物」で知られる中谷宇吉郎の生涯を雪や火花放電の研究で撮られた写真からたどるものです。宇吉郎は、「天災は忘れた頃にやってくる」で有名な寺田寅彦の弟子でもあり、研究のほか随

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