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『ルバイヤート』オマル・ハイヤーム

ペルシアの詩人、ウマルの四行詩ルバイヤートを黒川恒男訳で読んだ(青空文庫に小川亮作訳がある)。この詩人は、同時代の数学者と混同されてきたようである。

詩集には、酌人である美しい若者や盃、酒壺などを詠んだものが多い。それは、宗派の定める戒律よりその実質的な徳や美観を重視するためであったと思う。この詩人は、悲しむ人や賢人、清らかな人たちへ酒を飲もうと呼びかける。その手にある盃は、以前は人であった土から陶器師が捏ね上げたものであり、聖句が施されている。酒壺は、転じて人の頭となり、憂いや知識を満たす。ウマルが数学者と同一人物だと言われると、それに通じる美観があるような気がしてしまう。

もちろん飲酒を勧める詩ではないが、朗らかな調子で詠まれていることが伝わる。だからこそ、切実な愛や哀しみもまたその背後に見え隠れするのだ。酔いどれを演じてはいるが、神聖を帯びた詩句の美しさがある。フィッツジェラルドの英訳があるそうなので、そちらも気になった。

紹介した本 :

・ルバイヤート. オマル・ハイヤーム, 黒川恒男訳. 電子書籍

・ルバイヤート. オマル・ハイヤーム, 小川亮作訳. 青空文庫

ぎんが

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