オスシトキオ

ポップな男性。

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「今あなたの後ろにオススメが」あらすじ

桜子と未知は、同じ大学に通う友人。昼下がりの午後、カフェで休憩していると、桜子がこんな話を始める。ある女の子がメリーという人形を可愛がっていました。ところが、引っ越しのさい、古くなった人形を捨ててしまいました……。これはメリーさんの電話という都市伝説である。 この後、女の子の元にメリーさんから電話があり、恐怖の火ぶたが切って落とされる展開が待ち受けているのだが、桜子の話には、いくつもの異なる点が散見された。未知は、言う。「え、分岐した……?」と。 そして、桜子から語られる

    • 「今あなたの後ろにオススメが」第3話

      〇地下劇場 T「数日後」    小さな劇場である。    まばらな客席に、桜子と未知が座っている。    前方の舞台には、十和子と真顔の中年女性が登壇する。    十和子の所属する劇団の公演である。    十和子は、綺麗なドレスで着飾っており、真顔の中年女性は桜子のあ    のアウターを着ている。    裏返しにはなっていない。    サイズが小さく、ぴちぴちである。    舞台は、目と鼻の先であり、桜子と未知は少しのけぞる。 十和子「私は、貧しい職人によって、作られました。

      • 「今あなたの後ろにオススメが」第2話

        〇カフェ T「数日後」    桜子と未知は、また同じ昼下がりのカフェで休憩中。 桜子「どこかのアパートにババアが住んでいました」 未知「いきなり口が悪いけど、大丈夫?」 桜子「ババアは年を取るごとに、自分の存在が希薄になっていくのを、肌で  感じていました」 未知「肌で」 桜子「若かりし頃の、自分の写真を引っ張り出して、目の前の鏡にうつる自  分の顔貌を、戦慄のまなざしで見返す日々でした。もう諦めがつき始めた  かと思えば、いくら時間が経とうとも、憎悪のような輝きが噴出するば

        • 「今あなたの後ろにオススメが」第1話

          ○カフェ    桜子(18)と、未知(18)。    二人は、同じ大学に通う一年生。    学校が終わり、昼下がりのカフェで休憩中。 桜子「ある女の子が、メリーという人形を可愛がっていました」 未知「なるほどね」 桜子「ところが、ある日、引っ越しをすることになり、そのさい、古くなっ  た人形を捨ててしまいました」 未知「断捨離だ」 桜子「すると、その夜、女の子の元に電話が掛かって来ました。女の子は、  スマホとか持っていなかったので、引っ越し先の家の電話に直接掛かって  来ま

        「今あなたの後ろにオススメが」あらすじ

          今日の雨は、明日が口にくわえて出て行った。

          今日の雨は、明日が口にくわえて出て行った。

          「毒をもって毒を制す~ポイズン~」あらすじ

          若い夫婦が二人で暮らすマンション。ある朝、夫の慎吾は、自分とそっくりな半透明の男を目撃する。慎吾の朝食を勝手に食べているのである。まもなく消え去ったが、その日を境に、そうした怪奇現象が続くようになる。 妻の陽菜は、素知らぬ顔で、慎吾に背を向けたまま、顔すら見せようとしない。二日酔いの慎吾にも、後ろ手で水の入ったコップを渡すほどである。それには理由があるようだったが、慎吾は気にも留めなかった。 半透明の男が、陽菜の用意した朝食をいつものように食べていたとき、事件は起こる。急

          「毒をもって毒を制す~ポイズン~」あらすじ

          「毒をもって毒を制す~ポイズン~」本編

          ○マンション・ダイニング(朝)    寝起きの慎吾(28)。    頭をかきながら、ダイニングに向かうと、半透明の人物(慎吾に似た    男)が、テーブルにつき、慎吾の朝食を勝手に食べている。    メニューは、味噌汁とごはんと焼き魚。    それが二人分。妻の陽菜(28)と、慎吾の分である。 慎吾「え、誰……?! どちらさまですか……?!」    流し台の前に立つ陽菜。    洗い物をしながら、背中を向けたきり、 陽菜「何言ってるの? 早くしないと会社遅刻しちゃうわよ」 慎

          「毒をもって毒を制す~ポイズン~」本編

          天職に出会う寸前の話

          履歴書に貼る写真を駅前の証明写真機まで撮りに行った。出入り口のアコーディオン状のカーテンを閉めて、撮影が始まると、すぐ外で突風が吹き、閉めたはずのカーテンがばさっと開いた。そのときそばを歩いていた通行人と目が合い、ハッとした。その人もハッとしていた。咄嗟に腕を伸ばし、カーテンを閉めると、その人がためらいがちに去っていく足音を注意深く聞いた。その後、カーテンが開かないように抑えながら、慎重に撮影を終えた。無駄に鋭敏な顔つきの証明写真が撮れた。 それを履歴書に貼り、採用された仕

          天職に出会う寸前の話

          暴言は優しい人を傷つける。傷つけたい相手には届かない。

          暴言は優しい人を傷つける。傷つけたい相手には届かない。

          第56回投げやり選手権

          いかに投げやりかを競う。投げやり選手権。 今年は愛媛県松山市松山中央公園野球場(坊っちゃんスタジアム)で開催されました。 栄えある優勝者は、鳥取県米子市にお住まいの会社員山田健吾さん(26)。 山田さんは今年5回目の挑戦で、初の栄冠をつかみました。趣味は牛乳瓶のフタ収集という気の良い青年です。 準優勝は、開催地となった愛媛県松山市にお住まいの会社員堂本喜政さん(52)。 堂本さんは昨年の優勝者でしたが、僅差で山田さんに軍配があがりました。 趣味は近所の犬をたまに見

          第56回投げやり選手権

          倒立する塔の殺人(皆川博子著)

          やることなすことすべてに嫌悪感を与えてしまうジダラック(というあだ名の級友)の終盤近くでの一言が、胸に迫って苦しかった。自覚していることを告白するほど、悲しくつらいものはない。ジダラックというあだ名は、自堕落からきている。根本はミステリーだけど、少女たちの日常ぶりを、あだ名一つでも、垣間見ることができる。ただただ、ジダラックの幸せを願うばかり。最後でぐっと引きつけることを言うジダラックは、けっこうずるいのかもしれない。

          倒立する塔の殺人(皆川博子著)

          ウエディングドレス姿の女性が

          ウエディングドレス姿の女性が、夜道にたたずんでいた。電柱の穴のような明かりに、ふんわりと頭を垂れて。おそるおそる、「失踪中ですか……?」と訊ねると、彼女は、「違います……」といささか驚きを含んだような、か細い声で答えた。そして、バツが悪そうに小さく肩をすくめると、あっという間に、かき消えた。 不思議と恐怖は感じなかった。だが、恐怖は後になって、急に降って湧いてくるものだ。だから、今あったことを全部ひっくるめて、笑っていいとも、と呼ぶことにした。自宅に帰ると、酒をあおって、布

          ウエディングドレス姿の女性が

          二足の靴

          僕は、二足の靴しか持っていないことに、さっき気付いた。スニーカーとスリッポン。仕事はリモートで終わるし、会社に行くのも月に一度くらいだから、靴に目が向くなんてことがなかった。外に出るのも、買い物か散歩くらいで。でも、苦痛じゃないし、むしろ快適な環境だと思う。 家にいながらにして、そのほとんどをオンラインで済ませられるという環境は、子供の頃に憧れたSFの一つだし、そんな世界を体験できるのは、素直に嬉しい。 ところで、スリッポンって、どうして蜘蛛の巣がよく絡むのだろうか。僕だ

          具体的に話すことが苦手な子供だった

          僕は、具体的に話すことが苦手な子供だった。例えば、親に何か食べたいものを聞かれたとき、ハンバーガーを食べたいと思っても、ハンバーガーを食べたいとは言えるけど、それがどこのハンバーガーかを具体的に話すことが恥ずかしくてできなかった。だから、そのへんのスーパーで買ってきたハンバーガーを渡されても、間違いではないから何も文句は言えなかった。 大きなくくりとしてなら言えるけど、詳しくなればなるだけ恥ずかしさが増した。自分の好みが丸裸にされるような、そんな気恥ずかしさを超えた恐怖を感

          具体的に話すことが苦手な子供だった

          つまんないことしか思いつかない。窓の外を見ても、やっぱりつまんないことしか思いつかない。そして、部屋に敷いたカーペットが、ズレているのに、直さない。

          つまんないことしか思いつかない。窓の外を見ても、やっぱりつまんないことしか思いつかない。そして、部屋に敷いたカーペットが、ズレているのに、直さない。

          農場経営者で地方議員。

          農場経営者で地方議員。