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2021年上半期の中国における再生可能エネルギーなど状況、動向レポート

7月28日に、中国の国家能源局(国家エネルギー局)が2021年上半期(1~6月)のエネルギーに関する状況や動向などを記者会見という形で発表しました。

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国家エネルギー局によると、2021年上半期の中国におけるエネルギー使用量は、全体で前年同期比15.8%増加したそうです。

発電設備も増加(増強)しており、前年同期比で6.5%増加したほか、発電量も同13.7%増加したとのことでした。

水力発電、風力発電、太陽光発電などクリーンエネルギー(中国語原文: 清洁能源)の利用量も全体では前年同期比10.2%増加したそうです。

そのクリーンエネルギーの2021年6月末までの状況を個別にみてみると以下のようになります。

〇 電力設備量(全体: 9.71億キロワット)
水力(3.78億キロワット)
風力(2.92億キロワット=陸上 2.81億キロワット、洋上 0.11キロワット)
太陽光(2.68億キロワット)
バイオマス(0.3319億キロワット)

〇 発電量(全体:1.06兆キロワット)
水力(4,826.7億キロワット、前年同期比1.4%増)
風力(3,441.8億キロワット、前年同期比44.6%増)
太陽光発電(1576.4億キロワット、前年同期比23.4%増)
バイオマス(779.5億キロワット、前年同期比26.6%増)

この結果から、いくつかの事実や考察が浮かび上がってきます。

1. 設備量における、再生可能エネルギーの割合は半数に満たない。
報告によると火力発電の設備量は12億6,658万キロワットとのことなので、クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)の総量よりも依然として多く、その他を勘案しないで再生可能エネルギーの設備量割合を考えると43.3%でした。

2. 発電量においては、再生可能エネルギーの割合は更に少なくなる。
報告によると2021年上半期の総エネルギー利用量は3兆9,339億キロワットとのことでした。再生可能エネルギーの総発電量は1.06兆キロワットになるので、その割合は26.9%と設備量の割合より更に少なくなります。

3.  太陽光発電が設備量に対する発電量の割合が低い。
発電量から設備量を割るという単純な計算を行うと、バイオマスが最も高く、水力、風力はその半分くらいで、太陽光発電はその更に半分くらいの割合になっています。

4. 水力発電の発電量が伸びている
太陽光やバイオマスも伸びていますが、それぞれの約2倍の伸び率を示しています。

これは、今年6月に発電能力が1600万キロワットで、中国2位の規模を誇る白鶴灘水力発電所が稼働を開始したり(関連記事)、中国4位(世界では7位)の規模を誇る烏東徳水力発電所も稼働したり(関連記事)、と大型施設の稼働開始の影響もあるのかもしれません。

水力発電に関しては、9月にも四川省に建設中の両河口水力発電所の稼働開始が予定されていますので、下半期も発電量は大きく伸びていくのかもしれません。

5. 風力発電はまだまだ陸上が主役。
最近は、洋上風力発電のニュースなどを日本や海外などでも多くみかけるのと、以前当ブログで紹介した「九大クリーンエネルギー基地」の中で示した地図の中でも、洋上設備も多くなってきているように感じていたので、2.81:0.11という陸上と洋上の発電量比率はいささか意外に感じました。

また、同統計とは別に語られていたこととして、今後の重点施策があったのですが、その中に「エネルギー貯蔵技術の向上」というのがあったのですが、これは2021年上半期中に風力で126.4億キロワット、太陽光で33.2億キロワットの電力廃棄が発生したことも一因にあるようです。

上記の数値から風力、太陽光の利用効率は96.4%と97.9 %になるとのことですが、これをもっと高めていくということと、有事の時のための貯蔵、という観点もあるものと思います。

中国では、2060年までにCO2排出量を実質ゼロにという目標をかかげ、再生可能エネルギーの普及促進などに取り組んでおり、実際に発電量なども増えてはいますが、火力の方も増えているなど、まだまだ火力(≒化石燃料)への依存度も高く、これからどのように推移していくのか要注目です。


参照記事: 


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