実体験した、コミュニティの力(前編)
今回は、自身が参加しているコミュニティでの体験から見えた、コミュニティの魅力を紹介したい。
コミュニティには、偉大な力がある。
それは、ぼく自身が実際にOSIROで運営されている複数のコミュニティに一メンバーとして参加し、そこで予想もしなかった幸せな体験をたくさんしていることが大きい。今回は具体的なストーリーを、ぼくの体験談を通して伝えたいと思う。
すこし長くなるので前編・後編に分けて、4つのコミュニティから紹介する。4つ目、幸せの再分配を目指すコミュニティは後編に。
1つ目、アナログゲーム好きが集まるコミュニティ
「Anaguma」はアナログゲーマーの略で、ボードゲームやカードゲームなどのアナログゲームが好きな人たちのコミュニティだ。
ぼくがボードゲームを好きになったきっかけは、ある編集者に「ディクシット」を薦められたこと。2008年にフランスで発売されたボードゲームで、カードに描かれた絵柄から連想される言葉をワンセンテンス作って遊ぶ…というゲーム。
日本ではそこまで知られていないが、2010年にドイツで開催される世界的なアナログゲームの賞「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」で大賞になったほど、世界中で人気を集めている。
「なんてクリエイティブなゲームなのだろう」と夢中になり、その後もアナログゲームの専門店に行ったりと、アナログゲームに没頭するようになった。気がつけば持っているゲームの数は50個を超えていた。
一方で、日本はゲーム大国なのにも関わらず、アナログゲームの世界で「ゲーム・オブ・ザ・イヤー」を受賞したことがない。
そんな話を広告制作プロダクション「ライトパブリシティ」のみっちー(朝倉道宏)さんと話したときに「日本もクリエイティブなアナログゲームを作れるはずだ」「世界一のアナログゲームを生み出すコミュニティをつくろう」と盛り上がった。
もともとみっちーさんとは「日本をもっとクリエイティブにしたい」という共通する想いを抱いていた。そこで、アナログゲームをつくることは、日本をクリエイティブにするために遠回りのようで近道なのでは、と思い至ったのだ。
たとえ自分で作れなくても、コミュニティに参加した人たちが力を合わせたら作ることができるのでは?という思いから誕生したのが「Anaguma」だ。
アナログゲームを遊ぶ会員と作る会員の2種類があり、これまでコミュニティメンバーで行ったイベントの数は5年間で600回を超える。これも一緒に遊ぶ仲間がいるからこそ。作る会員になるとたとえ初心者でも経験のある仲間がいるからゲームを作ることができるのだ。
毎年自分たちで作ったゲームをゲームマーケットに出展していて、初めてメンバー同士で作ったアナログゲームはゲームマーケットで完売するほどのヒット作になった。
メンバーにクリエイターが多いので、作ることのハードルが低いだけでなく、そもそもゲーム作りのベテランが複数在籍していることも心強い。
Anaguma Houseというメンバーが運営する秘密基地が生まれ、みなが集える場になっているのも活性化の後押しになっている。
一人ではできないことでも、コミュニティがあると挑戦できる。一人では目指そうと思わなかったハードルの高いことでも、コミュニティの仲間の強味を合わせれば実現できてしまう。まさにコミュニティの力を発揮した出来事だった。
2つ目、クルマ好きが集まるコミュニティ
ある自動車雑誌の編集部とともにつくったものだが、ぼく自身カーデザイナーになりたいと思った時期もあったので、クルマ文化発展のためにも純粋なメンバーとして参加していた。
同様にクルマ・クルマ雑誌を愛する「読者以上、評論家未満」の人たちが集まり、クルマについて熱く語り合ったり、情報共有をしたり、イベントに参加したり、イベントを企画したり、クルマを共同所有したりもした。
イベントでは雑誌の誌面で読んでいたことを実際に体験できる貴重な機会となった。
たとえば新型車の試乗イベントでは、おおげさにいうと評論家気分が味わえたし、イベントに参加している熱量の高いメンバー同士のコミュニケーションも楽しい時間だ。
富士スピードウェイで行われるレースにプロの自動車評論家の方と一緒にチーム出場したことも貴重な体験だった。
サーキットを走るために必要なレーシングスーツやヘルメットなどの装備をそろえる必要があったので、メンバーと一緒に買いに行ったり、レースに出場するために必要な国内A級ライセンスを一緒に取得しに行ったり、予定を合わせてサーキットで練習をしたり…と、仲間がいたからハードルの高いことでも準備を進められた。
ぼくも国内A級ライセンスを取得し、サーキットを走行し、レースに出場するという体験をしたのだが、いつかサーキットを走ってみたいと思ってはいたものの一人では決して実現できなかったことだ。さらにレースに出場するなんて思ってもいなかった。とてもエキサイティングな経験になったし、レースに出場したメンバーとは絆が深まった。途中1位だったがガス欠でリタイヤしたことも、今となってはよき思い出だ。
ぼくはこれをコミュニティの「ビッグバン理論」と呼んでいる。
クルマ好きという熱量が高い人たちが集結した場に、編集部からの「レースに出てみたい人いますか?」という呼びかけ(着火)によって、メンバーの熱量が一気に高まり様々な活動が生まれる爆発が起きたのだ。
「ビッグバン理論」のポイントは、本来点在していた同じ熱量の人が一つに集まる→熱量高いメンバーだからこそ楽しめる企画を投げかける→メンバーの熱量が上がり、場の熱量が一気に高まる→メンバー同士の融合が起き、企画に関連する複数の活動が生まれる、という一連の流れだ。
コロナ禍以降はイベントを開催することが難しくなってしまったが、それまで熱量高く、みんなの幸福度も高いクルマ好きの居場所であった。
3つ目、暮らしを楽しみたい人が集まるコミュニティ
「SUSONO」は、松浦弥太郎さんと佐々木俊尚さんらと運営するコミュニティだ。
暮らしを楽しむための共創コミュニティで、食や暮らし、デザイン、移住、家族、音楽などをテーマに、毎月、佐々木さんがゲストとトークをする会に参加できたり、インタビュー記事を読めたりと、ほどよい刺激のある場であった。
松浦弥太郎さんと佐々木俊尚さんの感性とお人柄で集まるメンバーは本当に素敵な方たちばかりだった。
あるとき横須賀の空き家を見に行くツアーが行われ、メンバーの一人が買うことになった。みんなでリノベーションし、完成後はバーベキューや泊まりに行くなど遊び場になった。
こうして価値観の近い人同士が集まり、かつ安心・安全な場までしっかり整備されているからこそ、「おもしろいことをやってみよう!」という気持ちがより創発されたのだと思う。
また、おうちごはん部やパン部、アナログゲーム部、田んぼ部、出版部などSUSONOらしい様々な部活も発足し、毎月オシロのオフィスでアナログゲームをやるように。そのとき一緒にゲームをしていたメンバーと意気投合し、のちに彼はオシロへ転職することになり、現在は開発リーダーとして5年も大活躍してくれている。結果、両者にとって魅力的な出来事になったといえる。
実はほかのコミュニティでも採用につながっていたりする。
価値観の近いコミュニティで出会うということだけでなく、様々な活動時にお互いが素の状態でコミュニケーションが取れていることも要素としてあるだろう。何より価値観のギャップがなく、お互い「採用」という感覚もなく自然に仲間になる感じだ。理想のコミュニティ像というか、コミュニティの価値を体験していることが一番大きいだろう。
ほかにもコミュニティの魅力はまだまだたくさんあり、とてもとても連載の文字量では伝えきれなかったので、4つ目のコミュニティとまとめは次の後編で。
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