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パタゴニア×オシンテック対談~いい会社から聴いた、いい話のお裾分け~イベントレポ(オシンテック編)

2月に神戸で行われたパタゴニアさんとオシンテックの対談は、オンライン配信ナシの現地イベント。来られなかった皆様にもエッセンスをご紹介しまーす!(パタゴニア編はこちら

篠さんの深くいい会社の話のあとは、オシンテックCEOの小田真人が「ルールは社会課題解決の武器のなる」についてお話しましたー。

オシンテックCEO小田真人、お気に入りのパタゴニアさんのベストを着てきました


ルールは誰がどうやって決める?これが原体験

オシンテックを創業したのは2018年。それまでは、電通国際情報サービスというITの会社で2012年から6年間は、シンガポールに駐在し、企業のマーケティングを支援していました。

そこで「ルールの壁」という現実に直面したんです

みなさんによくお話する例の一つが、中国での「エコカー」の基準です。そのころのエコカーの代名詞がトヨタのプリウスでした。しかし中国国内のエコカーの基準では当時、プリウスはエコカーとして認められなかったんですね。一方で、フォルクスワーゲンのダウンサイジング・ターボはエコカーの基準の内側に入った。こうなると税優遇を受けられるフォルクスワーゲンにお客さんは流れてしまう。

こういうルールの壁に阻まれたとき、ソーシャルメディアの分析などを行っていくらマーケティングを頑張ってみたところで、あまり大きな効果は期待できないんですね。

なんでエコカーと呼ばれないんだろう。その基準をいったい誰がどんなふうに決めているんだろう。そのプロセスはどれぐらい公開されているんだろう。・・・こんなふうに「ルール」に着目していくと次々と思考が広がっていきます。

そして見えてきたのは、環境や人権を中心にして「ルールが国境を越えてきた」という事実です。


環境問題で、一気にルールは国境を越えてきた

SDGsは法律ではありませんが、世界の企業や金融や消費者の行動を変える「社会規範」です。こういう行動を変化させるものを含めて僕たちは「ルール」と呼んでいます。

シンガポール時代にルールに着目するようになって気づいたのは、環境問題をコアにして、ルールが次々と越境してきているという事実です。

もともと、大学院時代に環境問題に触れ、ちょうど京都議定書のタイミングだったこともあり気候変動問題には関心がありましたから、そのことに気が付き始めると次々に目に飛び込んでくるようになってきました。世界に先駆けてヨーロッパで作られるルールが、何年かすると日本にやってくる。こんな天気のように西から変わるルールをどうにか可視化できないだろうか。そんなことを思うようになりました。

京都議定書の第二約束期間が採択されたCOP18(画像出典:UNFCCC)


自動翻訳技術が使える時代に!

環境や人権など、人類全体に関連するルールが、その生成過程を含めて見えるようになり、多くの人が関わるようになれば、旧くて問題のあるルールを排して、必要な新しいルールを作るというトランジションのスピードを上げることができるはず。

ルールは自分たちを縛るのではなく、本来は、ありたい社会・環境を作るための人類の武器であるはずだ。

そんな折、急速に自動翻訳技術が進化し、いよいよ実用に耐えるようになった、と感じたのが2018年のことです。


コンセプトだけで創業した2018年

ITビジネスで培ったAIの知識と、ネットワークを活かして、会社を辞し、「環境と人権のルールを可視化するクラウドサービス~RuleWatcher~」を提供するため、2018年に起業しました。

まだコンセプトだけで製品がなかったオシンテック創業当時(2018年)


環境などのルールを可視化するサービス・・・。

まだRuleWatcherがコンセプトだけだった創業当時、がんばって説明してもあまり分かってもらえませんでした。しかしその一方で、「それは大事だ!」と強く背中を押してくれる人たちも、数こそ少ないのですが確実にいらっしゃいました。このことが僕たちをずいぶん勇気づけてくれました。


風向きが変わった菅政権の「脱炭素宣言」

各国政府が発信するテキストデータをクローリングし、自動翻訳技術と自然言語処理で、海洋プラスチック問題や、気候変動、淡水資源問題などを共通フォーマットで整理するRuleWatcher。このサービスを試行錯誤ののちにようやくローンチしたのが2020年6月です。

初期のころのRuleWatcherの画面(2020年)

RuleWatcherの情報源はまだまだ乏しく、可視化の軸もいまほど多様ではなかったのですが、それでも応援してくださった方々が少しずつ使ってくださり、創業から丸二年かけてようやくビジネスとして立ち上がっていきました。

世間の評価が明らかに変わったと思えたのが、菅政権の「脱炭素宣言」です。ルールの越境を肌で実感されている企業のサステナブル推進室の方、大学の研究室、シンクタンク、政策立案者など多様な方からのお問い合わせをいただき、様々なプラットフォームとしても機能し始めました。

多様なプラットフォームとしてのRuleWatcher
(イベントで使用したスライドより)


手に入れてほしいのは情報よりも「文脈」

RuleWatcherを提供していて、気づいたニーズは「データの読み方を教えて欲しい」というものでした。国際機関の出す一次情報は、報道情報などと違って文脈がつけられていません。ちょうど星空に喩えるなら、一つずつの星はあっても、物語をもつ星座に見えないというところでしょうか。

こんなふうに情報の点をつないで意味を見出すことをインテリジェンスというのですが、そのインテリジェンスを社会人向けに教える事業(探究インテリジェンスセンター)を2022年7月に立ち上げました。

グローバルイシューの現状を知り、それに対してどんなルールができつつあるのか。そうしたインプットののち、「自分の軸」で情報を読み解いて事業に活かすことのできる人材を輩出しています。


倫理とルール、非営利組織との分断を埋める

探究インテリジェンスセンターでも伝えているのですが、世界の環境や人権のルールの基本線は「倫理」です。複数の国にまたがるルール設定は、(水面下の駆け引きはあるにせよ)どこか特定国の国益を軸に決めることはできません。倫理をど真ん中においたとき、あるべきルールの先生になるのはNGO(非政府組織)です。

国連会議で積極的な発言をするNGO(画像出典:国際連合)

いま毎日たくさんのルールトレンドに触れていますが、NGOの影響力が非常に強いことを実感します。草の根の活動をして具体的なデータを持ち、科学者と連携して政策提言を行う。そして国際会議では、政府間を横断して議論を調整し、国際ルールを取りまとめていくー。ほとんどの日本人が気づいていない重要な働きをしているのがNGOです。

環境や社会に配慮した事業活動を求めるNGOを煙たがる日本企業はまだまだ多く、分断があるのが非常に残念。いまRuleWatcherは、とくにNGOの方には徹底的に価格を抑えた料金で利用してもらい、企業の方とつながっていただけるように促しています。


後追いとズレが垣間見える「エコバッグの大量配布」

しだいに、RuleWatcherの存在意義に気づいていただけるようになり、先進的な企業が増えてきた印象がありますが、日本企業の多くがまだまだ後追い状態で、本質的に求められていること、やるべきことからズレた活動も多いように思っています。

使われずに廃棄される大量のエコバッグ(画像出典:ラグハウスTV

先日参加したとある大規模な「サステナブルイベント」では、入り口で大量の「エコバッグ」が配られていました。エコバッグは、一般的なナイロン製でレジ袋の800倍の環境負荷があり、オーガニックコットン製なら20000倍の環境負荷があると言われています。つまり、それだけ繰り返し使って初めてレジ袋と成績がイコールになる。

これでは、売る理由がかわっただけ。問題の本質である量産を止めることになっていないんです。

この点、篠さんが先ほど「認識に基づいて」事業活動されているとおっしゃっていたこと、「症状ではなく原因にアプローチすること」というのは本当に流石だと思いますね。

プラスチック規制は近い将来に国際的な法的根拠を持つ(イベントスライドより)

プラスチック問題の解決は、プラの総量を減らすこと、そして代替物での負荷を増やさないこと。これがいま求められている本質です。世界の議論がそこに向かっていることに気づいてほしいと思っています。

過度に煽られた欲望と消費の増大のパラダイムから抜け出さないといけない。僕たちがいま立っている場所は、子どもたちの未来を犠牲にしたビジネスだらけなんです。


知の国境を越えたい

2023年、オシンテックはもう一つ違うステージに進みます。それは、スウェーデンのシンクタンクとのパートナーシップです。

スウェーデンのシンクタンク「Intelligence Watch」代表のAnders Olshov氏と神戸にて

環境や社会の問題をインテリジェンスで深く切り込み、優れたレポート(政策提言)を出す、スウェーデンのシンクタンク「Intellgence Watch」とパートナーシップを結び、共に世界が求める解を発信していこうとしています(※近日記者会見を予定しています)。

僕たちが注目しているルール、これがあるべき集団の意思決定となっていくようにオープンにしていく。「世界のルールをみんなの手で」というVisionの元にそれを推し進めていきます。

→→→二社の話のあと、さらに深い対話が続きます!(対話編へ)


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