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ハムスターから見る世界【ショートショート】

今日も忙しそうなあなたを見てる。

ふかふかの草。
遊べる滑車。
いつでも飲めるお水に
いつでも食べれるひまわりの種。

でも、ぼくはカゴノナカ


ねぇ、あそぼう?
ごめんね、忙しくて。

ねぇ、今なら遊べる?
ごめんね、バタバタしてて。

ねぇ、いつなら遊べる?
時間できたら呼ぶから、ごめんね


そう言って、
そのあと、気絶するようにテレビの前で寝てた。


ぼくは賢いんだ。
そして、
申し訳なさそうに謝られるのが大嫌いだ。

ぼくは少しずつウソを覚えた。
手間をかけさせないように、
カゴから出れるようになった。

カゴの外は怖かった。
大きな音の出る黒い箱。
高い台。
広い場所。
まるで違う世界だったけど、カゴの外に一歩ずつ進んでいった。

それでも
帰ってくる時間は守ってカゴに戻った。
何事もなかったかのように。

少しずつ行動範囲を広げていった。
まずは部屋。
キッチン、トイレ。探検だった。

でも
必ず戻った。


タネがなくなると、勝手に補充した。

「あれ?私…補充したっけ?
 まっ、あるからいいかな」

と言いながら、カゴノナカを見てた。


少しずつズルくなる。
でも、
そのずるさが必要だった。

きっと、飢え死にしてただろう。
きっと、凍えて死んでいた。


ねぇ、遊ぼう?

もう誘わなくなった。
ぼくは強くなったのだ。


あれ?
本当に、強くなったのだろうか?


さて、解説は下記に。

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