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「言われたこと」と「見たこと」と、どっちが本当?

ある日のこと、「赤信号は渡っちゃダメなのよ。」と、幼いわが子に交通ルールを伝えたお母さん。別の日には、すばやく左右をキョロキョロみて、車が来ないことを確認。「今日は特別!」と言いながら、赤信号の横断歩道を自転車で走り抜けました。さて、その様子をみていた子どもさん。後日、目の前の信号が「赤」でした。横断歩道でキョロキョロして、「今日は特別!」と言いながら渡ろうとしました。「言われたこと」じゃなくて「見たこと」に軍配が上がりました。子どもは見て学ぶことを裏付けるかのようなエピソードです。

だまってゆっくりと伝えると伝わる

このエピソードからみえてくるのは、「幼少期の子どもたちは『見たとおりにやろうとする』」ということ。つまり彼らは、言葉からではなくて、「見る」と「どうすればよいか」がすぐにつかめる時期にいます。ですから台所仕事においても、「見せて伝える」ことがとても大切です。「だまって、ゆっくり」やってみせると、本当に伝わるのですよ。主宰する親子料理教室で、2歳、3歳~6歳の子どもたちには、意識的に「だまって、ゆっくり」やってみせるように伝えています。そうすると、台所仕事のあらゆること、たとえば、台ふきでテーブルをふく、コップをふきんでふく、皿を洗う、トレイにスープ皿を乗せてこぼさないように運ぶなど、どんなことも瞬時につかんで同じようにやろうとします。現実には、腕や手の力がまだ弱くテーブルを布でなでているだけ、といった感じにもなりますが、りりしい顔つきの2歳さんは真剣そのもの。「見た通りにやってみよう」と再現しようとしているのです。
「見ててね」と言っても「見てない」子ども。おうちではどうしたらいいのかな?
教室だと「この人は先生だから、今は見るだけにする」という姿勢が2歳ですでにありますが、お家だと「この人はお母さんだから甘えてもOK!」と、お母さんのお手本そっちのけで見切り発車する子どもたちが多いかも知れません。まぁそれはそれで自由にやっていただく、というのも一手ですよね。

そして、やり方を伝えたい時には、どうしたらいいのでしょうか。一つの方法としてたとえば、隣にいて、だまってゆっくり、こどもと同じ作業をしてみる、というのはいかがでしょうか?親子で楽しく「水餃子」をつくるなら、生地を皮に伸ばしていくのを「親」と「子」とそれぞれにする。子どもには「どうすればよいか」のお手本が「横」にありますから、見たら分かる。生地をどのくらいまで薄く・大きく伸ばすのか、見たら分かる。すると、子どもはとても作業がしやすくなります。もちろん「あんな風につくってみたい」という子どもの意志が最重要。自由につくってもよし、お手本をまねてもよし、そんな自由さの中で、親子で並んで楽しくつくったお料理の味は格別ですよ。

筆者:こどもキッチン 主宰・講師 石井由紀子


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