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#93: こんなときだから♪ドビュッシー〜交錯する西洋と東洋「雨の庭」

ドビュッシー:『版画』より「雨の庭」(1903)

#92 -98のテーマは「雨だれは潤いと切なさの調べー雨と音楽」

異国に思いを馳せるー。
海外旅行が当たり前になった現代ではありますが,今年はコロナの影響で自由な渡航も制限され,もしかしたら昔のように行きたくても簡単には叶わない,というもどかしさを味わうチャンスなのかもしれません。

クロード・ドビュッシー(1862-1918)は,日本を訪れることはありませんでした。

しかし,彼は浮世絵に魅せられ,日本へのあこがれを募らせていました。
家主はドビュッシーの生誕150周年を記念して2012年に開催された「ドビュッシー展」へ訪れたのですが,その展示で,彼が友人に送った歌川広重(1797-1858)「東海道五十三次」の「石場」の絵葉書を見つけました。
(広重といえば永谷園のお茶漬け!おまけのカードを集めてましたww)

「石場」は滋賀県なのですが,当時滋賀県に住んでいた家主は,時空を超えてドビュッシーと滋賀県がつながった気がしてとても感動しました。

19世紀末に起こったヨーロッパでのジャポニズムと1900年に開催されたパリ博覧会を体験したドビュッシーにとって,日本は自国フランスとは全く違う表現をする国としてあこがれたのだろうと想像できます。本日お送りする『版画』も,その影響を感じずにはいられません。

『版画』は三つの曲で構成されていますが,今日はその中から終曲の「雨の庭」をお送りします。

広重の浮世絵はヨーロッパの人々に大きなインパクトを与えましたが,中でも日本人の雨の描き方に驚いたそうです。雨を線で描くという発想についていうと,ゴッホの「日本趣味:雨の大橋」を見れば広重の「大はしあたけの夕立」の影響であることは一目瞭然。ドビュッシーの「雨の庭」は,はっきりとどこの「雨の庭」を描いたのか記されていませんが,ドビュッシーも広重の雨を見たに違いない,と仮定すると,モネの絵画のようなパリの庭園と広重の大江戸の雨が交錯する世界観が感じられ(というか,楽譜が広重の雨の線に見えてくる!!),一気にこの曲から「雨の線」が浮かび上がり,聴くたびに家主の妄想も時空を超えます。

雨がうっとおしいと思った時に,遠い国と時代に思いを馳せながら聴いて欲しい,そんな一曲です。

今日もみなさんにとって,素敵な一日でありますように!


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