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リファ【長編小説】連載中

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愛があったはずの場所に、空白地帯が増えていく。 在日韓国人三世の私は、そのままの自分を受け入れてくれたと初めて思えた扇谷太一と出会い、結婚する。二児をもうけ、穏やかで満たされた… もっと読む
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2021年11月の記事一覧

疑心 _『リファ』#13【小説】

 ベランダの屋根に雨粒が当たり、弾けるような音で目を覚ました。激しい雨が、昨夜から降り続…

ORIAI
2年前
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空白の染み _『リファ』#14【小説】

 予定通りの時刻に東海道新幹線に乗っても、何か忘れ物をしたような心許なさがあった。単身で…

ORIAI
2年前
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母の信頼 _『リファ』#15【小説】

 紅白の鉄塔が車窓に迫ってきた。蝋燭をイメージしたらしいタワーは、何度見ても垢抜けないが…

ORIAI
2年前
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ここじゃない _『リファ』#16【小説】

 窓の外を眺めた。西に向かって走る車は、手を伸ばせば届きそうな距離に山が連なっている。 …

ORIAI
2年前
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煮物とチゲ _『リファ』#17【小説】

 切り干し大根の煮物とタコときゅうりの酢のもの、レタスや薄切りにした玉ねぎとトマトの上に…

ORIAI
2年前
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母の場合 _『リファ』#18【小説】

「せやけど」母が語気を強める。 「それを理由に、卑屈になることはなかった。梨華が出自を…

ORIAI
2年前
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追われる _『リファ』#19【小説】

 ドン。うめき声のような低音が聞こえたような気がした。座っていた椅子が床から突き上げられ、ビクッとして目を見開く。全身に警戒が走ったその直後から、縦向きに揺れた。  足元は海原に変わり、海上に出ていた小さな漁船が台風に巻き込まれたように大きく振動する。揺れは徐々に上下左右に激しくなり、デスクトップのパソコンに向かっていた手を止め、机のふちにつかまる。  ビビビビビビと、緊急地震速報特有の不穏なアラームが鳴る。揺れが収まるまで、ただただ息をひそめた。  震源地の震度は7、

邂逅 _『リファ』#20【小説】

◀︎1話から読む  祖父と祖母が眠る墓は、京都府宇治市の黄檗宗大本山・萬福寺にある。  …

ORIAI
2年前
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祖父の遺志 _『リファ』#21【小説】

 隔世遺伝である。そう、ほとんど盲信しているところがある。ここについて直接話したことはな…

ORIAI
2年前
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せせらぎ _『リファ』#22【小説】

 地下鉄四条烏丸駅を降りて、四条大宮方面に向かって室町通りを上がった。約束まで時間があり…

ORIAI
2年前
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親友の定義 _『リファ』#23【小説】

 親友とはなんだろう。 「私たち、親友だよね?」「親友でしょ」そんなふうに言葉で確認し…

ORIAI
2年前
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被害者を引き受けられない _『リファ』#24【小説】

 「実はね……」友人から打ち明け話をされると、「私もね……」と自分の秘密も語り始めたくな…

ORIAI
2年前
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告白 _『リファ』#25【小説】

「えっ、ゆず茶で二軒目?」わけがわからなかった。 「明日は有休を取ってあって。今夜、グ…

ORIAI
2年前
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