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リファ【長編小説】連載中

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愛があったはずの場所に、空白地帯が増えていく。 在日韓国人三世の私は、そのままの自分を受け入れてくれたと初めて思えた扇谷太一と出会い、結婚する。二児をもうけ、穏やかで満たされた… もっと読む
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最愛 _『リファ』 #01【小説】

とても大切な自分のものなのに、いつも許可なく他人に使われてしまうもの、なーんだ?    …

ORIAI
2年前
27

かくしごと _『リファ』#02【小説】

<<前回を読む_#01最愛  覆いかぶさってくる熱源を、私は求めていた。  ベッドの上で横…

ORIAI
2年前
22

空白地帯 _『リファ』#03【小説】

<<前回を読む_#02かくしごと  理解のない他者と他者の間には、愛は生まれない。  だけど…

ORIAI
2年前
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ふつうになりたい _『リファ』#04【小説】

<<前回を読む_#03空白地帯 「『ご実家のおせち料理は、どんな内容なの? お雑煮は、京都…

ORIAI
2年前
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偏見と鬱屈 _『リファ』#05【小説】

<<前回を読む_#04ふつうになりたい  名刺交換をして知った「扇谷(おうぎたに)」という名…

ORIAI
2年前
13

逮捕とヘイト _『リファ』#06【小説】

<<前回を読む_#05偏見と鬱屈 「梨華さん、仕事どんな感じなん? 余裕ある?」  リビン…

ORIAI
2年前
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しわのあるエンドウ豆 _『リファ』#07【小説】

<<前回を読む_#06逮捕とヘイト  家の中の世界は、小さな私に友好的で親しみ深かった。  在日二世である両親は、「生活は日本にある。ルーツは韓国にある」それ以上でも以下でもない事実として受け止めていた。私と兄にも伝えていた。  両親ともに大学まで進学し、その後も歴史書や学術書を好んで読んでいた。日本のことも韓国のことも中立に見ようとしていた。  母はただ、事実として存在する違いを、その時々で話してくれた。  何気ない会話の中で、在日韓国人が使う日本名には、ある種の

コロナと東京五輪 _『リファ』#08【小説】

<<前回を読む_#07しわのあるエンドウ豆  桜の時期が終わると、草や木々の葉の緑がその色…

ORIAI
2年前
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ファミリー _『リファ』#09【小説】

<<前回を読む_#08コロナと東京五輪  アプリを開き、母からのメッセージを読んだ。さっぱり…

ORIAI
2年前
7

ヨンエの価値 _『リファ』#10【小説】

<<前回を読む_#09ファミリー ◀︎1話から読む 「淡路島ポークのロースト レモンソース」 …

ORIAI
2年前
6

あっち側とこっち側 _『リファ』#11【小説】

「南美貴が逮捕されたニュース、見ました?」  ヨンエさんは、リングイネを口に運びながら…

ORIAI
2年前
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分身 _『リファ』#12【小説】

 最寄駅に着いたとき、スマートフォンのデジタル時計は、15時20分だった。17時すぎには、葉は…

ORIAI
2年前
7

疑心 _『リファ』#13【小説】

 ベランダの屋根に雨粒が当たり、弾けるような音で目を覚ました。激しい雨が、昨夜から降り続…

ORIAI
2年前
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空白の染み _『リファ』#14【小説】

 予定通りの時刻に東海道新幹線に乗っても、何か忘れ物をしたような心許なさがあった。単身で移動することが、もう非日常になっている自分に気づく。  つい数時間前に見てしまった太一のスマホ。そこからの動揺も、続いていた。  駅の売店で買って持ち込んだアイスコーヒーの蓋をあけてミルクを入れようとしたら、派手にこぼした。折りたたみテーブルの上に、どろりとした白い液体がアメーバのように広がる。夫の浮気の可能性を知り、平静でいられる妻なんてきっといない。  私は何に動揺している?