空白の染み _『リファ』#14【小説】
予定通りの時刻に東海道新幹線に乗っても、何か忘れ物をしたような心許なさがあった。単身で移動することが、もう非日常になっている自分に気づく。
つい数時間前に見てしまった太一のスマホ。そこからの動揺も、続いていた。
駅の売店で買って持ち込んだアイスコーヒーの蓋をあけてミルクを入れようとしたら、派手にこぼした。折りたたみテーブルの上に、どろりとした白い液体がアメーバのように広がる。夫の浮気の可能性を知り、平静でいられる妻なんてきっといない。
私は何に動揺している?