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2030年、日本農業の“姿”を考える

2030年は、温暖化と生物多様性をめぐる環境問題にとって大きなターニングポイントになっている。


温暖化についてはCOP26において、2030年で産業革命前から1.5℃以内に収めることが必要と確認された。これからの10年はその目標達成を確かなものにすることが求められる。またプラネットバウンダリーでは生物多様性も不可逆的減少になっている。


今回は、2030年という時代の農業の姿を考える視点として環境と持続可能性、そしてビジネスとライフスタイルという点からいくつかの問題提起をしておきたい。その背景には土壌(農地)の炭素貯留効果が想像以上に高いという評価が明確になりつつあること。なかでも有機農業の効果の高さ、そして生物多様性保全効果の高さが証明されている。


さて、基本的な問いとしては、
まず第一に“農業とは何か”、そして第二に“農業とはだれのものか”という根本的問いを挙げておきたい。二つに共通する問題は“農地”とは、あるいは"農家" とは、という問いにつながっていく。

ここ10年の動きを敷衍すると、2030年までに農業は大きく二つの道に分かれていく。それは"土"と"種"から離れていく農業とその二つにより近づいていく農業である。そして根本的には"土"と"種"から離れる農業を"農業"というかどうかということでもある。

もう一つは、"自給率"と"自給力"という問題がある。農水省はこのカロリーベースでの自給率を高めることを至上命題にしながらも年々低下し、すでに手の打ちようがなく、40%を割り込んでいる。

最近では目先を変えるためか生産額ベース自給率、あるいは自給力ということを強調し始めている。その背景には、“食料安保”という問題がある。

もう一つは、環境問題という視点から、自然資本価値の再評価とその維持、保全の必要性が認識されつつある。日本でいえば、タダと思っていた空気も水もそうではなくなっていることに気づき始め、さらに最近では農地も農地そのものに価値があるのではなく、その“土”の生産力、二酸化炭素貯留効果の高さ、そして生物多様性保全効果への評価がある。そして“土”の生産力は森里川海(自然資産)の連関と水の流れ、自然循環から生み出されていることが証明されつつある。海洋研究者の新井省吾は山の腐葉土を通過した地下水が畑に栄養塩を供給しながら、最後は海底湧水として海の環境を豊かにしていることを実証しつつある。その自然循環のもたらすものは化学肥料や堆肥の比ではない。


彼は森里川海の環境を手入れし、持続的に維持していく仕事を第一次産業をはじめとするすべての産業の土台として“0次産業”と名付けている。
しかし、こうした問題を考える時いつも思うのは、本質論をずらさず考えてみることだ。自給率は誰にとって何ゆえに大事なのか?そもそも農業とは農家だけのものなのか?その農家とはどのような人々なのか?


さて、農業、農家、自給率、自給力などネットで調べれば農林水産省の定義が出てくる。しかもかなり複雑だ。一度調べてみることをお勧めする。さらに、その定義に基づいた農家数の減少とか、耕作放棄地の増大、高齢化とかのデータを見ていくと2030年の農業は惨憺たる姿が見えてくる。

がしかし、本当にそうだろうか?
考えるべきは2030年の社会をイメージする時、
これら定義がそもそも意味を持つかということである。

これから数回、こうした根本的な問いに私なりの考えを示していきたい。

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