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第20話 黄金羊の毛皮

20. 名詞/冠詞

(7月15日 ソン太宅②)

仙台南部の工業団地に建ち並ぶ大小様々な工場の中に、一風変わった白い建物がある。
見ようによっては羊の顔にも見えるのだが、残念ながら、いわゆる「カワイイ」ひつじさんの顔ではなかった。
と言うのも、耳が煙突になっており、目と鼻の穴は窓、口元からは長い舌のような階段がエーと出ている、どちらかと言えば「キモチワルイ」建物だったからである。
おそらくその口の部分が出入り口になっているのだろう、ドアには金色の太い文字で「株式会社ウルウル」と書かれていた。――
ここはソン太の父アイソンが経営する羊毛加工会社の工場なのだが、当のアイソンは数年前から行方不明となっており、現在は父親違いの弟ペリアスが実質的に会社の経営にあたっていた。
だが、このペリアスという男は根っからの遊び好きで、現社長と言っても、実際にはほとんど出社することはなく、毎日遊び呆けていた。
しかも遊び金欲しさに、これまで幾度となく会社の売上金を着服してきたというから始末が悪い。
かつては国内シェアNo.1を誇ったウルウルだが、今や会社はペリアスのおかげで倒産寸前にまで追い込まれていた。――
「なぁ、兄貴。もういい年なんだから、会社は俺に任せなって」
「断る。大体、まともに仕事をしたことのないお前に社長職が務まるわけがない」
もとより次期社長は息子のイアソン(=ソン太)と決めていたアイソンだったが、近年は老齢のため、思うように体が動かず、ソン太が大人になるまでの間は他の誰かに経営を任せようと考えていた。
折しもそこへ現れたのが、以前から会社を乗っ取ろうと企んでいたペリアスだった。
「兄貴も言うなぁ。俺だってそれなりの大学を出て、ちゃんと勉強してるんだぜ。悪いことは言わないから、俺に任せなって」
「お前に任せるくらいなら、親友のケイロンに任せた方がいい」
「フン、あんなウマ野郎に何ができるってんだい? いいじゃないか、……どうせイアソンが大人になるまでの間なんだからさぁ。それとも何かい?」と、不敵な笑みを浮かべるペリアス。「イアソンの身に何が起きても構わない、とでも言うのかい?」
「今度は脅迫か? 相変わらず汚い奴だな」
「人聞きの悪いことを言うなよ。俺はイアソンのことを心配してやってるんだぜ。兄貴の可愛い息子さんのことをよぉ」
昔から自分の利益のためなら手段を選ばないペリアスだったが、それは兄であるアイソンが一番よく知っていた。
「わかった。会社はお前に任せよう」
苦渋の選択ではあったが、イアソンを危険に晒すよりはましだった。
「そうそう、それでいい」
「その代わり、息子には手を出すなよ」
「それは兄貴次第じゃないかな」と、ペリアスが言う。「今後は一切、会社の経営について口を出さないこと。家と財産は没収。イアソンはウマ野郎の所にでも預けておけばいいだろう。どうだい?」
「……」
老いた兄は悲しいかな、非情な弟に対して何も言えなかった。
あくる日、アイソンはペリアスの部下たちによって、人里離れた森の中へと連れ去られてしまった。
それから数年経ったある日のこと、子供ながら正義感の強いソン太は、叔父のペリアスの家――と言っても、もともとは自分たちが住んでいた家なのだが――を訪ねた。
「叔父さん、父さんの会社を返してよ」
「返すも何も、お前が大人になるまでの間、預かる約束だからなぁ。お父さんももう年だし、あの体では会社の経営も大変だったんだろう。今、お父さんに必要なのは休養なんだよ」
「……」
事の経緯はケイロンから聞いていたので、ソン太も大体のことは知っていた。
もちろん、ペリアスの策略も。
ソン太は奥歯を噛み締めながら、しばらくの間ペリアスを睨み付けていた。
「まぁ、しっかり勉強して、早く立派な大人になることだな。次期社長さん」
と、茶を啜りながらペリアスが言う。
「言われなくても、ちゃんとなるさ」
両足の親指にぐっと力が入った。
「ほぉ、大した自信だな。でもな、イアソン。ウルウルの社長たる者、それなりの学力がなければ話にならんぞ。そうだな、最低でもオリュムポス大学を出てもらわんとな」
「え?」
一瞬、力が抜けた。
オリュムポス大学。――実に偏差値100超えの超難関大学である。
ソン太はその附属中学校に通ってはいるものの、オリュムポス大学は無試験かつエスカレーター式で易々と入れる大学ではなかった。
まして、現在の学力では附属高校への進学さえも危ぶまれていることは、ソン太自身にもわかっていた。
「さて、お前に合格することができるかな?」と、茶碗越しにソン太を覗き込むペリアスは、必死に笑いを堪えている様子だった。
一方、ソン太は目の前の悪徳商人に対する憎悪よりも、自分の無力さに強い苛立ちを覚えていた。
「……、帰ります」
「まぁ、精々頑張るんだな。オリュムポス大学に合格したら、またおいで。フガハハハ」
「……、お邪魔し、ました」
悔しくて喉が詰まりそうだった。――
ソン太が家を出ると、ペリアスは改めて茶を啜りながら、窓越しからソン太の小さな後ろ姿を眺めていた。
「お前には無理だよ。フガハハハ」
が、次の瞬間、ペリアスの顔が青ざめる。
「ハッ、あいつ、……靴、片方だけ? ま、まさか」
思わずペリアスは、茶碗を床に落としてしまった。
と言うのも、彼はアイソンとの社長交代の後すぐに、商売繁盛を祈ってアポロンの神託所を訪れていたのだが、その際にこう予言されていたのだ。
「靴を片方だけ履いた者によって会社を奪われるだろう」と。
予言の神アポロンの神託は絶対的なものである。
それゆえ、ソン太の足元に気付いたときのペリアスは、雲の上から一気に地下のどん底にまで突き落とされたような気分だった。――
さて、ソン太が家の近くまで戻ってくると、玄関先でケイロンが出迎えているのが目に入った。
「ケイロン!」と叫ぶと、ソン太は一目散に走り出し、ケイロンの分厚い胸板に飛び込んだ。
すると、ペリアスの前だけでは見せまいと堪えていた涙がどっと溢れ出てきた。
「何も言うな」と、ケイロンはソン太をしっかりと抱き締めた。
ソン太は泣いた。
思い切り泣いた。
止めどなく流れる涙を、沈みゆく太陽が何百何千とある手のひらで掬っては山の向こうへと投げ捨ててくれた。
やがて太陽は自分の役目を終え、今日の日に別れを告げる。――
「俺、必ず合格してみせるよ」
「あぁ、信じてるさ」
「できるよね」
「もちろんだとも」
「俺、頑張るよ」
ソン太に笑顔が戻ってきた。
「よしっ! いいぞ」と、ケイロンも前脚を上げる。
が、それも束の間、
「でもさぁ、……」と、ソン太が目を伏せた。
「今度は何だ?」
「仮に俺が、オリュムポス大学に合格しても、卒業するまで、父さんの会社、……大丈夫かなぁ」
「んー、確かにな。あのペリアスのことだ。会社を潰してしまうかもしれんな」
「そうしたら、どうしよう」
「その時は、……その時さ」と、ケイロンは意味深に微笑んだ。「『黄金羊の毛皮』を知ってるかい?」
「うん。失ったものを取り戻せる、っていう魔法の毛皮でしょ」
「そいつを手に入れるのさ。そうすりゃ、会社だって」
「ハハハハ、無理、無理。大体、どこにあるのさ?」
「ここにあるさ」と、ケイロンはおもむろに前足の蹄の中から1枚の古い地図を取り出した。
「マジ? これ、……本物?」と、目を疑うソン太。
「あぁ、本物さ」
「すげぇ。『黄金羊の毛皮』の在りかが書いてある。これが手に入れば、……」
「どうだい。探す価値はあると思うが」
「うん!」
「ただし、そう簡単には手に入らないぞ。危険な旅になるだろうし、私はこの通りの体だから一緒には行けない。誰か協力者が必要だな。まずはそこからだ」
「だね!」
こうして、ソン太は受験勉強の傍ら、「黄金羊の毛皮」探しの旅に出かける準備を始めることにもなったのだ。

「ども! 家庭教師のタムラです」
「よぉ、先生。いらっしゃい」
「ケイロンさん、今晩は。ソン太はおりましたか?」
「あぁ、2階にいたんで。どうぞ」
「ありがとうございます。んで、行ってきますわ」
「よろしく頼みます」

「どぉれ、やっぞぉ。今日のテーマは『名詞/冠詞』ね。早速、<アテナの黙示録20>を見てみましょ。

<アテナの黙示録20> 名詞/冠詞
【1】冠詞 a, an, the
|★ a は、数えられる名詞の単数形につけて「1つの~/ある~」の意味を表すが、普通は特に日本語に訳さなくてもよい。
||例)This is a book.(これは<1冊の>本です)
|★次の単語が母音(=[ア/イ/ウ/エ/オ]の音)で始まる場合は、a の代わりに an を用いる。
||例1)This is an apple.(これは<1個の>リンゴです)
||例2)This is an interesting book.(これは<1冊の>面白い本です)
|★ the は、既に話題になったものについて「その~」の意味を表す。
||例)This is a book.(これは本です) The book is interesting.(その本は面白いです)
|★ the は、天体や序数、決まった言い方でも使うが、この場合は特に「その」とは訳さない。
||例)the sun(太陽), the first ~(最初の~), in the morning(午前中に), play the piano(ピアノを弾く), …
|★冠詞をつけない表現もあるので注意する。
||例)by bus(バスで), go to school(学校に行く), go to bed(寝る), …

いがぁ、【1】から。まずは冠詞について」
「俺がよく忘れるやつね」
「んだね。英語では、数えられる名詞の単数形には a をつける。よって、『これは本です』を英語にするときは」
「This is a book.」
「てことよん。OK?」
「はい」
「で、チョイと注意なんだけど、次の単語が母音(=[ア/イ/ウ/エ/オ]の音)で始まる場合は、a の代わりに an を使う、ってことね。例えば、apple[アプル](リンゴ)は[ア]で始まる単語だから、『1個のリンゴ』って言うときは」
「an apple」
「そのとーし! 『卵1個』だったら?」
「an egg」
「しょーゆーこと。OK?」
「はい」
「で、例2)みたいに、『面白い本』って言うときも、interesting[インタレスティング](面白い)は[イ]で始まる単語だから」
「an interesting book」
「って、なるわけさ。OK?」
「はい」
「んで、次、the について。the っていうのは、既に話題になったものについて「その~」の意味を表すよ。例えば、『これは本です。その本は面白いです』な~んて言うとき、1つ目の文は This is a book. でいいんだけど、2つ目の文に出てくる『本』は既に前の文で話題になった『その本』なんだから、The book is interesting. ってなるわけさ」
「なるほど」
「じゃあ、the はいつでも『その』っていう意味になるのか、って言うと、そうじゃないときもあるよ。例えば、4つ目の★にあるように、the sun は敢えて『その太陽』(×)とは訳さないよね」
「たしかに」
「あと、a も the もつけない表現っていうのもあるんで要注意だね。例えば、5つ目の★にあるように、『バスで』な~んて言うときは by bus とか、『学校に行く』って言うときは go to school みたいに、こういう場合は bus や school の前に a も the もつけない。じゃあ、どういう場合? って言われると、なんかこじつけみたいな説明になっちゃうんで、ここはひとつ決まり文句ってことで、出てくるたんびに丸暗記しましょ」
「はい」
「んで、次、名詞について、【2】を見てちょ。

【2】名詞の種類
|★英語の名詞には、数えられる名詞と数えられない名詞がある。
||①数えられる名詞……単数形(=1人/1つを表す形)と複数形(=2人以上/2つ以上を表す形)がある。
|||例)book(本), pen(ペン), ball(ボール), student(学生), mother(母)
||②数えられない名詞……複数形がない。(=たくさんあっても、常に単数の扱い)
|||例)water(水), coffee(コーヒー), tea(お茶), milk(牛乳), wine(ワイン), money(お金), bread(パン), chalk(チョーク), rain(雨), snow(雪), time(時間), work(仕事), homework(宿題)

いがぁ。名詞には数えられる名詞と数えられない名詞があるよ。数えられる名詞っていうのは、文字通り『1人、2人、……/1つ、2つ、……』って数えられる名詞で、単数形であれば a をつけるし、2人以上/2つ以上を表す場合はその複数形っていう形を使う。普通は名詞の語尾に s をつけてつくるよ。で、数えられない名詞っていうのは、チョイと注意が必要で、日本語では一見数えられそうなんだけど、実は英語では数えられない名詞っていうのもいくつかあるんで、これはもう1個1個覚えるしかないね。②にいくつか例があるけど」
「え、『お金(money)』も数えられないの?」
「そ。あと、『パン(bread)』とか『チョーク(chalk)』なんかも、英語では数えられない名詞だからね」
「へ~」

【3】名詞の複数形
|★数えられる名詞で、2人以上/2つ以上を表す場合は複数形を用い、普通、名詞の語尾に s をつけてつくる。
||例)two books(2冊の本), many pens(たくさんのペン), some balls(いくつかのボール)

「さて、名詞の複数形について、もうチョイ詳しくやってみよっか、はい、【4】の複数形のつくり方を見ておくれ」

【4】複数形のつくり方
|★ s のつけ方は、名詞の語尾によって決まる。
||① -ch/-sh/-s/-x/-o で終わる名詞 → es をつける。
|||例)dish(皿)→ dishes, box(箱)→ boxes
||②<子音字+ y>で終わる名詞 → y を i に変えて es をつける。
|||例)country(国)→ countries, dictionary(辞書)→ dictionaries
|||※子音字=母音字(=a/i/u/e/o)以外の文字。
||③ -f/-fe で終わる名詞 → f を v に変えて es をつける。
|||例)knife(ナイフ)→ knives, leaf(葉)→ leaves, wife(妻)→ wives, life(生活)→ lives
|||例外)roof(屋根)→ roofs, handkerchief(ハンカチ)→ handkerchiefs
||④①~③以外→そのまま s をつける。
|||例)book(本)→ books, pen(ペン)→ pens, ball(ボール)→ balls
|★ s をつけない複数形もある。
||例)man(男の人)→ men, woman(女の人)→ women, child(子供)→ children, foot(足)→ feet, tooth(歯)→ teeth, this(これ)→ these, that(あれ)→ those
|★単数形と複数形が同じ形のものもある。
||例)fish(魚)→ fish, sheep(羊)→ sheep, deer(鹿)→ deer, carp(鯉)→ carp

「あれ? なんか、前にもやったことがあるような、……」
「うん、たぶん<アテナの黙示録7>の3人称単数現在の s のつけ方だと思うけど、あれは動詞につける s ね。今やってるのは名詞につける複数形の s で、同じ s なんだけど意味は全然違うんで、そこんとこヨロシク~♪」
と、お茶らける俺をよそにして、まじまじとテキストを見つめるソン太だった。
「ふ~ん、s をつけない複数形、ってのもあるのか」
「そうだね。man の複数形は mans(×)じゃなくて men ね。同様に woman の複数形は womans(×)じゃなくて women[ゥイミン]、……発音も注意だね」
「ウーメンかと思った」
「うん、それは白石名物ね」
「ハハハ」
「child[チャイルドゥ]の複数形も発音が変わるよ。[チャイルドゥレン](×)じゃなくて」
「チルドゥレン!」
「そのとーし!」
「foot の複数形は feet か」
「そ。フットボールっていうのは、足1本でボールを蹴るから football って言うんだよね。両足で蹴ったらコケるからな」
「ハハハ、たしかに」
「feet[フィート] は長さの単位にもなってるね」
「うん、聞いたことある。でも1フィートってどれくらい?」
「約30cm、……足の大きさから来てるみたいだけど」
「足? デカくね?」
「まぁ、俺も詳しくはわからんが、それが通説みたいよん」
「歩幅じゃなくて?」
「ほぉ、なるほどね。もしかしたらそうかもしれんよ。大学に行けば、そういう語源を研究する学科もあるから、興味があるんだったらそっち方面に進むのもいいかもね」
「オリュムポス大学にもある?」
「あるよ、……英語学部ね」
「でも、俺には無理かなぁ?」
「そんなことないさ。お前が本気でそこを目指すんだったら、俺もそのつもりで指導するんで」
「マジすか! じゃあ、頑張ります!」
「おしっ! って、どこまでやったんだっけ?」
「ハハハ、そうでした」
「あ、特別な複数形ね。で、単数形と複数形が同じ形のものもあるんで、……3つ目の★ね。ま、例)の他にもあるんだけど、取り敢えずテキストに載ってる単語くらいは暗記しましょ」
「へ~、カープ(carp)って、『鯉』っていう意味だったんだ」
「そ。野球の球団名にもあるけど、carp は単複同形の名詞だから『カープス』とは言わないわけさ。giant(巨人)や tiger(トラ)は複数形で s をつける単語だから『ジャイアンツ』『タイガース』ってなるわけよ」
「な~るほど」
「ちなみに、tigers の読み方は厳密に言えば[タイガーズ]だけど、ま、球団名なんで、よろしいかと、……。さて、お次は数えられない名詞の数え方について、【5】を見てちょ。

【5】数えられない名詞の数え方
|★物質などの数えられない名詞を数える場合は、容器などの単位で数える。
||例)a glass of water(1杯の水), a cup of coffee(1杯のコーヒー), a piece of bread(1切れのパン), a bottle of wine(1本のワイン), …
|★複数を表す場合は、単位を表す単語を複数形にする。
||例)two glasses of water(2杯の水), many bottles of wine(何本ものワイン)

いがぁ。数えられない名詞を数えるときは、容器などの単位で数える、ってことね。例えば、『コップ1杯の水』であれば a glass of water って言うし、『カップ1杯のコーヒー』であれば a cup of coffee ってことよん」
「『コップ』と『カップ』の違いって何だろ?」
「まぁ、一般的に冷たい飲み物は『コップ』で、温かい飲み物は『カップ』で飲む、ってことだろ」
「じゃあ、ぬるま湯は?」
「はぁ? う、うん、……じゃあ、ガラス製が『コップ』で、瀬戸物が『カップ』」
「じゃあ、プラスチック製だったら?」
「はぁ? う、うん、……じゃあ、取っ手がついてるのが『カップ』で、ついてないのが『コップ』」
「おぉ、な~るほど、……納得」
――こいつ、意外と面倒臭いやつだな。
「じゃあ、『テーブル』と『デスク』の違い、ってな~んだ?」
「んー、……ご飯を食べるところが『テーブル』で、勉強するところが『デスク』」
「あ、そう? 俺は『テーブル』で勉強するけどな」
「はぁ? そんな~」
「てなわけで、今日の宿題は、『テーブル』と『デスク』の違い、ね」
「……、は、はい」
「さて、『コップ2杯の水』だったら、何て言う?」
「んー、two glasses of water」
「そのとーし! よくできた。複数を表すときは、単位を表す単語を複数形にする、ってことね。いでしょ。どぉれ、最後だ、……はい、【6】の「多い/少ない」の表し方、を見ておくれ

【6】「多い/少ない」の表し方
|★数えられる名詞の複数形には、many(多数の)/a few(少数の)を使う。
|例)many books(多数の本), a few students(少数の学生)
|★数えられない名詞には、much(多くの)/ a little(少しの)を使う。
||例)much rain(たくさんの雨), a little water(少量の水)
|★ a lot of(たくさんの), some/any(いくつかの)は、数えられる名詞にも数えられない名詞にも使える。
||例)a lot of books(たくさんの本), a lot of rain(たくさんの雨), some students(何人かの学生), some water(いくらかの水)
|※few/little は「ほとんどない」の意味。
|※some は否定文/疑問文では any に代える。

いがぁ。『多くの』っていう意味の単語には many と much があるんだけど、many は数えられる名詞の複数形に、much は数えられない名詞に使う、ってことね」
「a lot of は?」
「a lot of はどっちにも使えるよ」
「おぉ、じゃあ、テストで迷ったら a lot of だな」
「まぁ、ただ、テストでは、many か much かを選ばせる問題がほとんどですから」
「ですよね」
「同様に『少しの』っていう表現には a few と a little があるんだけど、a few は数えられる名詞の複数形に、a little は数えられない名詞に使う、ってことよん」
「ん? few と a few って、違うんですか?」
「うん。few/little は『ほとんどない』っていう否定語で、a few/a little は『少し(ある)』っていう意味になるね。ま、どっちも同じような意味なんだけど、そんときの気分で使い分ける、ってことさ」
「なんか、テキトーっすね」
「まぁ、そうなんだけど、日本語でも『ちょっと好き』って言ってみたり、『嫌いじゃない』って言ってみたりするわけでしょ」
「まぁ、確かに」
「大事なのは、many と much、a few と a little の使い分けね。many と a few のうしろは必ず複数形、much と a little のうしろは数えられない名詞がくる、ってことよん。OK?」
「オッケーです」
「おしっ。んで、<スピンクスの謎20>をやってみっぺ

<スピンクスの謎20> 名詞/冠詞
次の英文の(  )内から適語を選びなさい。
(1) This is (a, an, some, any) orange.
(2) Tom plays (a, an, the, some) guitar every day.
(3) We had (many, much, a few, few) rain yesterday, but it is fine now.
次の英文の(  )内の語を適当な形に直しなさい。
(4) The student has many (dictionary).
(5) The (child) are junior high school students.

はい、(1)から、答え入れて読みぃ」

次の英文の(  )内から適語を選びなさい。
(1) This is (a, an, some, any) orange.

「This is an orange.」
「そのとーし! どして?」
「次の単語が[オ]で始まる単語だから」
「そ。orange[オーリンジ]は[オ]、つまり母音で始まる単語だから、an を使う。ところで、some と any はどうしてダメなの?」
「複数形じゃないから」
「そのとーし! よく理解しちょる。ちなみに意味は?」
「これはオレンジです」
「おしっ、いでしょ。はい、次、(2)、答え入れて読みぃ」

次の英文の(  )内から適語を選びなさい。
(2) Tom plays (a, an, the, some) guitar every day.

「Tom plays the guitar every day.」
「そのとーし! どして?」
「んー、決まり文句だから」
「そ。ま、『楽器を演奏する』って言うときは、the を使う、って覚えとけばいでしょ。ところで、なんで play に s がついてるの?」
「主語が Tom だから」
「そのとーし! この s は、三人称単数現在形の s ね。ま、復習を兼ねて、常にそういうところも確認しときましょ。ちなみに意味は?」
「トムは毎日ギターを弾きます」
「おしっ、いでしょ。はい、次、(3)、答え入れて読みぃ」

次の英文の(  )内から適語を選びなさい。
(3) We had (many, much, a few, few) rain yesterday, but it is fine now.

「We had much rain yesterday, but it is fine now.」
「そのとーし! なんで?」
「rain は数えられない名詞だから」
「おしっ。文全体の意味は?」
「『私たちは』、……あれっ?」
「うん、『私たちはたくさんの雨を持ちました』じゃ、変だからな、この場合は『たくさん雨が降りました』でいんじゃね?」
「そっか、てことは、……昨日はたくさん雨が降りましたが、今は晴れています」
「てことね。はい、次、(4)、答え入れて読みぃ」

次の英文の(  )内の語を適当な形に直しなさい。
(4) The student has many (dictionary).

「The student has many dictionaries.」
「そのとーし! なんで、複数形にしたの?」
「many があるから」
「そだ。『たくさんの』ってことは複数あるわけだから、当然、複数形にしなきゃならん。ただし、dictionaries はスペル注意ね。y を i に変えて es をつけるよ。はい、ちなみに意味は?」
「その学生はたくさん辞書を持っています」
「おしっ、いでしょ。はい、ラスト、(5)、答え入れて読みぃ」

次の英文の(  )内の語を適当な形に直しなさい。
(5) The (child) are junior high school students.

「The children are junior high school students.」
「そのとーし! なんで、複数形にしたの?」
「んー、なんとなくノリで」
「まぁ、child の形を変えるとしたら、children しかないからな。でも、こういう語形変化の問題には必ずその答えになる理由があるからね。さて、この文の述語動詞は?」
「出たー! 述語動詞、……懐かしー!」
「懐かしがってるばやいじゃないよ。述語動詞が are ってことは、主語は?」
「あ、そっか、複数主語だ」
「そ。だから、child を複数形の children にする、ってことね」
「なるほど、深い、……まだまだ、勉強不足ですね、俺」
「ん。わかってればよろしい。てなわけで、あとは、『テーブル』と『デスク』の違いでも、じっくりと考えておいておくれ」
「はぁ、そうでした。なんか、やることがいっぱいあるなぁ」
「んでねー」
と、俺はソン太の部屋をあとにした。

――頑張れ、ソン太。やることがなくなったら、……人生、終わりだよ。

<オイディプスの答え20> 名詞/冠詞
(1) an
(2) the
(3) much
(4) dictionaries
(5) children

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