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雑草の力を利用してお茶作りに励む

無農薬・有機栽培を経て、2014年からは有機肥料も使わない「自然栽培」によるお茶づくりを行っている杉本園。自然栽培の実現に至った経緯や、抱いている思いなどについて、3代目の杉本鋭悟さんにお話しを伺いました。

【プロフィール】
杉本鋭悟すぎもとえいごさん|無農薬茶の杉本園
静岡県の牧之原台地でお茶の栽培、加工、販売を行う。深蒸し煎茶をはじめ番茶やほうじ茶、玄米茶などを扱う。

雑草と共に生きる自然栽培に

「当園では父の代で減農薬・有機栽培に挑戦して、無農薬・有機栽培を経て、2014年からは全ての畑を有機肥料も入れない、雑草と共に生きる自然栽培に切り替えました。野ウサギやカモシカまでもがやってくる長閑な茶園ですよ。」

杉本園の煎茶畑

杉本園の自然栽培には、確かな技術的な裏付けがあります。
その象徴が”一本仕立て”です。

左:一般的な茶畑のイメージ、右:一本仕立てのイメージ

「お茶の木は主幹が縦に育つだけでなく、横方向にも枝を伸ばします。この横枝は地面に接する部分から根を張る。だから、お茶の木は横方向にも膨らむのが一般的です。

ところがある年、茶毒蛾ちゃどくがの被害に悩まされて…
でもその時、不思議なことに虫が着いたのはこの横枝だけで、主幹部分は無事だったということに気が付いたんです。

以来、10年ほどかけて横枝を生やさない一本仕立てに切り替えました。
その結果、病害虫の発生が激減して、数年後には根が深くまで張り、幹も太くなると病害虫は全く発生しなくなりました。」

杉本園の自然栽培を支える草刈機の存在

ところが今度は東日本大震災が発生。
震災から3カ月経った頃、杉本園のお茶も放射能汚染をされていたことが発覚しました。発覚後、茶葉に付いている放射能を取るために、お茶畑の台切りを行いました。すると、茶葉が無くなった畑は太陽光と風通しが良くなり、雑草が伸び放題に。

お茶畑の台切りをしている様子

「その時ちょうど、一本仕立てにした茶畑に雑草が生えていて、思い切って自然栽培を志しました。それまでは、作物が栄養を求めている時に肥料を与えて吸収させる栽培方法を行っていました。
そのタイミングで肥料を与えると、根はそこで成長をストップさせてしまう。そこで施肥をやめて雑草を活かすことにしたのです」と杉本さん。

これが正解でした。

杉本園の土はpH値(その液体が酸性なのか、アルカリ性なのかを表す尺度)が中性に近く、多くの雑草が生えてきます。この雑草が夏の暑い時期には補水、冬の寒い時期には保温をしてくれる。一本仕立ての茶樹の幹は太く、根も深くまで伸びているため、自ら栄養を探してくれます。

自然環境にきわめて近い場所では、害虫は大量発生しません。だから消毒も必要ありません。カモシカが来ることもありますが、お茶よりも雑草の新芽が好みなようで、お茶には見向きもしないんです」と満面の笑顔。

また、自然栽培を実現できたのは、ORECの雑草草刈機「ブルモアー」(https://www.orec-jp.com/product/mower/bull/)との出会いがあったからだと言います。

ブルモアーで草を刈る様子。

「これまでは『いかに草を抑えるか』を考えていたものですが、『いかに草の力を利用するか』に変わりました。雑草が持つパワーを最大限に活かすことが、当園のお茶作りです」と語ります。

こういった複数の要因が重なったことで、杉本園は自然栽培を実現することができたのです。

「無農薬」という原則は変えることなく

「当園の自然栽培は、現在のやり方が完成形ではありません。茶畑の環境が変われば栽培方法も変わるはずで、その都度、最適なやり方を模索することが必要だと考えています。

その際にキーワードとなるのは、私どものキャッチコピーである『安全は自然の中にありました』です。

本当に安心して食べられるもの、飲めるものは人がつくるのではなく、自然がつくるもの。それを肝に銘じて、いくら環境が変わっても『無農薬』という原則は絶対に変えることなく、多くのお客様に愛される、自然を活かしたお茶づくりを続けていきたいと思っています。」

今後の杉本園のお茶づくりの挑戦から目が離せません。

【編集後記】
ORECと杉本園さんのお付き合いが始まって以降、OREC green lab福岡(https://note.com/orec/n/n36328588ca97)でも杉本園さんの煎茶やほうじ茶、紅茶などを取り扱わせていただいており、人気のドリンクとなっています。杉本園さんの煎茶は、甘味が喉にスッと抜けていく優しい味わいです。弊社ECサイト「コダワリノワ。」でも販売しているので、ぜひ皆さんご賞味ください。

■杉本園 HP

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■OREC ECサイト「コダワリノワ。」