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G.A. ヘンティの歴史小説 The Lion of the North: A Tale of Gustavus Adolphus and the Wars of Religion

管理人の勝手訳タイトル 「北方の獅子:グスタフ=アドルフと宗教戦争の物語

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著者: G. A. Henty
出版社: -
ページ数: 300p前後
発行年月: 1886年

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あらすじ

日本語でもグスタフ二世アドルフ国王を「北方の獅子」と呼びますよね。でも国王は主人公ではなく、途中であっさり死にます。主人公はスウェーデン軍のスコットランド連隊のマルコム少年。実在のスコットランド人、ロバート・モンロー将軍(この時期はまだ連隊長)の故郷の友人の甥という設定です。5冊の中では、主人公は最も多くの有名な実在人物と直接関わります。

故郷のスコットランドに兵の徴募に帰ってきたモンロー連隊長。マルコムは義勇軍に加わり大陸に渡ります。さっそくノイブランデンブルク攻囲戦に投入されたマルコムでしたが、守備兵は壊滅状態に陥り辛うじて虐殺を逃れたマルコムは、ティリー軍の酒保商人に紛れて逃亡を図ります。 マルコムは野盗の集団に捕らわれたのち逃亡したり、プロテスタント領主マンスフェルト伯(架空人物)の城の攻囲に加わって皇帝軍を撃退したりと活躍し、スウェーデン国王グスタフ二世アドルフの信頼をも得ることになります。

中隊長になったマルコムはブライテンフェルトの戦いに参加し、続いてバイエルンへ南下するスウェーデン軍のライン川渡河を助け、レヒ川の戦い、ニュルンベルク攻囲戦にも加わりました。これらの合間に、マンスフェルト伯一家との交流を深めたり、農民の策略にはまって捕らえられたり、塔に立て籠もってバイエルンの農民軍と戦ったりしています。ニュルンベルクでは、時計職人に弟子入りして時計の技術を学びました。

グスタフ二世アドルフの戦死したリュッツェンの戦いでマルコムも負傷しますが、その傷が治った頃、マンスフェルト伯一家がプラハで捕虜になっていることを知ります。マルコムはモンロー連隊長に許可を取り、単独で彼らの救出に向かいます。 伯から娘を託されたマルコムは令嬢と2人プラハから脱出しますが、農民に変装して旅を続けていたところ、ヴァレンシュタイン軍に輜重のため徴集されピルセンの街まで連れていかれてしまいました。マルコムはここで時計職人を装って、大胆にもヴァレンシュタインに雇われることに成功しました。

ヴァレンシュタインの将校の何人かが陰謀を企んでいることを知ったマルコムは、ヴァレンシュタインに身分を明かした上でそれを伝えます。ヴァレンシュタインはちょうど皇帝を見限ってスウェーデン軍との独自の同盟を画策していたところで、マルコムにスウェーデン宰相オクセンシェルナへの使者の役目を託しました。オクセンシェルナからの回答をヴァレンシュタインに伝えようとするマルコムですが――。ここでだいたい22章まで。

もくじ

  1. The Invitation

  2. Shipwrecked

  3. Sir John Hepburn

  4. New Brandenburg

  5. Marauders

  6. The Attack on the Village

  7. A Quiet Time

  8. The Siege of Mansfeld

  9. The Battle of Breitenfeld

  10. The Passage of the Rhine

  11. The Capture of Oppenheim

  12. The Passage of the Lech

  13. Captured by the Peasants

  14. In the Church Tower

  15. A Timely Rescue

  16. The Siege of Nuremberg

  17. The Death of Gustavus

  18. Wounded

  19. A Pause in Hostilities

  20. Friends in Trouble

  21. Flight

  22. The Conspiracy

  23. The Murder of Wallenstein

  24. Malcolm's Escape

  25. Nordlingen

読書メモ

5冊の中では唯一、それでも物足りなさはありますが、ロマンスらしいロマンスになっています。伯爵一家とは早い段階で出会っていて定期的に関わりもあります。令嬢とは2人で半年以上の逃避行を続けていて、互いに好意を持つ充分な時間があり、直接伝え合ってはいないものの、お互いへの意思表示もはっきり示されています。他の作品ではこのプロセスが無く、ロマンスに関しては唐突な感が否めないので、非常に評価できる点です。

導入部が不必要に長いことを除けば、史実と冒険のバランスも最も良い作品です。苦痛なのは本当に最初の1-2章だけなので、ばっさり飛ばして読んでもいいくらいかも。最後まで飽きさせないのと、史実人物が次から次へ出てくる割には、わざとらしさややりすぎ感はほとんど感じません。管理人の読んだ中で、どれか1冊だけ人に勧めるとしたら、迷わずこの1冊を選びます。

他にヘンティの小説4件についての記事書いてます。

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