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チーム2.0時代OSの職場の実態

前回チーム5.0時代への幕開けとして企業組織の変遷について書いてみた。これまで様々な形で組織の活性化の支援に関わってきたからこそ言えることは、実際この変遷はあくまで企業全体のスローガンとして進んできたと捉えるのが正しく、職場単位でみるとグラデーションになっており、OSが進んでいるところとそうでないところが混在しているのが実態であるように思う。その混在によっておこる「スローガンとOSの実態の不整合」こそ、組織の様々な問題の根幹に存在しているように思う。

昨今、組織のエンゲージメントを高めようとする動きが加速している。エンゲージメントとは組織と人が対等な関係で、組織や仕事、未来に対して双方の価値観の重なりを見つけて働けるような環境をつくることである。大企業でもこのコロナ禍でリモートワーク対応に舵を切り、離れていてもチームワークが機能するよう大々的にこのキーワードを取り入れ、組織の活性度を高めようと動いている。

こうした新たな組織活性化の動きの重要性が高まり、さかんになり始めている一方で、さきのほどの「スローガンとOSの実態の不整合」にまつわる個人的な懸念もある。これを「チーム2.0の壁」と呼んでみたい。これまでの経験から、組織活性化が行き詰まっている企業の実態の共通点は、組織が活性化自体、成果には直結する取り組みではないとして、「自分の仕事ではない」と感じている管理職が多いことであった。確かに短期的な成果創出につながるものではないものの、組織の活性化とは立派な組織マネジメントであり成果とは不可分であり管理職のメイン業務でもある。しかし、そう信じることができない人が多い。何故なら多くの場合、自分自身がメンバー側だった際にそうした経験がなく、自力で成果を上げ、評価され、今の地位にたどり着いた人の割合が高いことと、いまだにそうした人が管理職に登用されていく会社の文化が存在するからである。

そうした人たちの多くは成果創出のためには個々の努力の重要度の方が高いと判断している。また、そうした職場では決まって人材育成が手薄か破綻している。個々の成長は個人任せになるのが当然になるからある。ちなみに、こうした職場では決まって管理職が最も仕事を抱え、ゆとりがない。

そうなると、現場の能力格差はますます顕著になり、序列もはっきりするうえに、関係性の希薄化がよりいっそう進むことになる。そして、成果創出に長けた人に仕事が集中し、仕事量に偏りが生まれていく。職場の外からは一見スムースに仕事が進んでいるようにみえるが、こうなるとその内側では、疲弊感と不平不満、場合によっては離脱と言った組織の崩壊につながる問題が生まれてくる。これが長期化すると、所属する社員は未来に諦めを覚え、表情からは覇気が薄れ、言われたことをただこなすだけの魂の抜けたチームへと変貌していく。こうしたチームのメンバーが集まると、互いが目を合わせることがなかったり、明らかに不機嫌な人がいて不穏な空気が流れるため、ファーストコンタクトでよくわかる。この状態からのリカバリーは相当骨が折れるのも事実である。

これは上の図でいう"組織のための個"という過去のパラダイムへの逆戻りになっているということを知る必要がある。

ちなみに、こうしたOSに基づいたマネジメントを行うことの是非を説いているわけではない。間違いなく2000年代はこうしたパラダイムで組織が成果を上げ、生き延びてきたという成功体験がある。ある時期には成功していた一つのパターンである。私にも実際2.0が根付いていた過去がある。ただ、もうこれだけでは組織が長続きせず、優秀な若い世代が組織に定着しない。時代と不整合を起こしているという真実がある。長期的にとらえてみた場合、人が働きながら幸せになる組織になることは難しいことは明らかである。

こうした状況に対して何をどこから始めるとよいのか。まず、会社全体がマネジメントのOSの変化を認識して未来としっかりつなぎ、変化の必要性に対する意思を明確にしてその変化につながる一貫したモードをつくること。そして、現場では時代のパラダイムが変化していることへの自覚を促すこと。そして、現場のマネジャーにこれまでとは異なるパターンで成功体験を得られる機会を提供できるよう、社内外連携した伴走者をつけること。(伴走の適任者を間違えるとこれも大変であるため選定も重要)こうして、ありたい新しい組織の形を模索するための環境をつくることに変化の本質がある。

変革にウルトラCはなく、"気づいたら変わっていた"という変化こそ、最高にして最も持続可能ではないだろうか。

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