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ぼくが買いそびれたレコードたち
今回のnoteは松崎による「ぼくが買いそびれたレコードたち」です。
ジャズ評論家の油井正一は著者『ジャズ―ベスト・レコード・コレクション 』の中で、「中古レコードは見つけた時に買うべし」と書いている。本当にその通りで、今度買おうと思った中古レコードは大抵、次行った時には誰かに買われている。パット・メセニーのライブ盤とかストーンズのHot RocksのUSオリジナル盤とか、買っときゃよかったなとたまに思い出して後悔する。
個人店なんかにいくと、店主の書いた丁寧なPOPが付いていることがあって、その文章から内容を想像するのが楽しい。以下に紹介するのは、ぼくが買いそびれたいくつかのレコードのPOPである。
イングマール・チャットウィーン『イングマール・チャットウィーン』 (1990)
夭折したSSW唯一のアルバム‼︎
1991年に26歳で死去したカナダのSSW、イングマール・チャットウィーンが唯一生前の作品。ニール・ヤングやジョニ・ミッチェルといったアメリカ音楽への憧憬に満ちたフォークロック・アルバム。
流麗なアルペジオが印象的なM1「phantasmagoria」で開幕する本作は、アコースティック・ギターの多重録音がドローン的なM3「Still Life」、ギターのフィードバック・ノイズと性急なビートがオルタナ風味を生むM4「Girls」とあらゆるジャンルを呑み込んだ楽曲が並び、リスナーは彼の多才さに驚かされることだろう。カリーナ・アンとのデュエットM5「Dreams」からはメランコリックなムードをもつ楽曲が並び、彼のメロウな面を印象づける。M6「Spangle Call」、M7「Swallow」の耽美的なトーンは彼のシグネイチャーといえるだろう。少年時代を回想するM9「Neighborhood」でスパッと終わる構成も素晴らしい。
2枚組になるはずだった2nd「Life!」の楽曲やデモ、ライブ音源を収録した「OFFICIAL BOOTLEG」も必聴。
これは池袋のレコード屋で見つけて、彼の寂しげな表情をあしらったジャケがよくて買おうと思ったのだが、たしか¥12000くらいしたのでやめた。
サンディエゴ・コロン『1947-1962』(2007)
今をトキメクラッパー=リル・キッドがサンプリングした「#2」を含む、近年再評価が進む南米の打楽器奏者の音源集。打楽器のみの演奏でここまでメロディが聴こえてくるとは‼︎(盤面キズあり
盤面キズありの表記を見て買わなかったのだが、その後一回も見かけてないので買っとけばよかった。
ソリッド・ソニック『サウンドスケープ・東京』(2013)
カナダのテクノユニットが、東京を訪れた際の印象をアナログシンセのみで即興的に描いたアンビエント・アルバム。山の上ホテルの客室で約3日で制作された。都内のレコード店限定で発売され、中古市場で価格高騰していた名盤がまさかのリイシュー‼︎
少し前までSoundCloudで聴けたのだが、さっき見たら消えていた。これも一回か二回しか見かけたことがない上に、毎回¥15000くらいして諦めた。
朝間総太『印象 ; 12』(2021)
東京インディーの代表的SSWの4thにして、『印象』シリーズ最新作‼︎
たまらん坂解散後、SSWとして活躍する朝間総太のソロ名義4枚目。『印象』と題されたシリーズの12作目でもある。金町に生活拠点を移し、その街の印象をさまざまな音楽家や劇作家との共演で描いてきた彼の現時点での集大成ともいえるアルバムである。
冒頭を飾るM1『川』ではフィールドレコーディングと弾き語りを組み合わせ、江戸川の情景を描き出す。M2、M3とフィールドレコーディングを取り込んだドローンが続き、まるで金町の駅前を散歩しているかのようである。M4「生活」、M5「買い物にいかないか?」ではバンド時代を思い起こさせるポップネスに満ちたギターポップを披露。
Corneliusの攻殻機動隊サントラを想起させる10分強のインストのM7「Grapefruit Slider」は白眉の出来。
M9「午後の気温」からM10「それならいいね」、M11「ガール・コール・ヒム」とバンド時代の代表曲をセルフ・リミックス。どれもが原曲とはまったく違う魅力を持っており、自己模倣とは言わせない仕上がりである。
M12「それでも」以降には、シンプルなバンドスタイルの楽曲が並び、3分台のコンパクトなポップスM16「金町」で締めくくる。
実験精神に満ちながら生粋のポップス作家でもある彼の現在地を記録した名盤。
これは出たばかりの時にどの店でも壁一面に展開されていて油断していたら、いつのまにか見かけなくなっていた。今Discog見たら高騰していて、当分買えなさそう。サブスクにないのでCDでもいいかなと思っている。
(文責:松崎)
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