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関係「修復」より「バージョンアップ」を:というお題で始まるオープンダイアローグ夫婦のダイアローグ(前編)

オープンダイアローグ相談室を営む夫婦が「おうちの人間関係」についてダイアローグする企画の、第2弾です。

第1弾はこちら。

イントロダクション:「治りませんように」

というわけで、こんにちは!オープンダイアローグ夫婦の夫のほうです。今日のお題は「親子や夫婦の関係修復は、”元に戻す” より ”バージョンアップ” を目指そう」です。これも、あらかじめ出してある候補から、ダーツじゃないけど、何となく話し合って決めました。

ということで、今日もけいこさんに来ていただいてます。よろしくお願いします 。

(太字:けいこ)――お願いしまーす。

(細字:ふゆひこ)パチパチパチ。ってことでね、どっちから話しましょうか。 このお題で何か思い浮かんでることありますか?

――なんかこの題がどうやって出たんだったかな、っていう。 何か思いつくことありますか?

私の記憶だと、関係がうまくいかないときに、その関係を「直す」みたいな考え方をする人が多いんじゃないか、っていう話になったと思うんですね。
でも「直す」とか「元に戻す」ということは、その関係がうまくいかなくなった原因が潜んでいる状態に戻る、っていうことでもあるような気がして。
一見して火が消えたようでも、見えないところに火種みたいなのがあって、また燃えてくるよね、みたいな。
それよりかは「バージョンアップ」っていうか「今までとは異なる関係性になる」「 変わる」っていうのがいいんじゃないかな、っていう話だったと記憶しています。

これって、精神保健福祉の言葉に「リカバリー(全人的な回復)」というのがあって、そこでもよく言われていることだと思うんだよね。カラダの病気だと特に、病気をする前の状態に戻るのが「健康になること」=「回復」であるって見なされるけど、「病気になる前の状態」には「病気になった理由」みたいなのがどこかにあるとも言えるわけで。だから「元に戻ったら、またなるんだよね」っていうのは、「リカバリー」に関してよく言われることだと思うんです。
いま、私たちの目の前に「治りませんように T シャツ」がかかってるけど。

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病気とか「うまくいかないこと」は、「バージョンアップ」のチャンスなんじゃないかな。「関係」とか「生き方」とか、いろんなことの。あ、がんの人とかもそうかもしれないなって、いま思った。昨日テレビで、がんになったある女性が、元気になって、イタリアで自然食材のバイヤーを始めたっていうのを観たの。その人は病後に生き方を変えたんだよね。
何かそういうニュアンスのことが、夫婦関係とか人間関係にも言えるんじゃないかな、っていう話だったかなと思って。
どうですかけいこさん。

「それぞれの個人と個人の間にあることは、二人で作っていくこと」

――なんか「元に戻す」っていう言葉がね、「過去の健康健全な関係性に戻って、そこからやり直して行く」みたいな、そんなニュアンスを孕んでいるような感じがあって。でも時間的に過去に戻るっていうことってできないよな、って思って。

いま頭に浮かんでる言葉だけをパパっと言うと、 「何でこうなっちゃったんだ」っていうふうに考えるより「今この状態から何ができるか」っていうふうに考えたほうがいい。その方が進んでいくんじゃないかな、っていうのがある。

そのときに、自分一人のことだったらそれでいいんだけど、相手がいると、関係性のことだから「誰かが悪い」とか「どっちかのこういう行動を直したら良くなる」とかっていう話ではないんじゃないかな、っていうふうに思うんだけど・・・。

ここまで話してみてどう思いますか?

―なんかね、言いたいことはこういうことなんだとけど、ちょっと否定的な言葉が入ってるような感じがするから、もうちょっと肯定的な言葉で言い換えたいなって思ってる。・・・いま話したまんまだと、何て言うのかな、誤解されても仕方がないような言い方をしてないかな、って感じて。だけど、それをこう、人に伝わりやすい言い方にしたいなっていうのを、いま思ってる。今日のタイトルが難しい感じがしました。

どの辺が否定的な感じになったと思ってるんだろう。

―最初の方に言った「過去には戻れない」っていう、それはそうなんだけど、 分かっていて当たり前のことなんだけど。
そこに戻って・・・何て言うのかな、「うまくいかなかったところからもう1回やり直したい」とか「違う選択をしたい」とかっていうふうな想いもあるんじゃないかな、って思って。
「過去になんか戻れないよ」っていうふうに言い切るのも、事実そうなんだけど、気持ち的には「過去に戻りたい」っていう、その気持ちは大事にしたいというか。「過去に戻りたい」という気持ちは分かるような気がする、っていうところ。
ただ、やっぱり「過去に戻ってこの時点からやり直したい」って思ったとしても、その時(過去)は、その時その時で選択をしてきていて今の関係性になってるんじゃないかと思うんだよね。

たとえば、ゲームみたいにさ、道が分かれてて「こっちの右の道に行きますか」「左の道に行きますか」っていうさ、わかりやすい選択が迫られるわけじゃないじゃない。人生だったり夫婦間のことって。だから、過去に戻ってやり直せたとしても、何がこういうきっかけや因子になるかっていうのは、結果、なってみて振り返ったらわかるっていうのはあると思うんだけど、それを取り除きながら歩んでいくっていうのは、2人以上の人が関わっている場合には、お互いの事情とか状況とか、どう思ってるとかっていうのが確認されながら、「私たちとしてはこういう道を進むのがいいね」っていうふうにされていかないと。逆に言うと、もうそれしか無理なんじゃないのかなと思うの。関係性って。

関係性っていうか、それぞれが別個の人間だし別個に事情も持ってたりするじゃん。
例えば、夫婦関係でいうと旦那さんも奥さんもそれぞれ仕事をしていて、
いま持ってる仕事のことや、その仕事の中での役割のことっていうのは、仕事のことだから家庭の中に持ち込まないようにするんじゃないかと思うんだけど、どう言うのかな・・・ 会社の中での具体的な何かっていうところじゃなくて、それが自分の事情になっている・・・「締め切りが間近だからどうしても残業が続いてるんだ」っていうのだって、「残業なんだから仕方ないだろう」って言われると、「仕方ないか」って思えても、どっかで「そんなに毎日あるの?」とか、「ほかの人はどうしてるんだろう」とか、なんかこう「浮かんでくる何か」ってあると思うんだよね。
そのときに、「締め切りが今週末まででどうしても残業が多いんだ」とか、そういう事情のとこまで聞かされると…「聞かされる」って言い方あんまりよくないけど、そこまで分かると、相手の事情まで分かると納得できやすいっていうか。
 なんかそこが聞かれ合ってると、最初の方のブログでさ、髭男爵の「事情が変わった」っていう、相手の事情を聴くことでこっちの事情も変わる、みたいなさ、そういうことができて、すれ違ったりとか勝手に思い込んでて話が大きく膨らんじゃってたのが、「なんだそういうことじゃなかったのか」って、「あ、それなら分かった分かった」みたいな、そういうことになるんじゃないかなと思って。

何の話してるかだんだんちょっと分からなくなってきたし、すごい抽象的な話になっている感じがしてきている・・・。だから、2人以上で一緒に生活をしていくとか、一緒に夫婦っていう関係を作ってるっていう、「それぞれの個人と個人の間にあることは二人で作っていくこと」なんじゃないかなって思うね。何か「言わなくてもわかるでしょ」っていうのは、「くみ取ろうとはするけど分からないこともあるよ」っていう気持ちにもなるかもしれないなって。

何か、たらったらたらったら話してる感じがする・・・。ともかく思ったのは、「バージョンアップしたのが、元に戻った感じがする」っていうふうになるかもしれないし、「今までよりもスムーズになったな」っていう感じがするかもしれないし、何て言うのかな、選択肢が「元に戻る」だけじゃなくていいんじゃない、っていう。
 とりあえず私は以上にしよう。ふゆくんはどうですか? 

バージョンアップ=「関係性についての対話」ができる関係性になること

いまの語りを聴いてた瞬間瞬間のことを反芻しながら、今しゃべってるんだけど・・・、聴いてたときに内側で何が起きてたかというと、「過去」っていう言葉がすごい最初の方でいっぱい聴かれたなあ、と・・・。
それから、「時間」っていう考え方があるんだ!っていう。何かそのことを思ってたのね。「時間の流れ」みたいなことで考えてなかったの、私。そのことに気がついて、はわー、ってなったんだよね。
というのは、私のイメージでは、「元に戻す」とか「バージョンアップ」って、過去に「いい状態だった時期」や「いい状態だなあと感じられた瞬間」があって、そこに戻そうとする人がいるんじゃないかとか、未来の、これからのある一点に「バージョンアップされた状態」「完成された状態」か何かを作ろう、そういうふうになろう、みたいな考え方だったんだよね。「時間の流れ」っていうのは自分の頭の中になかったなと思ったんだよね。

もう一つは「関係性」っていうか、相手があって、っていうところも「あっ」てなって。ほんと自分は何も考えてなかったなって。モノローグでモノロジカルだったの。「相手がいる」っていう当たり前のことを全く考えてなかったなあと思って。「いい状態だと感じられた時期や瞬間」が過去にあったとして、それが相手にとってもそうだったかっていう保証はないもんね。未来に関してもそう、自分だけが「バージョンアップ」して「いい感じ」と思ってるだけかもしれないし。相手との間で決まるんだよね、っていう、その当たり前のことを考えてなかったことに気づいて、ハッてなったの。「時間」と「相手」っていうことで。

タイトルと食い違ってくるんだけど、「時間」っていう流れで見ると、いい状態がずっと続いていたのでなかったかもしれないけど、ずっと悪い状態だったわけでもないんだよね。「2人がシンクロしてた瞬間」みたいな成功体験があって、だからその瞬間に戻ろうとして「元に戻そう」とするとか「直そう」とするんじゃないかな、っていうのもあるんじゃないかな。

また「リカバリー」の話を出すけど、「リカバリー」ってよく「理想の自分に向かう長い旅路」みたいな考え方がされるけど、そうでなくて「いい感じの自分に切り替えるスイッチング」をしちゃえばいいんだよね、っていう考え方があるのを年明けに知ったのね。瞬間瞬間という考え方というか。
それと同じで、関係性も「いい感じの関係性の瞬間」がもしも過去にあったんだとすれば、それをもう一回再現すればいいし、「理想状態への旅路」みたいな考え方をしなくてもいい。「切り替え」みたいな。瞬間瞬間。

そういう意味でいうと、過去にあったかもしれない「成功体験」、それについて2人で考えてみて「どうしたら再現できるだろう」って話すのも全然アリだと思って。
成功体験をした当時は、うまくいっていることについて「メタに」っていうか、分析をしなかったと思うんだけど。「関係性についての対話」をしなかったっていうか。「たまたまうまくいった」みたいな。でもこれから「バージョンアップ」しないと、ってことになったら、「どうしたら二人うまくいくんだろう」とか「過去うまくいったのはどうしてだろう」みたいなこと、「関係性についての対話」をすることが大事なんじゃないかな。

だから、「関係性についての対話をできるような関係性」になるっていうのは、一つ「バージョンアップ」なのかなと思いましたね。

後編へ続く)

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