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幸せはすでにあったんだ。すべてを受け入れると見え方が変わる。『お父さん、気づいたね!』

「まだ寝ないよーだ!」

そう言い放って、ベッドを飛び出す4歳の息子。

時刻は夜の9時半。

幼稚園でたっぷり昼寝をしていると、この時間では眠気がこないようで寝ようとしてくれない。

リビングにパパママがいると寝てくれないので、一緒に寝室に入り消灯している。けれど、最近は効果が薄いようだ。

「もう寝る時間だからベッドに戻ろう。」

寝る時間が遅くなると、体調が崩れないか心配になる。だから、寝させようとこちらも躍起になり、だんだんと語気が強くなる。

こちらの気持ちを敏感にくみ取った息子も、だんだんと頑なになる。

そして、反発しようと、私の嫌がることをし始める。

裸足でベランダに出るので咎めると、声をあげながら玄関の鍵を開けて、裸足で飛び出してしまった……。

最近の息子は自己主張が激しい。

嫌なものは嫌!息子なりの主張

息子を追いかけて、暗がりの玄関の扉を開ける。

10月中旬となると外の空気は一段とヒンヤリして、足元から冷気が上がってくる。今年はとくに急に秋が深まったから、まだ体が慣れていない。

息子は裸足で飛び出したから、寒いだろうに。

風邪をひかないかと心配になるし、夜なのに外に飛び出す息子に怒りがわいてくる。

しかし、ここで感情的になると息子も余計に熱くなるだろう。

そのため、静かに移動して耳を澄ませる。

集合住宅1階の階段下で、息子の足音がする。
きっと私の出方を伺っている。
階段の踊り場の電灯が煌々と光っていた。

足音をたてないように慎重に下に降りると、息子と目が合う。

「寝ないよーだ!」
私を見た息子の主張は、まだ続いている。

私は冷静になるため、息を1つ吐く。

「もう夜だから、ママは寝るよ。寒いからお家に入ろう。先にお家に戻ってるね。」

努めて静かな声で伝える。

息子を一瞥したら、振り返らずに外階段を上がる。息子の姿が見えなくなったところで、じっと屈んで再び耳を澄ませる。

微かに聞こえる声。
「ママー」

先ほどまでの威勢はどこに行ったのだろう。

蚊の鳴くようにか細く、甘えた声が聞こえる。本人も冷静になり、心細くなったようだ。

間髪入れずに下に降りると、
「ママ、抱っこ!」
と、両手をバンザイしている息子が佇んでいた。

「お父さん、気づいたね!」から学ぶ、息子の本心

息子の対応もうまくいかないし、なんだか仕事もうまくいかない。そんな低空飛行のときに届いた、Xへの一通のDM。

「よかったら、私の著書を献本させていただけませんか?」

田中伸一さんからのメッセージだった。

どうやら、息子に対する私のnoteを読んで、何か感じ取ってくださったようだ。

メッセージから伝わる温かさや優しさに惹かれて、ありがたく著書を受け取ることにした。


田中伸一さんの息子さんは、彰悟さんといいます。

ダウン症に生まれ、生後2か月で気道がふさがり、気管切開をされています。
口や鼻で呼吸ができないので、声が出せません。

言葉を交わすことはできなくても、彰悟さんの想いや行動に想像力を働かせて想いを馳せる。そんな田中さんの工夫や学びが綴られた本だ。

どんな本だろう。

自宅に届いた本をペラペラとめくるうちに、目に留まったのが以下の部分です。

彰悟が「イヤ」という意思表示をするときは、たまに全身での抵抗になる。
私の両親の古希のお祝いも兼ね、三世代でハウステンボスに家族旅行に行ったときのことだ。(略)
「しょうちゃん、着いたよ~、降りようか~」声をかけるが石のように動かない。

「お父さん、気づいたね!」の134ページ~135ページ

ここで、彰悟さんを咎めないのが田中さん。

「違うところがいい」
「もう少しドライブがしたい」
「歩く気分じゃない」

話せない彰悟さんに代わって、その行動の元にある想いをいくつも想像します。

そして、想いに沿えなくて「ごめんね」と「ありがとう」を口にします。


きっと私の息子も行動の裏側に、本人なりの想いがあるのでしょう。

「普段は午後6時まで幼稚園にいるから、もっと家で遊びたい」
「眠くないから、寝転びたくない」
「暗い部屋を覗いてみたい」

息子は、大人のように流暢に、的確に言葉を使いこなせません。それなのに、私は自分の気持ちばかりを優先してました。

「風邪をひかれたら仕事が滞り困る」
「私が眠いから寝てほしい」
「息子をフォローする余力がない」

息子にはそんなことは関係ありません。
私の想いがあるように、息子にも想いがあります。

お互いの意見に耳を傾けて理解する。
想いを受け入れた上で、こちらの想いも伝える。
受け入れてくれたことに感謝し、思い通りにしてあげられないことに謝る。

そんな丁寧なことをしていただろうか。
子どもでありながら、息子は1人の人間。

大人の都合を押しつけるのではなく、息子を尊重しながら対話を重ねることの大切さを学びました。

彰悟さんから学ぶ自分との向き合い方

スマホやSNSが発達している現代は、外からの情報がどんどん自分の中に雪崩れ込んできます。

じっくりと物事を考えたり、思考を深めたりするのが難しい。

ところが、彰悟さんの日常を見ると、当たり前のように自分と向き合っています。

彰悟は2、3歳ぐらいから自然に、体幹トレーニングとストレッチのようなことを毎日やっている。畳や床に座っていると、両足を前にまっすぐ伸ばし、上体を前後に絶え間なく動かす。1日合計すると2、3時間はやっている。
(略)

彰悟は毎日和室で1人たたずむ時間も多い。

(略)
彰悟は瞑想していたんだと気づいた。

「お父さん、気づいたね!」 144〜145ページ

心を整えるために瞑想をしよう。

そう思っても、数分間したら集中力が切れてしまう。スマホが気になったり、外の音に気が削がれる。

それが、彰悟さんは淡々と毎回欠かさずに続けています。息をするように、当たり前のように生活に取り入れる凄みを感じました。

外にばかり目を向けないで、自分と対話してごらん。いろんな答えが詰まってるよ。

そんな想いが伝わってくるようです。

人は成長する!子どもは分かっている

人に気づかれにくい彰悟は、自然と自分がゆずったり待ったりするようになったんだと思う。そもそも彰悟には急ぐ理由がなく、基本的に性格は穏やかで気が長い。よくいえば、成熟した人格だ。

(略)
私と彰悟が二人でリビングにいて、私は別のテーブルで事務作業をしていた。

(略)
すると、突然背中をポンポンと軽くたたかれる。
「あっ、しょうちゃん!どうしたん?」
彰悟に目をやると、パッケージが開かないお菓子を持っている。

(略)
これまで彰悟がこういう状況で自分から人に働きかけるのは見たことがなかったので、びっくりした!

「お父さん、気づいたね!」 139,158ページ

乾杯はいつも私と妻と美有の三人だけだった。彰悟にも教えていたが、よくわからないようで、いつも私たち三人の乾杯を見ていた。だが、この日、彰悟が初めてグラスを手に取り、私たちのグラスに合わせるように乾杯した。

「お父さん、気づいたね!」 98ページ

ご家族から彰悟さんにレクチャーするものの、アピールしたり、乾杯したりできない日々が続いていたそうです。

ところが、田中さんが「できなくてもいい。そのままでいい。」と考えが変わってから、好転したそうです。

すべてを受け入れると物事が変わるのは不思議であり、納得するところ。


息子も幼稚園のクラスに入らず、フリースタイルで遊ぶ子でした。園の先生方も寛容な心でいつも見守ってくれたので、私も大らかな気持ちでいました。

集団にいなくてもいい。息子が元気ならそれでいい。

そう思えたら、気持ちが楽になり、息子のありのままを受け入れられました。

それが今では、クラスで過ごせるように変化。語彙もものすごく増えました。

昨年の今ごろは、3歳にして「パパ」「ママ」などの一語しか出てませんでした。

でも今では、
「パパ、ママ、ごはんだよー」
「△△せんせい、おそとにいってもいい?」
「ねえ、◯◯くん、びょういんでがんばれたよ!」

と、一生懸命に自分の気持ちを言葉で伝えてくれます。

私の想いではなく、彼の今を受け入れること。
そして、私の願望を手放す。彼を信じる。

すると、子どもは伸びやかに自分のペースで成長していくように思います。

彰悟さんから学んだ生きることの幸せ

彰悟さんは今までに気管を拡大するため、6回の手術を受けました。

生後2か月で呼吸を確保するために、気管の奥まで管を挿入されました。引き抜かないように両腕は重しを乗せて固定。ミルクは鼻チューブから。

それを嫌がった彰悟さんは自力で引き抜き、窒息状態になったことも。

彰悟さんのお母さまは、夜に30分〜1時間おきに状況をチェックする生活が続いたそうです。

入院から2か月半で、福岡のこども病院へ転院。田中さんは車で片道3時間を通うことになります。さらに手術から52日後に退院。

自宅で気管に装着していたカニューレを取り外し、窒息状態に再度なります。

さまざな不安や困難を受け入れながら、それでも日々を過ごしていく。

田中さんも銀行にお勤めでしたが、息子さんの病気を機に、部署替えを希望。さらに転職。独立も経験されます。

彰悟さんをきっかけに、物事や働き方がどんどん変わり、田中さんの気持ちにも変化が生じます。

それは、彰悟さんがいると、

  • 自分としっかり向き合える

  • 愛情を分け与えられる

  • すべてを受け入れられる

これらを理解できて、変化を受け入れられたからだそうです。


「ライターとして稼げるようになる!」

と思っていた私も、この本を読んでそれよりも根源的で、本当に大切なことがあることを学べました。

彰悟さんの生き方がすべてを許容してくれました。そして、自分も自分を受け入れられた。

外に目を向けるより、内なる自分と対話してごらん。もう幸せなんだよ。幸せは満ちていて、何を感じるかを楽しむんだよ。感じることにいい、悪いはないの。

出来事を純粋に体験して、見て、そのままを受け入れていこう。

素敵な繋がりから献本していただいたのも、何かのご縁。息子と彰悟さんが架け橋になってくれたことに、ただただ感謝です。

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