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難関校の合格に「英語力」は要らない。 【入試最前線:東京受験直前】

来週の2月1日から、いよいよ東京都にある中学校の受験が始まります。
受験生の皆さんやご家族は、緊張した日々を過ごされていることでしょう。

自分が今指導している受験生も、来週受験を控えています。
東京御三家と言われている麻布中学をはじめ、女子学院中学を受験する生徒もいるため、直前のこの時期、実力を高い水準で維持するため、多くの時間を割いて指導しています。

麻布中学と言えば、中学受験にそれほど詳しくない方でも知っているくらい全国レベルでも有名な学校であり、開成中学と並ぶ「超」がつくほどの難関校です。
麻布中学合格を目指して、今も努力している生徒は、既に千葉県にある「千葉四天王」と言われる難関校に、帰国子女枠で一発合格しているのですが、本人からのたっての希望で、麻布中学を受験するために頑張っています。
ただ、この生徒さんの場合は、帰国子女枠で合格したことでもわかる通り、日本語の表現力が乏しいため、記述問題が多い麻布中学に合格するためには「記述力が不足している」という非常に厳しい状況にあります。
特に、社会の歴史用語や地理用語の理解が不十分であるため、それらを駆使して的確な表現をすることができません。

麻布中学では、かつて「なまず絵」の問題が出されたことがありました。(平成19年)
日本では古来より大なまずが活動することで地震を起こすと考えられており、江戸時代に盛んに描かれた鯰絵では、鯰が金の小判を降らせて、それを庶民たちが拾い集めている様子が描かれています。
この絵を見て、地震が起きることによって大金を手に入れることができる人たちとはどういう人たちかを考えさせる問題です。

鯰絵の一例:安政2年の地震直後の瓦版より 題名:「地震よけの歌」

ところが、この生徒は、この絵から、小判を拾い集めている人たちが建築業に携わる人たちであるということを読み取ることができませんでした。
時代劇などで江戸時代の庶民たちの格好などを目にしたことがある人であれば、その服装などから、「大工」「左官職人」「とび職人」という職業が類推できるはずなのですが、そのような知識もありません。
当然、地震で倒壊した家屋を再建するために、建築に携わる人たちの仕事が増えるということも推測することができなかったのです。
これは小手先の記述問題対策をしたところで、どうにもならないレベルの深刻な状況だと言えるでしょう。

英語を幼い時から一生懸命やっている小学生が共通してもっている特徴は、日本語のボキャブラリーが貧困であるということです。
状況を説明するために的確な単語を使えば、短い文章でもきちんと説明できることでも、それを知らないばかりに、概括的で回りくどい説明に終始してしまいます。
そのため、どの場合にも当てはまるような包括的で理念的な概説で記述が終わっているのです。
今は、この欠点を克服するために、徹底的に語彙力増強するための指導をしています。
これらは、幼い時から、岩波新書や中公新書といった学者が書いている論文に触れていれば、自然と身につくものなのですが、そのような読書体験が無い生徒に教える場面で大変に苦労する部分と言えます。

小学生が学ぶ英語というのは、どうしても会話中心である場合が多く、外国の人たちと流暢に会話ができ、TVや映画などを字幕なしで理解できることが重視される傾向があります。
明治から昭和くらいまでは、欧米列強の諸国から様々な文化や技術を学ぶ必要が高かったことから、英語の読解力が重視されていましたが、欧米並みの生活レベルになった現代では、より国際社会で通用する人材として、円滑なコミュニケーション能力が尊重されるようになるのは自然な流れなのかもしれません。
そのため、昨今の英検や大学入試の方法などを見ても、リスニングやスピーキング問題が増える傾向にあります。
このような風潮のもと、中学受験をせずに英検一級を取得した小学生がもてはやされるわけですが、そのような生徒は難関中学受験で必要とされるような記述・論述力が習得できていないということは想像に難くありません。

中学受験というと、詳しくない人たちからすると、小学生が挑戦するくらいなのだから、それほどレベルが高くないと思っている人たちが大半かもしれませんが、実際の入試問題を見ていくと、その認識は大きく間違っていることがわかります。
特に開成中学や麻布中学レベルの超難関校となると、算国理社の4教科とも、ほとんどが記述問題です。
これをみても、小学生の段階から、東大や京大といった一流国立大学に合格するような記述・論述力がある生徒を選抜するための試験であることがわかります。
理由は単純で、東大や京大の二次試験では、たとえ医学部であっても、国語の論述問題があり、古文や漢文でさえ記述問題があるからです。

小学生の時から、しっかりとした記述力や論述力を身につけることができれば、将来難関大学を受験することになったとしても、難なく乗り越えることができるでしょう。
時間に比較的余裕のある小学生の時こそ、「国語力」=記述、論述力を身につける絶好の機会です。
特に中学受験を目指すのであれば、最近の傾向に流されて英語を学ぶのではなく、国語に力を入れて学ぶ方が、どの教科も良い成績がとれるようになる近道であるということは、多くの人たちに知っていただきたいところです。
国語力があれば、英語の学習にも役立つことは間違いありません。
自国語で理解し考え話すことも出来ない状況で、他国語を学んだとしても、実力が伸び悩むことは目に見えています。
「中学受験を目指すようになる小学4~5年の時期こそ、国語力を身につけるための時間としてほしい」というのが、受験指導をしている立場から、自分が一貫してお伝えしていることなのです。


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