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旅行の意義 【エマソン著『自己信頼』】

Traveling is a fool's paradise.
旅行は愚か者のパラダイスだ。

『SELF-RELIANCE』by Ralph Waldo Emerson(The Project Gutenberg eBook)

自分自身の中に、自分にとって最も大事な存在の本質が潜んでいるのに、それを放置したまま、ウロウロと物欲しげな顔をして興味本位に出歩いている様子を言っているのでしょう。
エマソンは、「自己修養の欠如が『旅』への迷信を生む」とも言っています。

It is for want of self-culture that the superstition of Traveling, 
whose idols are Italy, England, Egypt, retains its fascination for 
all educated Americans. 
【訳】
イタリア、イギリス、エジプトを偶像視する「旅行」の迷信が、いまだにすべての教育あるアメリカ人にとって、その魅力を持ち続けているのは、自分を訓育することが欠けているためだ。

In manly hours, we feel that duty is our place. The soul is no traveler; the wise man stays at home, and when his necessities, his duties, on any occasion call him from his house, or into foreign lands, he is at home still; and shall make men sensible by the expression of his countenance, that he goes the missionary of wisdom and virtue, and visits cities and men like a sovereign, and not like an interloper or a valet.
【訳】
義務こそが我々のいるべき場所であり、魂は旅人ではない。
賢い人間は、我が家に留まり、必要や義務によって、家の外に誘い出され異国に連れ出されたとしても、我が家にあった時のように知恵と美徳の伝道者として赴くのだ。

『SELF-RELIANCE』by Ralph Waldo Emerson(The Project Gutenberg eBook)
参照:『エマソン論文集 上巻 自然他6篇 略年譜』酒本雅之訳(岩波文庫)

社会的義務と責任が大きければ大きいほど、自分の好みや意思とは関係なく、その職務と責任を果たすために海外に赴くことになります。
そのような義務や責任がない人物は、遊びや娯楽として、日頃の気晴らしやストレス解消と称して、旅行ばかりしています。
同じ旅行と言っても、その性質が全く異なっていることがわかるでしょう。

義務や責任が重い人たちにとって、「自分さがしの旅」などは無縁でしょう。
そのような人たちは、自分だけの世界にいることが出来ないからです。
会社のため、社会のため、国家のため・・・といった我欲を離れた「大義」の世界にいるため、自分さがしという我欲を満足させている時間がないのです。

今、国の内需拡大策として、旅行支援が実施されていますが、果たして、自分の「旅」はどのようなものなのか、一度、考えてみると良いかもしれません。
もちろん、「パラダイス」でも構わないのですが、少なくとも「愚か者の・・・」とならないようにしたいものです。
それでも、そうやって英気を養った後、「大義」で異国に赴くような人物となるために、自己の修養に努めていくのだとしたら、それは素晴らしい旅と言えるでしょう。


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