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1人の視点を、みんなに開く。『発明家』という仕事について。

こんにちは、発明家の高橋鴻介です。
手のひらサイズのゲームから、大きな公共施設のコンセプト設計まで、様々な発明をつくっています。

先日公開した記事が、ありがたいことに多くの方から反応をいただき、「そういえば自己紹介も何もしてないな……」と思って、自己紹介の記事を書いてみることにしました。

最近人と会うと、「発明家ってなにしてるんですか?」「どんな仕事頼んだら良いんですか?」と聞かれるのですが、正直ひと言でうまく説明できません。なので、このnoteでは、

・発明家になった背景
・どんな活動をしているか
・そしてこれからやっていきたいこと(&お仕事募集)

について書いていこうと思います。

なぜ僕は発明家になったのか

きっかけは、2017年の9月頃。仕事で、とある視覚障害者施設を訪れた僕は、そこで出会った友人に点字について教えてもらいました。

その当時、視覚障害や点字について詳しく知らなかったのですが、その友人に、点字は6点で1文字を表していること、200年前にフランス人のルイ・ブライユが発明したこと、実はその原型はナポレオンが作った軍事暗号から来た説があることを教えてもらい、その世界に魅了されました。
極めつけにはこの一言。

「高橋くんも、点字が読めたら暗闇で本が読めるよ」

その言葉を聞いて、今までとても遠くにあった点字の世界が、急に近くなったように感じました。

「ああそうか、点字は視覚障害の人のための文字だけど、それだけじゃなくてもよかったんだ。

その一言は、目が見える、見えないといった境遇を飛び越え、フラットな世界の見方を僕に教えてくれました。その体験をきっかけに、僕は1つの書体を発明することになります。
その名前は『ブレイルノイエ』。点字と文字を組み合わせた、見える世界と見えない世界をつなぐ書体です。

このアイデアを発表してみると、世界中のメディアで話題になりました。
日本では、たくさんの企業や地方自治体を巻き込み、オフィスや役所といった、日常の世界にインストールされました。
アイデアに共感した海外のデザイナーが、中国語版やキリル文字版のブレイルノイエを作って、送ってくれたこともあります。
1つのアイデアが、思わぬかたちで世界に広がる発明になっていったのです。

渋谷区役所に実装された様子
海外のデザイナーから送られてきたキリル文字版のブレイルノイエ

これらはすべて、施設で出会った視覚障がいの友人が、自分が住んでいる世界の扉を開いて、自らの視点をおすそ分けしてくれた、あの一瞬から始まりました。それがなかったら、僕はきっと今も点字や視覚障害の世界とは距離を置いていたことでしょう。

この社会には、「自分には関係ない」と思っているものがたくさんあります。その無関心さが、分断を生んでしまうこともしばしば。

でも、彼にとっての小さな一言が、視覚障害や点字の世界を、僕に開いてくれたように。そして、そこから生まれた新しい体験が、世界へと広がっていったように。
違う世界だと思っていたことが、自分の世界とつながる。
そんな体験ができる発明を増やすことで、人と人の間にある壁がなくなり、もっと社会は良くなっていくんじゃないか。

そんな予感を感じて、昨年僕は会社を辞め、発明家として独立しました。

「開く」という視点で発明をする

今まで『ブレイルノイエ』に加え、触覚コミュニケーションゲーム『LINKAGE』、老若男女が一緒に組み立てられる建築キット『CAPNUT』、オンラインで競い合えるスポーツ『ARゆるスポーツ』など、様々な発明をしてきました。

これらの活動に通底しているのは「OPEN INVENTION」というコンセプトです。

オープンイノベーションじゃないよ、オープン「インベンション」だよ。

OPEN INVENTIONとは、「1人の視点を、みんなに開く発明」
誰か、もしくは自分がもっている、人とは異なる世界の見方を種に、アイデアを考え、みんなごとに変えていく発明のことです。

例えば、先ほど紹介した『ブレイルノイエ』は、視覚障害の友人が教えてくれた点字の魅力を、みんなに開く発明です。

例えば『LINKAGE』は、触覚を使って遊ぶ、新感覚のバランスゲーム。これは、盲ろう者の友人が用いている「触手話」という触覚を用いたコミュニケーションの楽しさを、みんなに開く発明です。

「触手話」と呼ばれる、手話を触って読み取る、触覚のコミュニケーション方法

例えば『CAPNUT』は、ペットボトルで組み立てられる建築キット。今までデザイナーや建築家に閉じていた、大きなスケールのものづくりの面白さを、みんなに開く発明です。

ペットボトルとキャップを、ボルトとナットに見立てて、様々なプロダクトを組み立てる。

運動が苦手な人や障害がある人も、誰もが楽しめる「ゆるスポーツ」を作っている、世界ゆるスポーツ協会代表の澤田智洋さんに「高橋くんの発明は、新しいけど、怖くないところがいいよね」と言われたことがあります。

新しいものや考え方には、摩擦がつきものですが、「みんなに開く」という視点で、楽しく、ハードル低く体験できるフレンドリーさをつくれるのは自分の特徴だと思っています。

また、発明のプロセス自体も「みんなに開く」ことを大切にしています。
僕自身が、自分のアイデアを実現したい、というよりは大人数でアイデアを一緒に育てたい、という姿勢なので、色んな人をつくるプロセスに巻き込み、アイデアが有機的に変化していくのが好きです。

僕の肩書は発明家ですが、すべてのプロセスにおいて僕一人が発明家である必要はないと思っています。プロジェクトに巻き込まれた人も、一緒に考えてつくり、発明家になっていく。そんな関係が理想なんじゃないかと思っています。

これからやっていきたいこと

ここまで、背景と活動のコンセプトについて書いたので、
ここからは「これからやっていきたいこと」について書こうと思います。

①「みんなに開く」ための企画・発明

プロダクトや新技術、サービス、施設のターゲットを広げ、みんなに開いたり、今までにない人同士のつながりを生みだす仕掛けを考える仕事がしたいです。僕の一番得意なところはここです。

事例①:渋谷区役所×ブレイルノイエ
渋谷区役所のユニバーサル・サイン計画を『ブレイルノイエ』を用いてデザインしました。公共施設を、みんなに開くための企画です。

Official Site

事例②:Body Sharing Robot "NIN_NIN"
オリィ研究所と、体の機能をシェアするロボットの共同開発をしています。出来ることで補い合う体験を、みんなに開くための企画です。

Official Site

② 人と人の「接点」にまつわる企画・発明

自分自身がコミュニケーションに苦手意識があるゆえに、人と人のコミュニケーション課題には取り組みたいです。異なる人がフラットに関わるための「接点」の発明があると、自分が生きやすくなるので、自分の視点を、みんなに開くための『MY OPEN INVENTION』として、これからもやっていくつもりです。

事例③:ARゆるスポーツ
ゆるスポーツ協会と一緒に開発した、ARフィルターを用いたオンライン・スポーツ。顔だけで参加できるので、スポーツが苦手な方や、外出が困難な方、高齢者の方も一緒になって競い合うことができます。フィルターさえあれば参加できるので、初対面のアイスブレイクにも最適です。グッドデザイン賞を受賞し、日テレ「スッキリ!」でも紹介されました!

Official Site

事例④:テレパシ
未来言語と一緒に開発した「みない・きかない・話さない」状態で遊ぶコミュニケーションゲーム。年齢、性別、障害などに関わらず、一緒になって遊ぶことができます。伝わっても、伝わらなくても楽しい、コミュニケーションのハードルを下げてくれるゲームです。

Official Site

③ 発明家を増やす企画

子供の頃に遊びを考えて、友達を巻き込んでやったことはありませんか?
僕は、それも立派な発明だと思っています。「発明をする」ことは難しいと思われがちですが、アイデアを考えたり、ものづくりをする楽しさこそ、みんなに開いていきたいと思っています。日々発明やアイデアについて考えている発明家の1人として、ワークショップや執筆、講演は積極的にやっています。最近は、色んな場所に泊まって発明家を増やす『発明家・イン・レジデンス』をやりたいと思って計画中です。

イラストレーション:尾黒ケンジ

事例⑤:共通変
変な共通点「共通変」を見つけることから、新しいアイデアは生まれるという発想法。Forbes JAPANに記事を書かせていただきました。

Forbes JAPAN
イラストレーション:尾黒ケンジ

事例⑥:NO「NO」法
禁止されているルールをひっくり返すと、新しいアイデアが生まれるという発想法。これもforbesに記事を書いて、早稲田大学の社会人学部「WASEDA NEO」でワークショップを実施しました。

Forbes JAPAN

おわりに

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
この記事を読んで、「一緒に発明したい!」「こんな仕事お願いしたい!」という、お仕事の話がありましたら、以下のサイトからご連絡をいただけますと幸いです(ポートフォリオなので、この記事に載っていないプロジェクトも載っています)

今まで世界になかったものを一緒に発明できることを、楽しみにしています。


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