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島民に愛されるパン工房を守りたい。従業員承継で、パン職人が経営にチャレンジ!

エスイノベーションの大杉りさです。事業承継をきっかけにイノベーションを起こした企業にインタビューする「地域からはじめる事業承継」今回は、新潟県佐渡市の「さどブレッド」を紹介します。身体に優しい全粒粉パンで、島内をはじめ全国にファンを持つ「ポッポのパン」を承継したのは、パン作りを熟知した従業員の山本博邦さん。佐渡市の創業支援事業を利用した事業承継例をご紹介します。

さどブレッド    山本博邦 代表 1978年生まれ 
2014年 パン工房「ポッポのパン」入社 
2024年4月「ポッポのパン」を事業承継し「さどブレッド」を創業

全粒粉パン ポッポのパン
1996年 佐渡市猿八 ポッポのパン創業
2014年 全粒粉パン ポッポのパン 新潟市に開店
2024年 新潟市内に全拠点移転

佐渡にパン工房を残したい!

ー 「ポッポのパン」と山本さんの出会いについて教えてください
1996年、前オーナーが佐渡市猿八にパン工房「 ポッポのパン」を創業しました。全粒粉を100%使用したパンが人気で、全国各地に通販でもパンを届けていました。2014年に、前オーナーが新潟市に拠点を移したと同時に、ここ佐渡市猿八の工房は、前オーナーの息子さんが引き継ぎました。私が「ポッポのパン」で働き始めたのもその頃となります。

自然に囲まれた佐渡市猿八のパン工房

ー 事業承継のきっかけを教えてください
2023年、前オーナーから、「佐渡の工房を継いでみないか」と声を掛けていただいたのが、きっかけです。

さどブレッド 山本博邦 代表

ー その時のお気持ちはいかがでしたか?
以前、小売店の広報で働いた経験があり、販売のノウハウには、ある程度自信がありました。あとは勢いで手を挙げた所も…。佐渡で愛されている「ポッポのパン」を、これからもお客様に楽しんでもらう!「やらなければ!」という思いの方が強かったです。「ポッポのパン」で働き、10年が経っていたので、パン作りに関して不安がなかった所も、大きな後押しになりました。

事業承継!創業支援!商工会の手厚いサポートがそこに!

ー 事業を引き継ぐにあたり、取り組んだことは?
まずは、「ポッポのパン」と交わす契約書の作成に関して、地元の商工会議所に相談に行きました。その際、「山本さんの事例は、事業承継にあたるので、経営や、財務に関する創業支援サポートも受けることができますよ」とアドバイスを貰いました。

事業承継と聞いて、最初はピンと来ない所もあったのですが、契約書の作成はもちろん、減価率や、ランニングコストなど、経営に関する細かい部分にサポートを頂けたので助かりました。一応、自分なりに算出はしていたんですが…。今では経営関係でわからない事があれば、すぐに相談に行っています。

ー 佐渡で創業支援事業の1号店となったそうですね。
認定されたことで、日本政策金融公庫から融資を受ける際、開業支援資金貸付引下げ利率を利用することができました。融資を受けた600万円で配達車と、ドゥコンディショナー(パン生地の発酵管理器材)を新しく導入し、前オーナーから土地建物を借りる形で、引き続き、佐渡市の工房でパンを焼いています。

導入した「ドゥコンディショナー」

パン工房の承継で引き継いだこと

ー 前オーナーから承継した事を教えてください
厳選したシンプルな材料を使い、食べて安全、おいしいパンを作る志を引き継ぎ。パンを卸していた島内9社とは変わらず取引を続けています。従業員3名も引き続き雇用しました。また、前オーナーは新しい屋号で出発して欲しいとの事でしたので、生まれ育った佐渡への思いを込め、社名を「さどブレッド」に決めました。

ー 経営に関して山本代表が行ったことは?
「ポッポのパン」は店舗販売は行わず、島内のスーパーへの卸し、通販がメインでした。(6名体制で、週3日・1日600個を生産、佐渡島内の9社へ)

事業を承継してからは、私を含めパン職人は4人となりました。工房の稼働を週5日に増やした分、1日に焼くパンを300個に減らし、1日の仕事量を見直しています。9社への卸しは変わらず行っていますので、焼きたてのパンが届けられるというメリットもあります。

あとは、会計ソフトのfreeを導入したことで、経理業務を自動化しました。入力の仕方も商工会の方には、何度かお世話になってます!

さどブレッド

山本代表が考える「さどブレッド」らしさ
ー 山本代表が、「さどブレッド」で実現したいことはありますか?
今は、深夜1時に起きて、自宅から工房まで、ひと山越えて出勤しています。
春から秋までは、自然豊かで景色も最高なのですが、凍結した山道の運転は結構怖いですよ、冬が…ねぇ…(笑)いつか、店舗販売も視野に自分の工房を持ちたいです。今は、パンを卸した後の、お客様の反響が見えずらい部分もあるので、そのような点でも対面販売に魅力を感じています。

パン工房に向かう山道

ー パン作りに関してはいかがですか
4年前からブルーベリーの栽培に取り組んでいて、ようやくワンシーズンで1000パックほど出荷ができるようになりました。将来的には、自家栽培のブルーベリーを使った、「さどブレッド」オリジナルのパンやデザートが販売できたらいいです

ハイブッシュ系ブルーベリーを生産
ブルーベリー畑(30アール)

ー 事業承継から4ヶ月が経ちました!いかがですか?
正直、まだオーナーって感覚はないですね…。売り上げを気にしつつ、従業員に無理はかけていないか!取引先の間にミスはないか!毎日必死です!

ー 最後に事業承継をお考えの方へ山本代表からアドバイスを!
私は、地元の商工会に、たくさん助けて頂きました。商工会は、どんなに小さな街にもありますから、相談してみるのはいかがでしょうか。

この夏、山本代表の畑では約100キロのブルーベリーが収穫できたそうです。佐渡島内で愛されたパンの味を守りつつ、新たな試みに挑戦する山本代表。地域に根付いた商工会の事業承継支援で、元気な経営者が誕生しました!佐渡金山が世界文化遺産に登録された佐渡。皆さんも、厳選素材の自然な美味しさ「さどブレッド」のパンを食べに出かけてみませんか!(エスイノベーション 大杉りさ)

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