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セミナー企画とファシリテーションのコツ8:「アイスブレイク③(二段階の自己紹介)」

こんにちは。大木浩士と申します。
これまで1000回以上、セミナーやトークイベントなどを企画し、開催してきました。(具体例はこちら
この記事は、それらを自ら企画し開催してみたい。そう思われる方に向け、私が培ってきたセミナー企画のノウハウをお伝えする内容の第8回目になります。
※前回(第7回)の記事はこちらから。

今回のテーマも、前回に続き「アイスブレイク」です。
特に(2)参加者同士によるアイスブレイクに焦点を当て、話の続きをさせていただきます。

本格的な話し合いを行う前に、メンバー同士で行う簡単な自己紹介。
前回は、その際の「3つの問いの事例」をご紹介しました。
今回は、私が大切にしている「二段階の自己紹介」という考え方について触れてみたいと思います。

これまで小学生から年配の方まで、多様な皆さまを対象に場づくりを行ってきました。
講師からの話も必要だけど、参加者同士による気づきあいも大切にしたい。
そんな思いから、私はよく参加型・体験型の要素も取り入れ、場の設計を行います。

コミュニケーション力が高い大人の方ばかりなら、アイスブレイクによって、場に活気が生まれやすくなります。
しかし、人とのコミュニケーションが行いにくい参加者が集まる場合もある。
例えば小学生や、話し合いの経験がまったくない中学生などです。
「二段階の自己紹介」は、それらの方々に向き合った際の反省から生み出した、私なりの手法になります。

私は自己紹介の問いを考える時に、よく「二階建て」を意識します。
「一段階目」は、考えなくても話せる内容の自己紹介。
具体的には、名前、血液型、星座、などの情報になります。
対象者が中学生や高校生なら、部活動や出身校なども一段階目に該当します。
大人の皆さまを対象にするなら、お住まいの場所やふるさと、所属している会社名や部署名、などが一段階目の情報となるでしょう。

「二段階目」となるのは、少し考える必要がある自己紹介の情報です。
例えば、好きなことや楽しいこと。
好きな料理や休日の過ごし方など。
意識を自分の内面にもぐらせ、何らかの情報をつかむことで発言ができる情報です。
前回「3つ目の問い」としてご紹介した内容の多くが、この二段階目の情報にあたります。

お互いのことをより理解しようと思うなら、一段階目と二段階目を組み合わせた方がよい。
その方が基本情に加え、相手の人柄や思いの部分まで理解がしやすくなるからです。
しかし、意識を自分の内側にもぐらせることが苦手。
または、自分の内面的な情報を人に伝えることには抵抗がある。
そんな方々が対象者となる場合には、「まずは一段階目だけの自己紹介を行い、様子を見る」ということを行うようにしています。

一段階目だけの自己紹介。具体的には次のような内容になります。
①お名前
②生まれた月
③所属している部活動(または出身の幼稚園や保育園/小学校など)

一段階目の自己紹介の目的は、声を出すことにあります。
自分の情報を声に出して、人に伝えてみる。
慣れていなければ、これを行うだけでもかなりのストレスになる子もいます。
難しいことに取り組む際は、まずは簡単なことからはじめ、小さな成功体験をつくるようにする。
著書『まずは小さくはじめてみる』でも触れましたが、私が非常に大切にしている考え方です。
そのため、まずは「考えなくても話せる情報」をテーマとし、自己紹介の小さな成功体験がつくれるよう配慮を行っているわけです。

自己紹介をさらに丁寧に行おうとする時、「まずはメンバー全員であいさつをする」という時間も設けます。
同じグループになった人同士、まずは顔を見合わせる。
そして「よろしくお願いします」とあいさつをする。
最初の声出しを、全員で一緒に行ってみるのです。
このあいさつの時間を設けることで、1人ひとりに声を出すスイッチが入ります。
声を出すための小さな準備が整います。
考えなくても話せる情報だとしても、自分1人で話さなければいけなくなると、強い緊張感を覚える子も確実に存在します。
それを少しでも和らげるための取り組みです。

また、「各自からの発言の後は、グループ内で小さく拍手をする」ということもお願いします。
自分が勇気を出して発言しても、まわりの人たちは無表情で無反応。
これでは発言するという行為がとても嫌で辛いものになってしまいます。
そこで、拍手という小さなリアクションを、自己紹介の際のルールとして伝えるようにしているのです。

一段階目の自己紹介を無理なく終えることができたら、様子を見ながら二段階目に進むこともあります。
まずは声を出すという小さな成功体験をつくることができたとする。次は少しだけ難易度をあげ、「自分の思いや考えを人に話す」というセカンドステップに進むわけです。

グループ内で行う、アイスブレイクを目的とした自己紹介。
今回は一段階目だけで行うのか、それとも一段階目の次に二段階目を実施するのか。
または、一段階目と二段階目を組み合わせて3つの問いをつくるのか。
私は対象者の属性、そして参加する方々の様子を確認しながら、問いのつくり方を慎重に選ぶよう心がけています。

子どもたちに向けて行うワークショップを、私はこれまで800回以上行ってきました。(詳しくはこちら
参加者に少しでも刺激を与えたい。
クリエイティブな問いを投げかけることで、新たな学びをつくりたい。
そんな思いから、何の心理的配慮も行わずに、自己紹介の時間を設けていた時期がありました。
大人にとっては問題なく答えられる問いでも、人に思いを伝えにくい子にとっては、それは決して簡単なことではない。
結果的に、重い沈黙の時間をつくり、参加者の涙を生み出してしまうことが何度かありました。
そのような経験を何度か重ね、自分の講師としてのエゴに気づくことができたのです。

難しい課題に向き合う時は、できて当たり前の簡単なことからはじめるようにする。
大切なのは、自分が簡単だと思うことではなく、それを行う相手が簡単だと思える内容であること。
次のステップに進むのは、小さな成功体験がつくれた後。
アイスブレイクの問いの設計においても、私はそんな配慮を必ず行うようにしています。

■アイスブレイクの時間設定

続いて、グループで行うアイスブレイクの時間について触れたいと思います。
まずはアイスブレイクを行うタイミングです。
大きく2通りのタイミングがあります。
1つ目は、セミナーの冒頭時にグループでのアイスブレイクを行っておくというもの。
想定する時間は、「5分から10分間」が目安です。
自己紹介の問いが3つあったとして、1人の発言時間は1分程度。
グループのメンバーが4人いれば、全体で4分~5分となる。
もし自己紹介の後に、少し意見交換や雑談の時間を設けようとすれば、それでトータル7~10分くらいの時間が必要となります。

2つ目は、セミナーの中盤で行われるグループワークの際に、簡単な自己紹介もあわせて行うというもの。
自己紹介の問いは2つ程度に絞り、時間は2~3分程度と想定します。

思ったより時間のロスにつながるのが、順番決めです。
お互いをけん制しあい、沈黙の時間が流れてしまうことが時々ある。
順番を決めるために「じゃんけん」が行われることもあり、あいこが続いてそれが時間のロスになってしまうことも多々あります。

時間のロスを減らしたいと思う場合、私は最初に発言する人を指定します。
例えば、
◎講師席から一番近い場所に座っている方が最初。その後は時計回り。
◎苗字が一番「あ」に近い方が最初。その後は時計回り。
◎誕生日が1月1日に近い方が最初。その後は時計回り。
などの指定を行います。
少し楽しい要素を交えたいと思う場合には、机の上でペンをまわし、ペン先が向いた方向に近い方が一番目、などのやり方を示す場合もあります。

発言を参加者の自発性にゆだねる時は、「トーキングオブジェクト」を用意することもあります。
カラーボールや置物など、片手におさまる程度のアイテムを各グループに1つずつ置いておきます。
話をする人は、話をする前にそのトーキングオブジェクトを持つようにする。
話を終えたら、元に戻す。
話ができる人は、トーキングオブジェクトを持っている人のみ。
話をしたい人は、トーキングオブジェクトが戻されるまで、話している人の話をさえぎらない。
それがこのオブジェクトのルールです。

少し深めの対話を行う場合や、参加者の自発性をうながす場合には、このようなやり方も有効かもしれません。
ただ経験上、通常のセミナーの自己紹介においては、そこまでやる必要はないように感じます。
アイスブレイクの目的は、安全で安心できる環境づくりです。
セミナーの全体時間も限られており、アイスブレイクだけで長時間を費やしたくないとの思いもあります。
そのあたりのバランスを考えながら、進め方や時間配分の検討を行ってみてください。


セミナー企画のコツ。
次回のテーマは「会場づくりのコツ」になります。
ご興味ございましたら、ぜひご覧ください。

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