ノベルジャム2018読書会レポート   #noveljam

2018年3月17日(土)に行った「ノベルジャム2018読書会」のレポートをアップいたします。ノベルジャムとは、「著者」×「編集者」×「デザイナー」がタッグを組んで、二泊三日で短編小説をかきあげて発売まで目指すハッカソンイベント。今回読書会でとりあげた全16作品はBCCKS内の特別ページをご参照ください。

※すべて無料で読めます。書き起こしが思いのほか大変でしたので108円で読書会応援!かんぺ冊子画像見ることできます。よろしくお願いいたします。※

当日配布した手書きのかんぺ冊子というのはこんなことで話し合いたいな~。という候補をピックアップしております。本文中はグレー。

順番はプレゼン順。レンタルスペースアイソメさん、あとの予約があったためちょっと後半ダッシュでした。

ツイキャスも配信!

参加者:おのでらひかり(Aチーム編集)、YUKI YAMAKA(Aチームデザイナー)、波野發作さん(Bチームデザイナー)、腐ってもみかんさん(Eチーム著者)

録画もあるのですがカメラワークうまくない私なのと、30分毎に動画がリセットのシステムで編集きびしいので、テキストと切り出しの写真でお楽しみください!

オリエンテーション

・2泊3日の短期決戦で仕上げた電子小説(3,000文字~10,000字)、お題は「平成」

・2時間なので、16作品5分~7分で語り合う短縮版

・トークポイントは、作品(シーン・キャラ・エピソード)だけでなく装丁、IF(自分が著者だったら、デザイナーだったら、組んだら)、LIKEなところ、裏話など自由にお話していきましょう。もちろんネタバレあり。


『DIYベイビー』山田しいた著

かんぺ:著者はイブニング新人賞受賞のマンガ家。大森望氏のSF小説講座受講。

まずはAチーム。デザイナー、編集には語りにくい!部分でした。

そう2日目の深夜については波野さんのレポートにもくわしいのですが、おふたりには初稿のご相談を差し上げてました。

みかんさん「テンパってましたよね、俺もでしたが」そうなんですよねえ。思い返すと私も「作品が迷宮入りしそうなんです!」と、運営江口さんにヘルプだしたり、みかんさんも「書きあげた瞬間からテンションがさがって小野寺さんに相談をしていた」り、波野さんがおっしゃるように「チームの垣根を超えてうごいた」状態が蘇ってきました。※『DIYベイビー』特設サイトのインタビューにもくわしいです。

おのでら:おっしゃるようにラストがあそこで終わってしまう懸案はそのままではありましたが、細部の調整で、ブラッシュアップがはいりました。

波野さん:全体の印象はそんなに大きく変わってないかな。著者の炊飯ジャーで鶏をつくる、参照:「未来鶏がミールになる」のネタのようにもともと面白い発想を持っていたからね。

YUKI:30歳前後の人がもつ、ちょっと人生に行き詰まっている現状を打開したいという『平成最後の逃避行』も30歳になる前に結婚したい、そんな今どきのアラサーの悩みもあるのじゃないかな。

波野さん:ゆとり第一世代。30歳の景虎さんも思い入れもつよかった。いまはゆとり世代のほうが性能が高いらしいという仮説が信憑性を増しているらしい。団塊ジュニア世代やばいよ(笑)

おのでら:ゆとり世代には嬉しい

YUKI:今回の参加者でいうと、団塊ジュニア世代の書き手の方というと……

波野さん:米田さんが一番うえかな。高橋さんが、ひとつ下の世代かな……?

YUKI:(団塊ジュニア世代には)わりをくった世代とはいいますよね。今回はアラサーの苦しみを描いた作品が多かった。書いているときにも、山田さんには人生すごろく順調に行ってない苦しみが、アイデアと思いがよい作品は伝えました。他の作品と比較はしていなかったですが、賞をとれるんじゃないかという予感はありました。

みかんさん:あえて辛口でいえば、ぼくは物語がもう少しほしかったです。

波野さん:間に合わないと思います。書くスピードが。時間でちょうど3000字くらい。

おのでら:そうなんですよ

みかんさん:個人的にわかるのが、僕がちょうど2年半前に書いたはじめての小説で100万年後の宇宙を書いた青春小説で、

波野さん:100万年後に青春がある!おお。

みかんさん:アイデアをひらめた瞬間でかける気がする。けど技術がなくて書けない。作者のその気持ちはとてもわかる。

おのでら:みなさんの「ああ~」ってなってしまうところが、キャラと設定があるけど、ストーリーがない

みかんさん:そう、「で!?」ってなってしまう。書き手の背景は読み手には関係ない。

おのでら:ストイック!

『バカとバカンス』天王丸景虎著

かんぺ:優秀賞受賞作品。世界のアップデート(ver842.3……)・神、ゆとり&ミミコ、ケースワーカーの視点・平たい世界・装丁:いらすとや

YUKI:そういう意味では、完成度の高い作品でした。

おのでら:おもしろかった。レビューに「面白い」とコメントがついていて、とても羨ましかったです。嫉妬です。

波野さん:いや、大変なんだよ。いま自信がなさそうにみえるけれど、米光さんにも言ってもらうレベルで景虎くんは相当できるんだよ。

おのでら:自己プロモーションもとても上手で。

波野さん:そんな景虎さんなんで、頑固。人の話を聞かない。それに気がついたので、修正はあまりしないスタンスに。どうにか狙った作品には近づいたかな。焼き物でたとえると狙った器の形には落ち着いた。ただ表面の丁寧さには時間が足りなかったかな。

おのでら:ゆとり世代とミミコちゃんのストーリーが弱いという審査員評もありましたが、神のパートが抜群に面白かったので、こういうのもかけるのかというギャップとして効果的に読めました。

波野さん:一人称の人格で知りえないことはそれ以上はかけない。だから、それは気をつけた。その分エリートの「私」のパートで誰が誰に語りかけているのか、という演出には時間をかけたみたいだね。

みかんさん:10年くらい前に一人称(アイデンティティ)のゆらぎ、ポストモダンがあったらしいんです。Twitter文学賞を受賞した『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』(木下古栗著)とか、アニメ『ポプテピピック』って中身はなんにもなくて、要はつまんないのにウケちゃう! の不思議さ、というのはどこにでもあるんだと思います。

YUKI:文学実験的なところでいえば、筒井康隆さんが好きなんですけれど、ああいうのも違う?

みかんさん:作品を読むより、「慰安婦像に精子ぶっかけろ」とかよんでしまって(一同「あ~」)ーーただ、読み手にとって書いてあるところが全てであるしかない。それが必然的に描かれてないと「はあ?」みたいな。

おのでら:主人公=語り手の場合、著者の発言かどうかわからなくなって読み進める作品はありますよね。太宰治の『人間失格』も。

『怪獣アドレッセント』腐ってもみかん著 ①

YUKI:本来の順番で言えばちょっと先になっちゃうんですけど、いまおっしゃっていたことでいうと『怪獣アドレッセント』は私小説的な読み方をしたんです。

おのでら:著者が目の前に。

みかんさん:私小説として読まれることは折り込み済みで書きました。ちょうど大塚英志の著作を読んで、そこではドキュメンターではなく、ノンフィクションも今いる「私」でしかない、と書いてあったのにしっくりきたので割り切りました。もちろん普段考えていることはキャラクターに代弁させた部分もあります。

おのでら:なるほど。……今回の発見だったのですが、著者の方もバックグラウンドをもとに筆を走らせてそんななか全作品通し、優秀賞の2作は、その私小説になりそうな枠を超えてしっかり小説世界に取り組んだというのは評価の分かれ目だったんだと思います。

YUKI:エッセイでもなく、小論でもなく、「小説」という形をとるならそういうことだったんでしょうね。

『その話いつまでしてるんだよ』森山智仁著

かんぺ:改訂版、続編、装丁もNEW。激動の昭和。崩御と劇団公演。

おのでら:お題の使い方が秀逸で「昭和→平成」の時代設定で、劇団青年が主人公でした。ただ残念だったのが、自粛ムードの雰囲気というのがうまく読み取れなかった。昭和の空気感が”わからないやつだ~”となりました。

波野さん:井上陽水の日産のCMで「みなさんお元気ですか」のセリフが口パクになったんだよ。

YUKI:本屋さんには写真が飾られたりしてた。でも自粛とか子供のときにはぴんとこなかった。よく森山さんお書きになられたなと思いました。

波野さん:チームのサポートで固めたのではないかな。気になったところ、あまり入り込めなかったところが群雄劇なので、(主人公も)なにをしたいのか、言いたいのかがわからなかった。

おのでら:うろっとしてるなかで、感情をもてあましてるんですよねえ。

波野さん:そのもどかしさが描きたかったならいいんだけれど。

YUKI:大きな声で政治的なことがいえないということ、出ていかないといけないのは分かるなあと思いました

波野さん:今度平成最後の日は人が亡くならないので、自粛モードがどこにくるのか。

おのでら:そういえば、今回は「生前退位」に触れている作品がありませんでしたね

波野さん:あのね、景虎さんのプロットには「永久に平成が続く」というネタがあった。出オチで早々に却下されていた。

みかんさん:あはは

おのでら:続編のタイトルも「その話いつまでするんだよ」にあわせ、装丁も赤版、青版でアップされていました。筆の早い方です。自分は難しい。

みかんさん:自分はスピンオフ取り組んでいます

波野さん:だめだよ毎週1冊は出さなきゃ(笑)

※波野さんチームの『RecycleKids』は毎週5000字の新作が刊行されている

『魔法少女リルリルリルリと俺の選択』アンジェロ著

かんぺ:二次元世界のループ、「メッセージウィンドウ/コマンド選択」の説明を省く、俺がミサ(幼馴染)を救う過去改変

波野さん:タイトル10回練習しようか

一同:りる、りる、りるり、りる、りる、りるり、・・・

波野さん:一部にすごい評判がいいんだけど。アニメ、ゲームみてるひとにはとても受けた

おのでら:冒頭から「何を言ってるかわからないと思うけど(以下略」から始まるオタク用語のテンプレが小説に昇華されることが感動的でした。

波野さん:読み取るコンテクスト次第で評価が二分されている、実際、審査員は評価しなかったし、わかる文脈の人が読めばいったかもしれない

YUKI:ゲームの手法を小説に持ってくるのはよくあるんでしょうか?

波野さん:ああ、ラノベのほうではやられているね。

おのでら:ただのラノベとも思いきや、世界ループから抜け出すための→幼なじみ救おう(シュタインズゲート)から、恋愛モード(ときメモ)と思ったら、ラストにSFを迎える、1作でぎゅっと3つの味覚が楽しめるのが、オタクに受けた理由なんじゃないかと。

みかん:それを読むと読みたくなりますね

YUKI:主人公とマナミの関係性が寂しみを感じました

おのでら:マナミーー名前ついてるんですけど、ええと、誰だったんでしょうね(笑)このオタク、サブカル読者層からすれば、このタイトルではなかったんだろうと勝手に思っています。

波野さん:ハギヨシさんも宣伝活動もしてないですよね。

YUKI:ツイッターみてるとAチームとBチーム元気ですよね

みかんさん:俺は直接リプライで買ってくださいってツイートしてますよ

波野さん:おれはそれで20冊売ったよ。知人に買ってください。って。

一同:ええ~!

みかんさん:ああ、その瞬間まで、『怪獣』はブックウォーカーではギリギリまで抜いてたんですよ。

波野さん:俺はBCCKSで1位獲るのにこだわってるから、順位が見えるから。

YUKI:やっぱりダイレクトマーケティングが重要なんですね。

波野さん:100冊の差ではやらないよ、5冊、10冊だから。5000名に話しかければ1冊は買うから。同人1000人村。

おのでら:そこの層を見つけてほしい。装丁も女性読者を惹きつけてほしい。

みかんさん:ヒロインのテイストがラノベらしくはないけど、ラノベらしさも必要で、そのバランスが難しい。読んでないですけど。

YUKI:アンジェロさん、まだ書き始めたばかりの著者さんなんですよね

おのでら:最年少で、牧野さんより年下だとか。ラノベ文脈、すべての刺さるものを享受してアウトプットできたものなので、ゲーム世界の説明もふっとばしているので、今のティーン、次世代にもっと刺さる小説を残す作家なんじゃないかと。

『平成最後の逃避行』藤沢いちか著

かんぺ:主人公・あかり、友人・瑠果(ワガママ)のふたり旅。平成ジャンプ、「絶対平成のうちに結婚するから」

YUKI:これすごく面白かったです。登場人物がなぜ行動したのかがいちいち全部こうしたのかがわかる。なんにもひっかかる部分がない。

おのでら:「共感」している友人が結構わがままで、それを受け止める主人公も性悪で”だからモテないんだ”って毒づく、みたいな女友達にしかわからないマウンティングが素敵でした。「平成のうちに絶対結婚するから」というのも好きでした。

YUKI:謎のこだわりね、女子の。著者の方が意識されているかわからないのですが平成の象徴で『ロンバケ』ってドラマあったじゃないですか。

波野さん:あれ、平成なの(笑)

YUKI:(笑)そのイメージが思い出しました。

みかんさん:小学生のときは『ロンバケ』の恋愛に憧れましたよ

おのでら:スウェットとかワンピースとかと比べて、ウエディングドレスの描写が「きれいだね」とかライトで、あと脱げない、という描写でしかない。女性誌のキャッチコピーに「女友達がほしい」とあって、まさしく今どきのシーンを切り出しているとは思いました

みかんさん:平成ジャンプのジャニーズのグループがハマると思わなかったですね。(平成ジャンプ:結婚をしないまま、平成を終える昭和生まれの人」を指す言葉として用いられている)

YUKI:ヤラハタ、ヤラミソみたいな言葉としてあるってことですか

波野さん:あるあるある。今普通じゃん。昭和後期は中学三年生とかに焦った

YUKI:わたし最後の世代です。はやく彼氏彼女つくってやってしまうことが偉いという。

みかんさん:二度と戻りたくない!

おのでら:なんというか、まあ、ゆとり世代が優秀というか、無理しない世代になって(笑)

YUKI:今の子は周りの子と比べてというのがなく

波野さん:俺だけ、私だけっていう

おのでら:まあ、そこで次の作品が、まさに自分の道をゆくタイプのーー

『味噌汁とパン・オ・ショコラ』渡鳥 右子著

かんぺ:「幸福とは幸福を探すことであるーージュール・ルナアル」、挿絵(w.okadaさん)、タイトル、定例「内蔵女子会」、みそスープ、ハナエさんとバンバさんの不思議な共同生活。

波野さん:これは見事でしたね。内藤みか賞狙い撃ち。女性チームで、女性主人公。

YUKI:ツイッターでみなさんおっしゃってたんですけど、なんで鮫島とくっついちゃう。やめとけやめとけって。著者も「このあとすぐ別れちゃう」って書いてました

一同:(笑)

おのでら:ハチャメチャなおばあちゃんと、頑固な主人公。

YUKI:キャラ造形が良かったですよね。表紙のイラストも素敵でした。

おのでら:挿絵も、ファンアートもありまして

みかんさん:徐々に良いタイトルだなって。

おのでら:最初耳になかなか入ってこなくって。「ぱんおしょこら、ぱんおしょこら」ってなんだその技名って思って。

みかんさん:クロワッサンにチョコレートが入ってるタイプの。パン屋さんに行けばある。

YUKI:ハナエさんに合わせてるんですよね

おのでら:ああ、味噌汁のこと、みそスープっていうんですよ。独特! 一方「ホルモン会」やってて、そうそうそう、となる(笑)

みかんさん:冒頭の速度感が短編というのが新鮮で、なんというか不動産のシーンがあるのかとさえ思った。

波野さん:ページ数足りないよね

みかんさん:割り切りっていう勉強になりました

おのでら:書き出しっていうのは、みなさん苦労されてて、この作品もルームシェアはじめましたっていって、そこにハナエさんが「納豆食べたの?」くらいのスピード感がないとラストまで追いつけないのかな。でもそこで名言からの導入でインクルしてるのはすごいなと思いました。

波野さん:手法だから。いかにも、っていうパターンを

おのでら:メッセージ性は出ますもんね。なるほど。

波野さん:ドラマ化されるんじゃないの。

YUKI:っぽいですよね。

波野さん:ベテラン女優と新人女優のW主演。

みかんさん:樹木希林さんか、桃井かおりさんとか。

『ツイハイ』渋澤怜著

かんぺ:Twitter、ツイート文と地の文、著者がnoteに横書きを全文無料公開、SNSをテーマに扱う(『バカとバカンス』でもBOTとネタ)、装丁が油絵

おのでら:『ツイハイ』はなかなか語りきれないところがあるんですけど、難しかったんですよね。

YUKI:というと

おのでら:小説ではないなあと思いまして。あと、ツイッターの類似サービスTuiitter(ツイイッター)があり、ちょっと前に2chのようにサーバーダウンしてしまう、コミュニティが崩壊するかも!と騒ぐ、ちょっと前のオタクなんですよ。なので、そんなにツイッターに依存してるのかなというところがピンとこなかった。

波野さん:それはわかる。平成だからというので2002年頃の2ちゃんねるなら危機感がわかる。けど年代崩れちゃうからだめなんだけど。

おのでら:ツイッターがなくてもpixiv、LINE、FB、オフ会、リア友、を使えばいい、どうして出てこないんだろうと思ってしまう。

みかんさん:読んでなくて悪いんですけど「Tuiitter(ツイイッター)」のネーミングセンスがどうかなあと。

YUKI:最初は「Twitter」で書いてらっしゃったんですよね。そこから実名、商標といった部分から固有名詞を避けた。

みかんさん:それはわかってるんですけど、「ツイ廃」って言葉はあるし、類似サービスより、ここにしかないSNSだけで小説とかで表現できればよかったんじゃないか。

波野さん:外し方が中途はんぱってことか。ツイート分で、平成的なっていういう審査評価はされていたけど、このネタって『電車男』でしょ

おのでら:そうなんですよ~!

YUKI:『電車男』、ドラマも見ていないんですけど、どんな話なんでしょうか?

波野さん:2ちゃんねるのスレッドで展開されていて、横書きの書き方。ドラマはそれを脚色してた。

YUKI:Togetterで読みたいのはわかる。好きか嫌いでは好き。「なんにもなかった」という終わり方も。

波野さん:タイムラインって人によって違うじゃないですか。これは誰のタイムラインなんだっていう

おのでら:WEBに親しんだ著者なのにTwitterの機能、よさが出てないんです

波野さん:完成はしているんだけど、三人称、地の文をいれるんならばタイムラインの持ち主だったかな。話としては面白かったんですが。

波野さん:タイトル『ヘイセーション』でもよかった。

YUKI:杉浦さんはデザインの評価高いですよね。玄人うけする、大衆うけするデザインっていうのはべつものでもありますが。

みかんさん:よくわからないんですけど、「t」も大文字にするとか。伝わるところに伝わるっていっても……まあ、いいか。

波野さん:なお、この油絵はもらい手がないそうです。

一同:(笑)

波野さん:画材一式持ち込んで本館でかいてましたからね。

みかんさん:ええ!! それはすごいな!

『たそかれ時の女神たち』飴乃ちはれ著

かんぺ:年号の女神化、明(あけ)・中(なか)・昭(はる)・静(しず)、「こんなに何も見えなくて苦しむことがわかりきっているに、妹が現れることを素直に喜べなくて」、4姉妹、男ではない?

波野さん:これは可愛らしい作品だよな

YUKI:明治のお姉さまはなんであんなに偉いんでしょうね?

波野さん:年上だからじゃないの

YUKI:ああ(笑) 長さと古さ。静ちゃんも素敵。

おのでら:はい、女神というか4姉妹というか、わちゃわちゃ感が素敵でした。

波野さん:ヒロポンでてきたのはびっくりした

YUKI:打とうとするっていう(笑) 昭和生まれとしてはこんなふうに思われているんだと驚きました。激動の時代でしたよね。

波野さん:まあ、長いからね。

みかんさん:2回も戦争しましたし。

おのでら:時代のイメージとキャラクターがあってるのかがわからないかなあという(笑)

波野さん:短いからな

YUKI:時間と長さが足りてないです

波野さん:こういう作品こそ、シリーズがエブリスタで長期連載で人気を獲得していってほしいっていう

おのでら:はい。長女が出会ったばかりでさよならしてしまうのも寂しかったです。あとは4姉妹で男じゃないんだなって

波野さん:僕は『ああっ、女神さま』のイメージでしたね

みかんさん:近代国家成立以降の年号だけっていうのはどうなんですかね

YUKI:慶応さんとかもいたんですかね

波野さん:おんなじ人の名前もあるかもね

YUKI:結構刻まれてますもんね。明るく前向きに終わったのがすごくよかったです。読後感もすっきりして。

波野さん:クセというか、毒が唯一のヒロポンっていう。シリーズ展開しやすくエブリスタ賞で。

YUKI:第一印象で決めてました、というのが可愛かったです。

おのでら:ところで、会場の時間の延長できるんでしたっけ?

YUKI:えっとできないので、あと20分くらいです!

一同:!!

『グッバイ、スプリング』寧花著

かんぺ:居心地の良い小説、死の連鎖。私、ケイ、ホタル、マスター

おのでら:身内びいきで「泣けた?」って思ってます。

波野さん:読んだよ。泣けた?

YUKI:けっこうノベルジャムのなかでは異色作ですよね。

波野さん:3面やるんだなっ、おって思った。ただ、マスターがすべて語って終わってしまうっていうのが。もうちょっと3面やるんだったらマスターしか知らないことがあって、というのが欲しかった。

YUKI:なんで死んでしまうんだろうというのもあるし、不思議な感じがある。

おのでら:そうなんです。時間軸と距離感がつかめない喫茶店がぽかんと存在するです。辻褄はあってるんですけど、「この喫茶店、異空間で居心地がいいなあ」という。

YUKI:実はわかってないんですけど、寧花さんが「異空間」として思ってるのか「リアリティ」と思っているのかーー

波野さん:「リアリティ」はどうなんだろう

おのでら:検死のできる機関からはおそらく「リアリティ」を意識しているはずです。多摩地区周辺だそうです

YUKI:マスターの奥さんも死んでて。全滅? みたいな。

みかんさん:へっくしょん!

おのでら:すべて主人公で進んでいくかとも思ったんですか、途中でケイ視点が出てきたときに、メンターの仲俣さんから俯瞰できる人物がいたほうがいいといわれ「マスター」が登場したんですよね。

波野さん:なるほどねえ

『REcycleKiDs』ふくだりょうこ(著)

かんぺ:完成度の高さ、BCCKS売上1位、毎週続編アップ

YUKI:続編は読めてないのですが、周平の執着は? 美しさですか?

波野さん:そうね。美しいからなのと、一緒に住んでたっていうのが。

YUKI:バットエンドなんですよね

波野さん:基本そうなんですけど。誰にとって「バッド」なのかなというのは委ねています。

おのでら:正直、完成度が高すぎて、「ぽかん」としてしまった。設定、養子縁組の妙というのであれば「血縁の話」になるのかと思っていた

波野さん:思い出しちゃうからね。2話でくさびを打ち込んだからそれで印象が変わると思う。

YUKI:続編を読んでいく作品ですね。

おのでら:素晴らしい

『ひつじときいろい消しゴム』根木珠著

かんぺ:セルパブ著作多数、SHEEP、ぴゅういと口笛を鳴らす、ピーター・メアリー・スーツの男、いったいどこ? いったいいつ?

波野さん:これはどうすっかみなさん。僕は著者を知っているから。

おのでら:う~~ん!(笑)

波野さん:謎の賞、特別賞(笑)

おのでら:スーツの男が「あなたここを出たいんでしょう」というのが、物語の本質で、いいたいがために登場人物や技法があるんじゃないかと思う

YUKI:「青い鳥」なんですかね、幸せは日常にあって戻ってくる

波野さん:幸せになってないからね

おのでら:結局、疲弊してるっていう

YUKI:どこにいったって日常で日常ってことで

波野さん:現実は現実だよねって。それなりに不幸は待ってるからいま不幸なのはたいしたことじゃないよって

おのでら:「おさいふケータイ、”ピッ”」と読んでいて、ああ、これがみなさんおっしゃっていたことなんだーってぐわんぐわんしました

波野さん:それがネギタマワールドですよ。

YUKI:幻想文学とか好きなんですけど、意味ありげに「地下足袋」ですとか「黄色い消しゴム」とかでてきて、回収されないままなのがちょっと

波野さん:それはそのまま回収はしない。黄色は原色だから。茶色は中間色。

YUKI:不思議でした

『ユキとナギの冒険』牧野楠葉著

かんぺ:著者の好きな松尾スズキ、岡崎京子たちの世界、バイレンス、ユキとナギとお金持ってるヒッピー、R-18

波野さん:僕好きなんですよねー

YUKI:10代の頃見ていた『シド・アンド・ナンシー』とか『トゥルー・ロマンス』とかめっちゃ思い出しました。バイレンスだし、『時計じかけのオレンジ』とか理不尽。

波野さん:映画的に見たんだけど、シーンは少ないんだけど、もともと10万字のボリュームからシーンを薄めずに持ってきた。音は聞こえるし、香りも漂ってくるからシーンはよくかけていたと思う。

おのでら:さきほど「誰と組むかで変わる」という話もしたんですけど、牧野さんと組んでいたら好きな文脈が似てたなあ、と、とんでもない作品になったんじゃないかと後々気づきました。男性に”わかってほしいけど、わかってほしくない”ギリギリの女性の叫びのラインが描かれてる

波野さん:笑

YUKI:メンがヘラってる

おのでら:牧野さんには「エロ」を書いてほしいなと個人的には思います。R-18で、432円。

波野さん:ハンディキャップのなかで。窮屈な世界になっちゃったのがもたいないよねえ

みかんさん:それがどっちに影響するか

おのでら:審査員からは似てる作品もあるよね、という指摘を受けていました。

波野さん:それは「ジャンル」だから。悪いことではない。それ風でいいんじゃない。むしろ独自にその世界を発明してるわけだから。ボリュームの問題でもある。

『怪獣アドレッセント』腐ってもみかん著 ②

YUKI:『パシフィック・リム』とか『シン・ゴジラ』を思い出したんですけど、意識されて?

みかんさん:そう、ですね。著者的には自分なりの『シン・ゴジラ』へのアンサーで、怪獣がずっと好きで、それに勝てないちっぽけな自分の対比にフェティシズムがあって

波野さん:怪獣でてきたっけ。あ、状況か。

みかんさん:倒せない者の、アンコントロールの象徴として、怪獣。

波野さん:ぼくばいいなって思ったのが、一般の人間ではどうしようもない、やり場のないことがあっても恋はするよね、という描かれ方。

みかんさん:そうなってもらえたら、僕の勝ちですよ。

おのでら:めっちゃ考えてましたね

みかんさん:性愛の対象でなくとも、「友情」でさえ向こうから絶大なる承認があればそれで生きていけるだろうっていうーー 

波野さん:その話は飲みながら3時間位話そうか


『舞勇傅(ぶゆうでん)』冨士山 絢々著

かんぺ:挿絵、平成、ダンサーの生涯、ハイライト、『ビリー・エリオット』(リトル・ダンサー)

YUKI:大河ドラマだなと思いまして、それを短編小説に仕上げてしまったため、けっこうあらすじにはなってしまうきらいはあるのですが、話としては壮大な話でした。本人が気になります。

波野さん:この作品は、作品というより、著者本人が気になります

おのでら:わかります

波野さん:若い演劇のネタ帳なのかな

おのでら:イギリスのステージで『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』というのがあるのですが、それを思い出しました。ネタが詰め込まれていて、シーンのピックアップですよね。装丁に兵隊さんがいて、それも時代を感じさせます。

波野さん:役者さんの人なのかな

YUKI:プレゼンもインパクトありましたね

みかんさん:そうですね、実は、10年来の知人で、「開口一番」というオープンマイクをつかったパフォーマンスで知り合った方でした。

おのでら:ああ、「小説家は小説家にしかなれないけど、小説は誰にも門戸が開かれている」というやつですね。

『僕は彼の肉になる』金巻ともこ著 

かんぺ:ファンタジー、「平成」の使い方、オチに「。」、ルトフィートエシュタルの少年、「お前の肉を喰らえば病は霧散するという」

YUKI:完成度高かったですね。

波野さん:尺はうまくあってると思って、書かなきゃいけないバランスと書こうと思った分量があってる。今回、窮屈な小説も多かったなかで、さすがライティングされている方なので、狙っているところという。

おのでら:唯一のファンタジー小説でした。

YUKI:語り手の仕掛けがありまして、小説を読み慣れている方にとってはすぐに気づくところだと思うんですが。

波野さん:最初にね「あ」って。

YUKI:そうなんですね。一応、幼なじみとしての視点らしい描写は入るんですよね

波野さん:ぼくはいつも映像で見ちゃうから。俯瞰の視点だからおかしいなって。それに、「平」「成」の使い方は、去年、澤さんやってるからね。(澤俊之さん……『ツイハイ』デザイナー、ノベルジャム2017『PAUSA』著者)

おのでら:どうしてこの話を書こうとしたのかが気になりました。

波野さん:なるほどね。なんで、って。情報ではボーイズラブには造詣が深い方とは聞いていますが。さすがにうまい小説なので。

おのでら:玄人うけするテクニックが盛り込まれていますね。

『オートマティック クリミナル』高橋 文樹著

かんぺ:SF、時間軸の緩急、妹の交通事故、前回は編集者で参加

波野さん:評価低いのがわからないんだよ

YUKI:完成度高いですよね。あれ、最初に読んだので最後どうなるんですっけ。

波野さん:ダラダラ終わるんだよ。この人ね、また尺間違えちゃった(笑)

おのでら:社会的システムに食い込んでいくハヤタなんですけど。どっちだろう、と。

YUKI:映像的には盛り上がりますよね。”迫りくる電車”、とか。すごい、面白かったです。

波野さん:審査員ウケが悪くて、SFとして完成度が、という質問にいってしまったらしいんだよ

YUKI:うーん。ジュブナイルとして読めば楽しい

おのでら:ツイッターでは小説の装丁、タイトルのアンケートも行っていました。実はタイトルの意味がよくわかっておらず。

波野さん:「オマクリ」

YUKI:自動的な犯罪

おのでら:犯罪が自動的に行われてしまう?

波野さん:この人はあとづけなので主題でもない。

みかんさん:語感でしたね

YUKI:あ、15時だ! ぴったりですね

波野さん:高橋さんの『ちっさメロン』、『デカメロン』の逆のタイトル、とてもおもしろいよ。

おのでら:めもめも。あー楽しかった。

みかんさん:それにしてもグランプリどこでしょうね

一同:ほんとうですねえ

おのでら:それではいったんこちら、

一同:さようなら~~

というわけで「ノベルジャム2018読書会」の書き起こしレポートでした。全作品レビューのご参考にしてもらえたら嬉しいです。

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Aチーム作品『DIYベイビー』『グッバイ、スプリング』

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小野寺ひかり

108円

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小野寺ひかり Work:小説、脚本(ドラマCD/舞台/漫画)。BookActive:一箱古本市(ひかり堂)、第3回NovelJam2018秋ディレクター、私設図書館、まちライブラリー東京事務局。 Hobby:創作講談 問合→ onodera_hikari@aiajp.org
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