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“ドラゴン桜” 桜木先生の名言を教育学的・心理学的な視点から考察する

 今話題沸騰中の“ドラゴン桜”。その登場人物である桜木先生の発言が、とても刺激的で爽快ですよね。今回は、数ある名言の中から、第5話のあるシーンをピックアップして、教育学の視点から考察してみました。

“ドラゴン桜” 第5話のあの名言

 第5話の中にもたくさんの名言がありました。その中でもピックアップする名言は、終盤の理事長に対して桜木先生が言った次の発言です。

  「生徒は自由にのびのびと個性を伸ばす身だ。勉強っていうのは強制的にやらせて伸びるものではない。だからって野放しに自由にさせればいいってものでもない。人間には上を目指したいという本能がある。覚悟を決めたら生徒は自ら殻を破り、能力を開花させる。教師の役目は奴らの中に眠っている好奇心を刺激してやることだ。違いますか?」

 今回はこの言葉について、教育学的・心理学的な視点から学べることを考察をしてみました。(完全に個人の見解です。)

“上を目指したい本能とは”

 桜木先生は、理事長が築いてきた自由にのびのびとした学習環境を肯定した理由として、「人間には上を目指したい本能がある」と発言しています。その“上を目指したい本能”とは、学術的にも根拠があります。それは、下の図に示した、『マズローの欲求5段階説』です。(https://ferret-plus.com/5369 参考)

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 「マズローの欲求5段階説」とは、心理学者アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定した上で、人間の欲求を5段階に理論化したものです。人間には5段階の「欲求」があり、1つ下の欲求が満たされると次の欲求を満たそうとする基本的な心理的行動を表しています。その中でも、人間の最も高次の欲求として「自己実現の欲求」が挙げられています。自分の世界観・人生観に基づいて、「あるべき自分」になりたいと願う欲求を指します。桜木先生の言う“上を目指したい本能”とは、「自己実現の欲求」と言い換えることもできますよね。

教育者の役目は“刺激すること”

 桜木先生は、子どもには“上を目指したい本能”が備わっているという前提を提唱しながら、「だからといって野放しにして自由にさせればいいってものでもない。」とも言っています。ここがおもしろいですよね。教育者としては、「どういうこと?」「じゃあ、何をすればいいの?」と問いが生まれてくるところです。実際、子どもの主体性を尊重しなければならないのは分かっているけど、子どもを自由にさせていたらダラダラと緩んでくる…といったことは、教育を経験した先生や保護者の方ならきっと経験したことあるはずです。そこで、桜木先生はこんなことを言うのです。ーー「教育者の役目は刺激すること。」
 「刺激する」とは、いったいどういうことなのか。実際に桜木先生が、物語の中で行っている教育を分析していきたいと思います。

“子どもの好奇心を刺激する”ために

 桜木先生が子供の好奇心を刺激するために行っていること。それは、「興味・関心と学習意欲との結び付け」です。「興味・関心と学習意欲の結び付け」とは、子どもの内面から沸き起こる興味・関心と、学問を結びつけ、子どもの学習意欲を高めるということです。「興味・関心と学習意欲の結び付け」をしているシーンはいくつか見られました。その中でも最もわかりやすく現れたのが、「虫が大好きな男子学生に、その虫の研究論文を渡したシーン」にありました。虫の大好きな男子学生は、その論文を読むために、英語を調べ、文章を読み解いていきました。また、説明には数学も使われていましたから、おまけに数学まで勉強をしていました。英語で書かれた論文を渡すことによって、英語を習得するだけではなく、数学の勉強、読解力の向上にもつながったということがわかります。これは極端ではありますが、子どもの「興味・関心と学習意欲を結びつけた」典型的な例といえます。以前、ゲームが大好きな6年生の男の子にプログラミングでゲームを作るサイトを教えたら、キャラクターを動かすために必要な中学校の数学を独学で勉強してきたことが思い出されます。興味・関心も突き詰めると学問に繋がることが多く、教育者はそのつながりに気づき、結び付けていくことが重要だということがわかります。教育学的の視点から言えば、前回紹介した「内発的動機付け」に近いですね。子どもの内面から溢れる興味・関心をエネルギーにして、学習に自ら向かわせる。そんな教育者になりたいものですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。今回の記事が、教育関係者の方のお役に少しでも立てれば幸いです。また、次回もよろしくお願いします。

参考
https://ferret-plus.com/5369 、「私たちは子どもに何ができるのか」ポール・タフ、2017

 


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