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博士課程は科学哲学から

所属先のオンライン大学院(公衆衛生系)が特徴的なのかもしれませんが、博士課程1年の授業科目で繰り返し言われるのが、「研究のOntology(実在論・存在論)とEpistemology(認識論)に関する前提を固めてから、研究方法やリサーチクエスチョンを練りなさい」ということです。ほぼ全てのWeekly taskで、提示された研究論文の哲学的前提を考察・批判するよう求められます。

Ontologyとは、「ある・存在するとか何か」を考える哲学であり、Epistemologyは「知識・知るとは何か」を深める哲学です。授業では科学哲学の歴史を辿り、自分の研究の哲学的スタンスに関するエッセイ課題もありました。

日本の公衆衛生大学院では、ここまで科学哲学の話をしっかり扱うことが少ないかもしれません。所属先が科学哲学を重視する背景を教員に伺ったら、以下のようなお返事をいただきました。

流行っているから、皆やっているからという理由で研究デザインを決めてしまう研究者が一定数いるのですが、そのような研究者を育てたいとは思っていません。勿論学術誌に掲載する論文には、字数の関係で研究の基盤となる科学哲学について言及することは、字数的に困難です。しかし、それは哲学を考えなくてよいという意味ではないのです。

Monthly Meetingより

加えて、他人の研究を批判的に吟味するためには、どういう哲学が根っこにあるかを知ることが必要です。「質的研究だから、一般化可能性がない」という指摘は、評論家やコメンテーターでもできます。しかし、博士課程は研究者を育てたいので、他の研究成果を自分の血肉にできる必要があり、それには哲学的前提が不可欠なのです。

最後に、研究手法を検討するために有用な科学哲学の本を紹介します。簡単に書かれ過ぎている本は、正確じゃない記述が多々あるのでご注意ください。

http://www.andreasaltelli.eu/file/repository/_Traditions_in_Social_Theory_Ian_Craib_Ted_Benton_Philosophy_of_Social_Science_The_Philosophical_Foundations_of_Social_Thought_2010_Palgrave_Macmillan_.pdf


https://bpb-us-w2.wpmucdn.com/u.osu.edu/dist/5/1926/files/2018/10/PhilosophiesofQualitativeResearch-2c1nvdg.pdf



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