見出し画像

Newsletter【旅先案内人 vol.6】“海のシルクロード”壱岐島の物語を紡ぐ、離島の案内人 <前編>


こんにちは。ホテルや旅館を運営する、温故知新です。

普段、私たちの運営施設にご宿泊くださったお客さまなどを対象に、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたニュースレター、「旅先案内人」をお届けしています。

noteではバックナンバーを掲載しています。ここからは【7月30日 配信 旅先案内人 vol.6】の内容をご覧ください。
(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f 等)


壱岐で生まれ育った、島を愛する案内人たち

山から海へと勢いよく風が吹き抜け、青々と茂る緑たちが踊りだす。

画像1

九州・福岡の沖合70kmに浮かぶ壱岐島。私達の宿『壱岐リトリート海里村上』があるこの離島は、国産み神話には日本で5番目に生まれた「伊岐島」として登場し、「神々が集う島」として観光の名所となっています。この壱岐島は弥生時代から中国や朝鮮大陸に渡るために、また、大陸から日本にやってくるための交差点、”海のシルクロード”でした。

かつて、女帝として活躍した人物「神功皇后」も朝鮮遠征の前に風待ちをしたり、明治・大正期には、対馬や朝鮮に渡る船の風待ち・潮待ち港としてにぎわったこの島。大地を巡り、海へと勢いよく吹き抜ける風は、古代から様々な人達の希望やロマンを乗せて島を駆け抜けてきました。

画像2

国境離島という特異な立地と、海や緑に囲まれた豊かさを持ち、手つかずの自然や文化が色濃く残る壱岐。

今回は、島を愛する『離島の案内人』たちにスポットを当て、2回にわたり彼らが伝える島魅力をお届け。海里村上と合わせて訪れてほしい場所や、アクティビティをご紹介します。

かつては入山禁止”神秘の山”の語り部。78代続く「男嶽神社」

壱岐には神社庁登録数だけでも島内に150もの神社があり、人々の生活に欠かせない存在です。

画像3

その中でも、芦辺という地域にある「男嶽神社」は、現在の宮司 吉野理さんの代で78代目と、数千年を超える時を刻み続ける神社です。明治期まで山岳信仰の聖地として修験者以外の入山が許されなかった神聖な場所。山道を登った先にある男嶽神社の周囲には、凛とした空気が漂っていました。

壱岐の歴史と共に歩む男嶽神社 宮司の吉野さんに、この島の魅力をお聞きします。

ー 『”昔”がそのまま残っている良さが壱岐にはあると思っています。自然・神社・遺跡。田舎の離島という特殊な場所だからこそ、手つかずのままの魅力があります。大陸と大陸をつなぐ島なので古くから大切にされていた場所という背景もあると思います。』

▶神社は、日本の生活に根ざした文化のひとつ。

ー『昔は、全国どこでも神社がたくさんあったんです。東京にも。しかし、土地開発などで大きい神社にまとめてしまう動きがあり、小さい神社は失われていきました。

壱岐にはそれらが残っています。小さいところだと、お家三軒で代々お祀りしている神社もあります。

画像4

都会にいると、隣に誰が住んでいるかもわからず、関係性が希薄になっているのが当たり前だと思います。しかし、「お互い助け合っていきましょう」というのが、実は日本古来のスタイルであり、昔から神社がその起点になっています。

ただ単に街のコミュニティが存在するのではなく、神社が中心にあることによって皆が「コト」に向かうことができます。例えば「お神輿をかつぐ」という1つの目標にむかって、人々が助け合いまとまっていく。喧嘩や争いをしていたら、うまくいきません。困ったとき何かあったときに、お互いが助けられるようになっている。神社は宗教ではなく、日本古来からある温かい文化なんです。』

画像5

ある朝、宿近くの小さな神社に何気なく立ち寄ると、早朝にも関わらずお参りにきていた地元の方とすれ違いました。壱岐の人達の毎日の暮らしの中に、神様や神社がある。この島が穏やかで心地良いのは、当たり前のように手を合わせて心に向き合う行為が日常のすぐそばあるからなのかもしれない、と感じました。

▶今と昔をつなぎ、郷土の魅力を伝える祈りの場。

ー『参拝者にはこれまでの歴史やこの場所の説明をしたり、島自体のご案内をするときもあります。そこで私は小さい頃の話しなども交え、「昔とどう変わったか」をお伝えしています。

壱岐は昔の良さを残す島、なるべく手をつけないようにしたほうがいい島だと私は考えています。残念ながら、観光に特化しすぎて昔の良さを消してしまった場所も多くあります。不便でたどり着きづらいからこそ、価値がある場所もある。これからは昔のものをどれだけ大切に残せるかが、大切だと考えています。』

画像6

数千年という悠久の時に思いを馳せながら、壱岐の今と昔を知る。島に訪れたら、ぜひ島をゆっくりと歩いてみてほしいと思います。

変わらず存在する大自然に抱かれ点在する神社に手を合わせながら歩く壱岐島は、私達をはるか遠くの時間旅行へといざなってくれるでしょう。

旅の思い出をカタチにして。地域をつなぐ"温泉カップ"

海里村上のある「湯本」というエリアは、玄界灘に浮かぶ壱岐島西部に位置し、壱岐随一の温泉地。1700年以上の歴史を誇る日本屈指の古湯で、湯ノ本湾の海のミネラルを豊富に含んだ天然温泉が湧き出ています。

画像7

海里村上で浸かることができる温泉は、温泉とみなされる基準値の約17倍という超高濃度温泉で、成分の浸透しやすい良質な湯治湯として太古から人々に親しまれてきました。

▶私達を悩ませる「湯の華」

そんな魅力たっぷりの自慢の天然温泉ですが、私達を日々悩ませることがあります。それは、大量の「湯の華」です。

画像8

濃度が高く鉄分やミネラルが豊富なため、固形の湯の華がたくさん排出され、配管の詰まりの原因に。日々メンテナンスが欠かせません。自然の恵みでもある湯の華ですが、これまではただの"厄介者"でした。

「この"厄介者"を活かし、何かこの場所らしい取組をすることができないか?」

海里村上の支配人は知恵を絞り、湯の華を「ものづくり」に活かそうと考えます。

▶廃棄物を活用して。湯の華×陶芸の新しい出会い。

湯の華を活用し海里村上で開発したものは、オリジナルの温泉カップ。湯の華を釉薬に混ぜて焼いたり、模様付けのアクセントにして仕上げています。

★海里オリジナルカップ_手持ち2

廃棄物を活かし新たな"ものづくり"にチャレンジしたわけですが、このカップは障害者の就労支援施設「壱岐國の里」の協力のもと作成しています。

「壱岐國の里」は、壱岐に住む障害のある方々の就労のために必要な知識の習得や能力向上に向けて訓練を行う施設です。カップづくりを請け負っていただくまでの経緯を担当者の小畑さんにお伺いしました。

ー「今までの仕事のメインは、お店に納品するための瓶の選別のお手伝いのような作業がほとんどでした。アイデアやコラボの依頼を頂いたのは海里村上の支配人からがはじめてで。そこから一緒につくりあげていきました。」

画像10

ー「海里村上での取組みをきっかけに、地元企業とのコラボのお話も少しずつもらうようになりました。」

壱岐國の里で働く人達の手で、丁寧に作られた温泉カップ。湯の華は陶芸と出会い、壱岐の自然の証を刻むモノへと生まれ変わりました。

ものづくりを通じて、海里村上と壱岐國の里で働く人々をつなぐ役割を果たしてくれた温泉カップ。宿で実際に使用するほか、ゲストの方にも壱岐島で過ごした旅の思い出をカタチにしていただけるよう、湯の華を使った陶芸体験を実施しています。完成品は焼き上げて、後日ご自宅までお届けしています。ぜひ壱岐の自然のぬくもりをカップにして持ち帰ってみては。

■湯の華陶芸体験
壱岐島で過ごした旅の思い出をカタチにしていただける陶芸体験。
1名様より承ります。完成品は後日ご自宅まで郵送。

場所:館内にて開催
料金:4,500円/大人・中学生以上 2,500円/小学生以下のお子様(親御様同伴)
所要時間:約1時間
定休日:お日にちによっては、開催できない場合もございます。

農家の日常の先には、おいしい朝が待っている。

壱岐に訪れて一番の驚くことといえば、間違いなく”食”だと思います。魚・野菜・お肉・お米、どれをとっても新鮮で味が濃くみずみずしい。壱岐が”実りの島”と呼ばれる所以を身をもって体感します。

海里村上ではそんな豊かな島で、地元の野菜への愛情たっぷりな農家のもとで農業体験をして頂けるツアーを実施しています。

画像11

体験でお邪魔するのは、アスパラを育てている橋本農園さん。畑には太く力強く育ったアスパラが土からスクッと顔を出していました。

▶旅の本質は、"日常"にあるのかもしれない。

橋本農園さんは、普段は体験などは受け入れていません。しかし、海里村上の支配人は、ゲストに収穫の喜びや大変さを感じてもらいたいという思いで、特別にOKをもらい実施をしています。

画像12

ー「観光農園ではないので、農家のリアルを体験してもらいたいと思っています。そのため、早朝の実際の収穫時間に体験に来てもらえるなら、ということでOKをしました。

早起きし、共に汗を流し収穫の喜び、大変さを感じて頂く。そのあとに宿で食べる朝食は最高においしいと思いますよ。」

朝のすがすがしさを感じ、朝から体を動かして一日の良いスタートを切る。作業後、収穫したお野菜を海里村上のシェフが朝食で振舞います。 体を動かした後に食べるご自身で収穫した朝採りお野菜の味は格別なものになるはずです。

その地域のことを知るには、その土地の日常にたっぷりと浸かり、味わうことが一番です。「日常を感じる旅」は、きっと何年経っても思い出したくなる、特別な体験になるのではないでしょうか。

■アスパラ収穫体験
料金 通常期:3,000円/人 繁忙期:4,000円/人
所要時間:約1.5時間
出発:5:30頃 (時期によって変更があります)
定休日:農家のご都合により催行できない場合がございます


3密回避の『リトリート トラベル』で安心して滞在を。

okcs運営ホテルは全て、22日よりスタートしたGo To トラベルキャンペーンの対象施設となりました。

瀬戸内リトリート 青凪:全7室
壱岐リトリート 海里村上:全12室
箱根リトリートföre:全37室
箱根リトリート villa 1/f:全11室(独立型ヴィラタイプ)

いずれのホテルも部屋数が少ないため、元々3密になりにくい環境にありますが、私たちは皆様と一緒に「新しい旅のカタチ」を模索し柔軟に感染予防対策等に取り組んでまいりますので、ご協力頂けますと幸いです。

ABOUT:温故知新について


光を見つける。磨いて、届ける。その地域にしかないもの、魅力的なもの、守るべきもの。その光を見つけ、形を作り、国内外の皆様に届けること。それが私達のミッションです。その宿があるからそこに行きたいという「目的地になる宿作り」を目指しています。

主な運営ホテル

・瀬戸内リトリート 青凪

画像9

・箱根リトリートföre

画像10

・箱根リトリート villa 1/f

画像11


・壱岐リトリート 海里村上

DSC_1080_レタッチ







この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?