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ヴィンテージレーヨンシャツの魅力。

 こんにちは。こうです。
 今回は「ヴィンテージレーヨンシャツの魅力」について書いていきます。


1.レーヨンとは

 レーヨンとは ※「再生繊維」を用いて作られる、シルクのような光沢やなめらかな肌触りが特徴とされる生地です。


※再生繊維 
 物質を熱などで溶かし、繊維として再生させたもの。植物などを原材料とした天然由来のものと、プラスチックなどを原材料とした化学由来のものがある。
 ちなみにレーヨンは木材パルプが原材料のため、天然由来のもの。


 レーヨンは吸湿、放湿性に優れており、暑い日でも涼しく着用することができます。
 また、色素に染まりやすいという特徴もあります。

 独特なとろみ(テロテロ、ツヤツヤしていて肌触りがよく、やわらかくてすとんと落ちる素材の特徴)があることから、着用時にはどことなくアンニュイな雰囲気を演出することができます。

 ただ、木材パルプが原料のため水に弱く、縮みやすいという欠点も。独特な雰囲気を出せる反面、とても繊細な生地といえます。

 レーヨンという名前は、「光線(英: ray)」と「綿(英: cotton)」 を組み合わせたフランス語で「光るもの」という意味に由来しています。
 これだけですでにカッコイイ。

 これらの特徴をもったレーヨン。
 今回は主に、1950.60年代にアメリカで多く着用されたレーヨンシャツにフォーカスしていきます。

2.レーヨンシャツのカルチャー、歴史

 アメリカにおいてレーヨンシャツは、1950.60年代に多く生産、着用されました。
 背景として※「ロカビリー」カルチャーの隆盛があったとされています。


※ロカビリー
1950年代にアメリカ合衆国南部で誕生したポピュラー音楽の一ジャンル。今日のロックンロール音楽の原型ともいわれている。
 呼び方の由来は黒人音楽のブルースから派生した「ロックンロール」と、白人音楽のスタイルの1つである「ヒルビリー」との合成語。
 代表的なミュージシャンに、エルヴィスプレスリー、カールパーキンス、エディコクランらがいる。


 ロカビリー音楽では歌いながら踊り、ステージ上で「魅せる」といった特徴があります。
 そのためファッションにおいても派手な髪型(リーゼントヘアなど)や服装が好まれました。
 光沢のあるスーツやレザージャケットをはじめ、レーヨンシャツも頻繁に着用されていました。
 
 またロカビリーシーンにおいてレーヨンシャツが頻繁に着用された要素として個人的な見解を1つ。
 独特のとろみのある生地が踊った際に揺れることで、ステージ上での魅せる効果につながったという点も大きいのではないかと思います。

 そして、ロカビリーカルチャーを代表するミュージシャン「エルビス・プレスリー」の存在。
 彼がステージ上はもちろん、プライベートでもレーヨンシャツを愛用していたとされており、着用の記録が残されています。
 よく見るのは襟やポケットのフラップの色が切り替わったものや絣(かすり)柄のもの、ハワイアンシャツなどです。

 「なぜ、ロカビリーシーンでレーヨンシャツが頻繁に着用されていたのか」という明確な理由までは明らかにされていません。(あるのかもしれませんが、情報が少ないです。)
 ですがこのように、ロカビリーカルチャーとレーヨンシャツには密接な関係があったとされています。 


3.レーヨンシャツの種類


 1950.60年代にアメリカで流行したレーヨンシャツは、さまざまな種類の柄が存在します。
 独特な柄に、発色の良さと躍動感のある生地の組み合わせは、見ていて引き込まれる魅力があります。
 すべてとはいきませんが、一部紹介していきます。


① 無地

ニューヨークのカジュアルウェアブランド、
マクレガー社製の50sレーヨンシャツ。
シルバーグレーのシンプルな色味に、
襟とフラップのステッチがアクセントの1着。


 まずは定番の無地(柄と言っておいてすいません…笑)。
 色々な洋服に合わせやすいのはもちろん、シンプルだからこそ生地感やシルエットから生まれる独特な雰囲気を楽しむことができます。
 ボタンの形や細部のステッチ使いが特徴的なものもあり、アクセントを楽しめる個体も。

 スタイリングとしては、スラックスなどを合わせるとそれだけで王道の50sスタイルを楽しめます。
 また、色落ちしたデニムなどと合わせることで、シャツとの「コントラスト」に、とろみと色落ちそれぞれの「動きのある生地感」の2つが同居した、所謂「雰囲気系」のスタイリングを楽しむことができます。

 シンプルに生地感を楽しみたい方、雰囲気重視の方におすすめです。


② 絣(かすり)柄

襟の形状やポケットにフラップが付かない点から、
60sと思われる絣柄のシャツ。
黒地にピンクの絣が入る、
通称「クロピン」と呼ばれるシャツ。


 
次に絣柄。絣柄とは、「絣糸(かすりいと)」を用いて文様や柄を表現した織物です。
 糸に防染処理を施すことで、染料に染まった部分とそうでない部分によって全体的にかすれたような柄になるのが特徴です。

 シャツだけでなくパンツやジャケットなどにも使われているものが多く、50sのロカビリーシーンにおいて特に頻繁に着用されていました。
 50s=絣柄のイメージの方も多いのでは。

 1枚着用するだけで50sロカビリー気分に浸ることができます。
 ロカビリーの要素が強いため正直汎用性は高くないですが、スラックスやデニムと合わせるとそれだけでカッコよくきまるシャツです。

 50sのカルチャーを特に重視したい方におすすめです。


③ オンブレ(シャドー)チェック柄

こちらも先程の絣柄と同様のディテールから、
60sと思われるオンブレチェックシャツ。
青、黒、白のシンプルな配色パターンから、
陰影がより際立つ1着。


 
次にオンブレチェック柄。ロカビリーシーンで頻繁に着用されていたわけではないですが、50.60年代にはレーヨン素材のこの柄のシャツが多く販売されていました。

 以前の記事にも書きましたが、特徴はなんといってもこの陰影のある柄。
 とろみと躍動感のあるレーヨンの特徴と相まって、着用時には残像のようなゆらめきを演出することができます。
 個人的に、これほど色気のある雰囲気を演出できる組み合わせは他にないと思うほど、生地と柄、それぞれの魅力が見事にマッチしたシャツだと思います。
 生地と柄の特徴が、互いの魅力を引き出し合っている点がなんともいえません。

 なぜこの年代にこの生地✕柄で多くのシャツが販売されたか明確な情報は見つけられていませんが、個人的には上記のように生地と柄それぞれの魅力が引き立つから、というねらいが当時からあったのではないかと思います。
 
 アメカジ好きな方、 アメリカ西海岸のストリートカルチャーが好きな方におすすめです。


④ ハワイアン柄

 当方ハワイアンシャツは所持していないため、画像はなしでご想像でお願いします。
 気になる方は是非調べてみてください。(わかりにくくてすいません。)

 夏の定番、ハワイアンシャツ。名前の通りハワイのイメージが強いかと思いますが、実はそのルーツは日本人の発想によるものといわれています。
 20世紀初頭にハワイで農業に従事していた日本移民が、持参していた着物を再利用する際に、当時愛用していた ※「パラカ」 風に仕立て直したのがはじまりといわれています。


パラカ
 
ジャケット生地の厚い綿素材として、1920年代に日系移民の間で流行したデニム色(濃青色)、白色の厚手の綿に格子状の縞模様(チェックのような模様)の生地のこと。
 正確には、イギリスやアメリカの海兵がハワイに来た際によく着ていた「チェック模様のついた長袖の作業着」のことを指す。


 また、日本の着物の美しさに惹かれた現地の人が「着物をシャツにしてくれ」と頼んだのが起源という説もあるそうです。
 まだまだ歴史は深いのですが、ここで掘りすぎると脱線してしまうので詳細は割愛します。
 興味のある方はぜひ深堀りしてみてください。

 ハワイアンシャツは名前の通り、ハワイのヤシの木や葉、花などが柄のモチーフとなっているものが多いです。そのほとんどが大判で、目を引くものとなっています。
 1950年代まではシルクやレーヨンが素材の主流でしたが、60年代以降はポリエステルのものなども多くなったようです。
 目を引く大判の柄を発色の良さで際立たせることができ、なおかつ涼しさのあるレーヨン素材のものが価値があるとされています。

 また、先述のエルビスプレスリーも愛用していたことで知られており、着用写真や記録なども多く残されています。

 シャツ1枚で主役級のスタイリングを作りたい方や、レーヨンシャツ特有の涼しさを雰囲気ごと味わいたい方におすすめです。


 ここまで1950.60年代のヴィンテージレーヨンシャツをメインに紹介してきました。
 近年は値段が高騰しており、コンディションの良いものはなかなか簡単に手に取れないことも。

 そこで、ヴィンテージに造詣の深い復刻ブランドのものや、80.90年代のアメリカブランド(GAPやラルフローレンなど)のシャツもオススメです。
 生地感やシルエットはオリジナルのそれとほぼ変わらず、ヴィンテージのレーヨンシャツならではの雰囲気を比較的安価に楽しむことができます。
 正直、「絶対オリジナルを着たい!」というある種強い自己満足的なこだわりがなければ、十分かと思います。

 オリジナルが手が出にくいと感じた方は、ぜひ調べてみては。


4.まとめ

 長くなってしまいましたが、ヴィンテージレーヨンシャツの魅力について書いてみました。

 
 ロカビリーという文化的背景、どこか気だるさがありながらも躍動感のある独特な生地感とシルエット、それぞれ個性のある魅力的な柄の数々、素材と柄の相互作用など…。

 耐水性の低さなど扱いにくさもあるものの、それに勝る「色気」「カッコよさ」を秘めたシャツだと思います。

 余談ですが、僕が古着を好きになりたての頃、よく通っていた古着屋さんで、赤のオンブレレーヨンシャツに無地T、ヴィンテージデニムにVANSのスニーカーが定番のスタイルの店員さんがいました。

 なんとも言えない色気と雰囲気があり、最高にカッコよかったのを今でも鮮明に覚えています。
 
 レーヨンシャツは、僕にとって「カッコイイ古着の着方」を考える上での原点となった服といえます。
 これからも大切にしていきたいです。

 最後に脱線してしまいましたが、今回の記事が少しでもレーヨンシャツに興味をもっていただくきっかけになれば幸いです。

 今回は以上となります。
 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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