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紫式部と『源氏物語』って超有名だけど、何がスゴイの?

1999年。

「この千年間で偉大な業績を残した歴史上の人物」に紫式部が選ばれました。




選ばれたのは30人だけ。



日本人では、紫式部だけ。




【※】
「この千年間で|偉大な業績を残した歴史上の人物」

ミレニアム(2000年)を記念し、オックスフォード大学とケンブリッジ大学の歴史学者たちが選出した。


紫式部や『源氏物語』のことは99.9%の人が知っているでしょう。


2024年に紫式部が主人公である大河ドラマ『光る君へ』が放送されるなど、日本での紫式部と『源氏物語』の知名度の高さは言うまでもありません。




弐千円札(ゲットするのに苦労したぜ)にも、『源氏物語』の一場面が描かれています。


『源氏物語』の「鈴虫」の場面が描かれています。
右下には、ちゃっかり紫式部が・・・・・・!


そのうえ『源氏物語』は日本だけでなく海外でも高い評価を受けています。


フランスでは国立の大学教授などで専門のプロジェクトチーム(全員、まなざしが強い)が組まれるほどです。


野村伸一(編)
『世界の源氏物語』
ランダムハウス講談社
2008/4/3
p38





しかし、紫式部と『源氏物語』について、

「何が、どのようにスゴイのか」

を知っている人は多くないのではないでしょうか。


したがって、私なりに紫式部と『源氏物語』のスゴさをお伝えします。
内容は専門的になりすぎないようにしたつもりです。

これを知れば、大河ドラマ『光る君へ』がより楽しめると思いますよ☺️


❶紫式部の基礎知識


紫式部という名前、本名ではありません・・・・・・・・・

同時代(平安時代)の男性は、

藤原道長
藤原兼家

など、ニンゲンらしい名前です。
彼女の場合は「紫式部むらさきしきぶ」・・・・・・よく考えると、

「式部ってなんやねん😨😨」


とツッコミたくなりせんか?


なぜこのような名前なのか。




それは「正式な記録が残っていない」からです。



現代でも、個人情報をさらすのは実に恐ろしいことですね?


個人情報を悪用する人
(photoAC)


平安時代の女性は、本名を知られると呪われる危険性がありました。
今と違って、”呪い”がもたらす心理的ダメージは大きかったのです。
だから、安易に名前を知らせませんでした。


したがって、ニックネームのようなもので呼ばれていました。

同じ平安時代の女性、清少納言も本名ではありません。

赤染衛門あかぞめえもんという人は「えっ、キミ女性・・だったの?」と思ってしまう名前をつけられています。(男性みたいな名前ですが女性です)


菅原孝標女なんて「すがわらのたかすえの むすめ」という”そのまんま・・・・・”すぎる名前をつけられています。(菅原孝標女は、文字通り菅原孝標の娘)




❷紫式部の何がスゴイ?


非常におおざっぱに言ってしまえば、


として構わないと思っています。

というわけで、さっそく『源氏物語』のスゴさをお伝えしましょう。




❸『源氏物語』のスゴさ(1)


これが、1つめのスゴさです。

たしかに、それ以前にも『竹取物語』などの物語はありました。



しかし『竹取物語』の内容なんて、

★竹から生まれた女の子が、さまざまな人から求婚され、月に帰る


というビックリ・キテレツストーリーです。


(photoAC)


子どもにはウケても、大人・・には響きません。
そういう「ファンタジー」は、もうお腹いっぱいだったのでしょう。


しかし、『源氏物語』は違いました。
『源氏物語』は、主人公・光源氏が都を舞台にさまざまな姫君と恋愛をするリアリティ・・・・・あふれる話です。





現代において、”ドラマ”は、一定の人気を誇るものです。
その”ドラマ”というものは、現実に基づき、リアリティある内容でしょう?

たとえば・・・・・・


⬇️母が「たまらん」と言っていた『VIVANT』


⬇️私が珍しくすべて観たドラマ『逃げ恥』


ファンタジー系もおもしろいですが、そればかりでは飽きてしまいます。


今でこそ、「リアリティある話」なんていくらでもあります。
しかし、「ファンタジーしかない」状況において、リアリティある作品を書いた紫式部の『源氏物語』は画期的作品なのです。

携帯電話にしろ、インスタントラーメンにしろ、


のです。


そして、世界最古・・・・のという点も重要。
”日本最古”ではないんですよ。

『源氏物語』は、西暦1001年ごろに書かれたとされていますが、この時期に世界で存在したものといえば『アラビアンナイト』くらい。
しかも、文字ではなく口頭で伝わっていたものです。


『源氏物語』以後のすべての小説は、『源氏物語』の影響を受けている

と言われるほど、大きなものを残しました。

この記事冒頭の「偉大な業績を残した人物」に選ばれるのも当然と言っていいのかもしれません。


日本の文学が、世界的に頭一つ抜けていたなんて、誇らしいと思いませんか?


❹『源氏物語』のスゴさ(2)


突然ですが『SLAMスラムDUNKダンク』嫌いな人、います?

いませんね( ̄∀ ̄)
話を進めましょう。


あの超絶人気漫画『SLAM DUNK』を生み出した井上雄彦氏は、『SLAM DUNK』の前に『楓パープル』という作品でデビューしました。


その後、『カメレオンジェイル』という連載を経て、『SLAM DUNK』で人気爆発します。


多くの作家は、初期の作品で経験を積み、大ヒット作を生み出すのではないでしょうか。




デビュー作で人気爆発し、1000年以上読み継がれることになりました。

しかも、文字数は約94万字。
現代の1冊の単行本が、約15万字前後・・・・・・。


つまり、紫式部は、デビュー作でいきなり単行本約6.2巻分の長さの作品をかき上げてしまったわけなのですね。


また、『源氏物語』には、795しゅ和歌が登場します。

【※】和歌

ここでは【5・7・5・7・7】の形式の短歌をいいます。
たとえば、

◇◇◇◇◇◇
限りとて  別るる道の  悲しきに
いかまほしきは  命なりけり
◇◇◇◇◇◇

など。




795首、ですよ。
795首の和歌を紫式部が一人で考えた、ということなんですからね。


【※】795首の和歌を紫式部が一人で考えた

そもそも、『源氏物語』は紫式部一人ではなく複数の人によって書かれた、という説もあります。


単行本約6.2冊のお話を書くだけでなく、和歌を約800首も詠んでしまうなんてトンデモナイことです。

参考までに、280万部のベストセラーとなった俵万智さんの『サラダ記念日』に収録されている短歌は434首。


『サラダ記念日』も十分すごい数なのですが・・・・・・。



❺『源氏物語』のスゴさ(3)


『源氏物語』の主人公・光源氏は、イケメンで歌・楽器の演奏・絵画などのあらゆる才能に恵まれ、天皇の血筋でもあるという完璧超人です。

⬇️漫画化されると必ず美形で描かれます


『源氏物語』は光源氏を中心に話が進みますが、光源氏は途中で亡くなります・・・・・


私が『源氏物語』を読んで最も震えた・・・・・のは、その書かれ方です。

今まで、『ジョジョの奇妙な冒険』や『キングダム』など、あらゆる漫画の「キャラの死に様」に感動してきた私。


しかし、『源氏物語』を超える、「人の死」の書き方に出会ったことはありません。これからもないでしょう。それほど、特殊な書き方です。


(ネタバレになるので、ここでは詳細は省きますね)


というわけでここまでをまとめます。



❻『源氏物語』の豆知識


最後に、人に話したくなる豆知識を。

あなたが書店や図書館で手にする『源氏物語』は、『源氏物語』であって『源氏物語』ではありません。

これはどういうことか――


たとえば、現代において、あなたが朝井リョウさんの『正欲せいよく』という小説を買うとします。(映画化された作品です)


東京の書店で買ってもネット通販で買っても図書館で借りても、すべて同じ『正欲』です。
文字は一字一句同じ。






しかし平安時代には、印刷技術なんてない・・・・・・・・・です。
だから、本を増やすには「書き写す」しかありませんでした。

そのうえ「書き写す」過程で、


ということがありました。
それだけでなく、


ということもありました。
(「このキャラは好きだからもっと活躍させよう」などといった考えだったのかもしれませんね)

まぁ94万字(原稿用紙約2400枚!)も手書きするわけですから「こんなことが起きてもしゃーねぇ(*°∀°)=3」という気もします。

そして、紫式部が書いた『源氏物語』の原本は残っていません・・・・・・・・・・
残っているのは、原本を書き写した「写本しゃほん」のみです。

その「写本」は、前述のとおり「誤写」や「改変」がありました。したがって、

ということが当然のようにあるのですよ。


突然ですが、ラーメンには〇〇けいというのがありますね。

◆背脂チャッチャ系
◆北海道系
二郎じろう
いえ

それと同じように、『源氏物語』にも系統があります。


青表紙あおびょうし
河内かわち

※正確には「青表紙本」などと呼ばれます。

青表紙本の系統と河内本の系統では、内容が違います。


Wikipediaには専用ページがあり、細かく分類されていることがわかります。



古い時代の写本ほど「オリジナルに近い」と言えるので、

「なんか自宅に『源氏物語』の写本があったわ」


なんてことがあれば、新聞に載る大ニュースとして報道されます。


定家筆の源氏物語「若紫」発見
朝日新聞
2019/10/09
朝刊
27面


【※】大ニュース
2019年2月、大河内おおこうち元冬さんの東京の自宅で、『源氏物語』の写本が見つかった。
鎌倉時代の歌人・藤原定家(百人一首の撰者せんしゃ)が視写した最古の写本であった。



他にも『源氏物語』の魅力はここには書き切れないほどあります。
一人でも多くの方が、『源氏物語』に興味を持ってくださると嬉しいです★


見出し画像は、瀬戸内寂聴『源氏物語<新装版>』講談社の1~10巻です。



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