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彼女と私の妄想小話

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彼女は素敵だ。 いつでも独特の考え方、視点を持っている。 何者でもない私は、そんな彼女の存在に憧れ、嫉妬し、そして惹かれるのだ。
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彼女は、自分の人生を歩めと言った

はぁ、、、 どうにも最近しんどい。 4月から突然別の案件にアサインされ、断ることもできず担当になった。 かといって前の案件も完全に引き継げた訳ではなく、今も半分くらいやっている。 体感覚としては、完全に1.5人分くらい働いてる。 上司に掛け合おうとしたら、 「いやー、気持ちは分かるけどこっちも人がいないからさ、なんとか頑張ってよ!何かあったら言ってね!」 としか言われなかった。 何かあったら言ってね、じゃねーよ! 今しんどいんだよ! メンバーも仕事ができないし、上司も

彼女はそれを、愛と呼んだ

「世界は、愛でできているのよ」 水平線に沈んでいく夕陽を眺めながら、彼女が言った。 「こうして夕日が沈んでいくのも、 私とあなたが一緒にいることも、 世界がこうして存在することも、 全て愛なのよ。」 オレンジに染まる世界を見つめる彼女のまなざしには、一切の曇りもなかった。 「誰がなんと言おうと、 どれだけ世界が残酷だろうと、 私は私を愛している。 私はあなたを愛している。 あなたは私を愛している。 それだけで、十分なのよ。 本当は、それ以上はいらない

彼女は、世界を広げたいと言った

「あなたには、世界がどう見えているの?」 少しずつ温かくなってきたということもあり、彼女と遊園地に遊びに来た。 休日の遊園地は、家族連れやカップルで賑わっている。 普段は遊園地になんて興味のなさそうな彼女も、某世界的に有名はキャラクターの被り物をしてジュースを飲んでいる。 相変わらず無表情ではあるが、どこか楽しそうでもある。 朝から歩いたり並んだりして疲れ果てた身体を休めるため、二人でベンチに座っていると、彼女が急に冒頭の質問を投げかけてきた。 「いや、どう見えて

彼女は、夜のマンションを眺めた

「散歩に行きましょう。」 ある冬の夜、私は唐突に散歩に連れ出された。 地球温暖化の影響だろうか、今年は例年ほどの冷えがない。 とはいえ、やっぱり夜は寒い。 私は分厚いダウンに包まれ、身体を震わせながら彼女と夜の河原を歩いていた。 彼女はと言うと、同じようなダウンを着込んでいるものの、寒そうな表情はない。 すっきりとした表情で前を見て、ずいずいと歩を進めている。 気付けば、彼女の方が数歩先を歩いていた。 まぁなんというか、彼女はそういう人だ。 突然、彼女が歩を止めた。

彼女は味噌汁に無限の可能性を見た

「味噌汁にはね、無限の可能性があるのよ。」 今年に入り、私たち二人は在宅勤務となった。 狭い家に二人で過ごすのはなかなか窮屈なことが多いが、通勤時間がなくなったことは何よりもありがたい。 毎日2時間近く時間ができるのは本当にありがたいことだ。 まったく、なぜ私たちは今まで当たり前のように通勤していたのだろうか。 在宅勤務になった大きく変わったことの一つに、昼食がある。 これまで私は、常駐先の社食を利用するかコンビニ弁当で済ませていた。 しかし、家にいながらわざわざコンビニ

彼女が小説を書く理由

「私はね、諦める為に小説を書いているの。」 その日は、久々に会社の同期一同が会する飲み会だった。 基本的に客先に常駐している私は、久々に同期の顔を見て、心無しか安心感を抱いた。 社会人も3年目、なんとなく仕事のいろはが分かってきた頃だが、常に私一人だけが遅れているのではと不安を抱えていた。 だから、久々に見る同期達が、しっかりと3年分成長していながら、昔と変わらない姿をしているのを見て、きっと自分もそうなのだろうと安心したのだ。 飲み会も潮時、お調子者の集団が下ネタ

彼女は山下公園に行きたいと言った

「山下公園に行ってきても良いかしら?」 ある土曜日の朝、彼女が唐突に聞いてきた。 山下公園。 横浜みなとみらいにある、横浜港を臨む公園だ。 氷川丸やバラ園などの観光スポットもあり、休日には家族連れやカップルで大いに賑わう。 自宅から1時間程度。 特段用事もないので、私も一緒に行こうかと提案した。 すると彼女は、申し訳なさそうな顔をして「ごめんなさい。一人で行きたいの。」と答えた。 思いがけずデートの誘いを断られた形になるが、人間誰しも一人になりたい時はある。いいよ、行