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【SS】16.空気との戦い  ※クリエイターフェス

リタイア後に創作活動を始めた。ものを書くことを始めるにあたって、当たり前だが環境は必要である。PCなどを含めたもろもろ。昔と違い紙と鉛筆と消しゴムと言うわけにはいかない。そして、私が求めたものクリーンな空気の環境だった。クリーンな空気ってどうやってわかるんだと思いながら色々と妄想してショートショートにしてみた。お楽しみください。


空気との戦い

 太陽の陽が差し込むと光に照らし出されるゴミが光を反射して無数に舞っている光景を見たことは誰しもあるだろう。しかし、陽が差していないところでは反射する光がないので頭の中では一見綺麗な環境と認識するのではないだろうか?

 引っ越してきたマンションは直接陽が差し込むのは、朝陽がリビングに入るだけである。しかし、陽が当たる間はカーテンをしているので埃に光が反射している光景は見たことがない。心の中では「埃がないから」と言い聞かせて満足している。

 一方自分の机に向かってカタカタとキーボードを毎日叩いているときは、空中に舞っている埃は見えないので「いつもきれい」と思っている。ところが、机の上をよーく見るとPCの下とか後ろにうっすらと埃が見える。気がつけばウェットティッシュで拭いているのだが、拭いても拭いてもうっすらとした埃は溜まる。

 面倒臭い時は、気になる埃に対してフーッフーッと息を吹きかけて埃を払う。ん、これって空中に埃を舞わせてるってことかな? でも、自分の目には見えないから良しとしている。空気清浄機もつけてるし大丈夫だろうというくらいの感じだ。

 はたと気がついた。綺麗な空気の環境とは、自分の目に埃が舞っている状態が見えないことなんだと。見えないように埃が舞っていたとしても、自分に見えなければ気にならないのだ。これで納得していいのだろうか?

 ベランダに出る窓の枠には小さい埃があり、ベッドの下は時々綿埃のようなものがある時もある。それに、毎朝窓を開けて風を通している時、空気清浄機が反応してインジケーターが赤くなることもある。でも舞っている埃は私の目には見えない。

 窓枠のレールの埃もベッド下の埃も舞い上がっていなければさして問題にすることはないのかもしれないし、空気清浄機のインジケーターは時間が経てば消える。

 そうか、私の部屋の空気は綺麗なんだ。そーっと動いて埃が舞わないように気をつけるだけでいいんだ。

 本人がよければそれが正解ということにしておこう。



期間限定マガジン (2022/10/1 -2022/10/31)

#クリエイターフェス #ショートショート #創作 #小説 #ショートショート書いてみた


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