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【SS】18.風に乗ってやってくる  ※クリエイターフェス

朝起きると、部屋中の窓を開け、玄関の扉を開けて心地いい風を通すことが日課になっている。冬場は寒いけど通り抜ける風を感じるのは心地いい。気の流れを作ることは重要らしいのだが如何せん目に見えない。もしかしたら目に見えない何かが入り込んでいるということはないのだろうか。ということを考えながら作ったショートショートです。お楽しみください。


風に乗ってやってくる

 毎朝の風通しは必須のオペレーションだ。どんよりとした空気を室外に押し出すのは気持ちがいい。リビングの窓から玄関に抜けている風はひときわ気持ちいい。一日の始まりにふさわしいし冬場は冷たい風が入り込んで気持ちもピンとする。

 ところが、風通しをした後に変なことが起きることがよくあるのだ。全ての窓を閉めてしまった後に部屋の隅の方で「コトコト」と音がしたり、廊下の隅っこで「コロコロ」という音がすることが頻繁に起き始めたのだ。

 なんだか気持ち悪くなると共に怖くなってきた。もしかして朝の風に乗って何か悪霊でも舞い込んできたのだろうか、そうならば早く出ていってほしい。しかし、その正体は依然として不明だ。我が家にはワンコがいるが音がする時は、ワンコも音がする方向に向かって走っている。やはり空耳ではないのだ。

 私が住んでいるあたりは風が強いことが多いのだが、どうやら強い風が東から吹き込んでくるような時に異常な音が発生するような気がする。テーブルの上に置きっぱなしになっているチラシなどが一旦床に散らばってしまうくらいの強い風の時だ。時間的には、朝陽が登る前でまだ薄暗い時である。なので余計に気持ち悪いのだが、ワンコは尻尾を振ってかけずり回っている。私は気味が悪いのですぐに窓を閉めて部屋に戻る。すると音はしなくなり次第に陽が上り太陽の光が部屋にも差し込んでくる。ワンコは私が部屋に戻ると同時に後ろをついて一緒に戻ってくる。

 ワンコは何かを加えて戻ってきているのをしばらくしてから気づいた。まさか、目に見えるものが入ってきていたのかと怖くなりながらも、寝ているワンコの胸元あたりに何かあるので目を凝らして覗いてみた。 

 ワンコは、時々遊んでいる赤いボールを大事そうに抱え込んで寝ていた。



期間限定マガジン (2022/10/1 -2022/10/31)

#クリエイターフェス #ショートショート #創作 #小説 #ショートショート書いてみた


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