【SS】15.宇宙船内の戦闘 ※クリエイターフェス
毎日お風呂に入って着替えをする。出かける時は洗濯した気持ちのいいシャツを着たいものだ。我が家ではタオルとパジャマは毎日洗濯し交換する。そうすることで気持ちよく眠りにつける。ん、戦いに出るような時があれば同じことを思うのかなとふと感じてしまった。戦っている間は着替えなどと悠長なことは言ってられないだろう。ならば戦い始める時くらい気持ちのいい服を着た方がいいんだろうなと思った。ガンダムのような戦闘スーツだったらどうなんだろうと更に飛躍して妄想した結果をショートショートにしました。お楽しみください。
宇宙船内の戦闘
ウォーン、ウォーン、ウォーン、けたゝましく警報が鳴り響いている。宇宙船内の戦闘隊員は就寝中だったにもかかわらず飛び起きて着替えをした。数十秒で真新しい戦闘服に着替えてモビルスーツが保管されている部屋に向かった。ここの部隊はほぼ身長の三倍弱程度の大きさのモビルスーツなので小さめである。小回りとスピードを重視し敵の宇宙船の中に潜り込んで戦闘する作戦で活躍する。
モビルスーツ自体は戦闘の後、専用ルームで6時間のメンテナンスを受けている。最初は宇宙空間に浮遊するゴミやウィルスを除去するための除菌と洗浄を行い、表面状に施されている衝撃吸収のためのコーティングが補修される。その後、戦闘員が乗り込む部分が除菌され、光で消毒される。最後に組み込みコンピュータのプログラムチェックが実施され、出力できるパワーとレーザー銃の点検や修正が実施され、再利用可能状態となる。この6時間のメンテナンスを終えると新品同様の気持ちのいいモビルスーツに生まれ変わるのだ。
各隊員は、生まれ変わっているモビルスーツ保管庫に駆け足で入り、自分専用のモビルスーツとリンクする。リンクすることで、ほぼ意識することなく意図した通りの動きができるようになる。ここの隊員は15名で5人ずつチーム分けされている。今回出動することになったのは、Aチームと呼ばれるベテランが揃ったチームだ。
敵艦が宇宙空間から近づいてくるのをレーダーが示している。敵の大型モビルスーツは別の部隊が対応する。これから出動しようとしているのは敵艦に乗り込んで司令部を壊滅するための部隊だ。敵艦の艦砲部分の下にある緊急脱出口を外からこじ開けて侵入するのが常套手段である。
5人の隊員はモビルスーツを纏って縦一列になり、レーダーに探知されないようステルス体制で宇宙空間を敵艦目がけてまるで蛇のように蛇行しながら静かに近づいていった。すでに大型のモビルスーツ同士が宇宙空間での戦いを広げ始めている。その間隙をうまくついてチームは敵艦にアプローチしていった。何度も何度も経験している作戦ではあるが、実施するたびにチーム内の隊員は最高の緊張状態になる。
侵入用の敵艦の脱出口ハッチにたどり着くと、特殊な磁気装置を用いて音もなくハッチのハンドルを回し、静かに侵入を始めた。ハッチが開いたことによる警報や船内の温度変化による警報も磁気装置により遮断されている。敵艦の乗組員はチームの侵入に全く気づいていない。
これからチームによる管制室の制圧作戦が開始される。Aチームは、センサーで計測した船内の通路の幅と高さをプログラムに入力し、戦闘空間の学習を済ませた。折りたたみ式になっている盾となるシールドを開き、身を守る体制に屈みこんで管制室を目指し、船内通路上を五センチの高さで浮上したまま磁場を利用して静かに速やかに移動した。
通常管制室には三箇所の入り口が設けられている。チームは一人ずつ入り口の前にスタンバイし、残りの二人は後方から支援に来る敵を撃退する役割としてスタンバイした。そしてリーダーの光による合図で磁気制御装置を作動させ管制室の扉を通常通りに開き、静かに一斉に雪崩れ込んで船を制御する装置に支障をきたさないように敵の乗組員だけを狙い撃ちし、管制室にいた10人程度の敵を一掃し制圧に成功した。チームは、速やかに敵艦を制圧したことを連絡すると共に敵艦内の通路の至る所にある遮断するための扉を作動させ残っている敵を船内に閉じ込めた。こうして敵の母艦を制圧する作戦は成功し、敵の攻撃による被害は最小化された。
敵は地球防衛連合軍だ。今回の乗組員はどうやら日本人だったようだ。以前侵略に失敗した地球人ごときに何度も負けるわけにはいかなかった。地球から800光年離れた我々ゴーダー星人は、身長が60センチと地球人と比較するとかなり小さいが、敵艦乗り込み用のモビルスーツを着た隊員は180センチ程度となり地球人とほぼ同じ体格になっていたのだった。
またしても地球防衛連合軍の母艦が失われることになった。地球の危機がまた一歩近づいてきた瞬間だった。
了
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