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12月7日 クリスマスツリーの日 【SS】勘違い・世界征服

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
今日のお話は二話連続で明日完結です。


【今日は何の日】- クリスマスツリーの日

1886年(明治19年)のこの日、横浜・明治屋に日本初のクリスマスツリーが飾られたとされる。

このクリスマスツリーは横浜の外国人船員のためのものだった。ただし、この年よりも前に日本においてクリスマスツリーが飾られていたという情報もある。

株式会社明治屋は、1885年(明治18年)に横浜・万代町にて創業した会社で、現在は東京都中央区京橋に本社を置き、食料品・和洋酒類の小売・輸出入、船舶に対する納入業を営む小売業者である。


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【SS】勘違い・世界征服

 北の国でとてつもなく大きなクリスマスツリーが現れた。ここは、敬虔なクリスチャンが多く住む国ではない。どちらかといえば、敵対している国だ。それなのに、超巨大なクリスマスツリーが突如として小高い丘の上に出現したのだ。そう、出現したという表現が正しいだろう。高さは、優に百メートルを超えている。しかも、それが一晩で何本も現れたのだ。まるでクリスマスの時期に合わせたかのように。

 西欧の国では、クリスマスは国を挙げてのお祭りとなる。当然ではあるが軍隊においても少しばかり浮かれ気味になるのである。恋人や家族と約束をしている者たちもいる。残念ながら運の悪い隊員たちは、街の治安維持に駆り出されることになる。当然、気持ちは愛しい人のことを考えているので、仕事ではあるが心ここに在らずといった隊員も多くなる。平和な時代においては、それでも問題は起きない。

 誰しもがクリスマスの時は、全ての争いを忘れて楽しい時間を過ごすのだということが当たり前なのだと思い込んでいた。見方を変えれば、悪いことを企てている者たちにとっては非常に都合がいいタイミングとなる。ニュースでも北の国の巨大ツリーが話題になっている。テレビでは、いち早く巨大ツリーの話題を取り上げていた。

「本日、北の国において、巨大なクリスマスツリーが何本も出現しました。おそらくは、クリスマスを祝うために、地中でツリーを作っていたものと思われます。一気に公開するために制作過程を衛星に悟られないように配慮したのでしょう。どうやら北の国でもクリスマスを祝うモードになりつつあるようですね。これまでの敵対関係を終わらせて、国民同士が仲良く交流できるようになるのも時間の問題かもしれません」

 だが、軍の司令部は、俄かには信じがたいと考え、密かに警戒するように軍全体に指令をだしていた。杞憂に終わればいいがと思いながら、情報をチェックしていると北の国で動きがあったと報告が入った。

「報告します。北の国の巨大ツリーから、大きな花火が打ち上げられました。現在、北の国の夜空は大きな大輪の花火で埋め尽くされているようです」

 これを聞いた軍の司令部は、ほっと胸を撫で下ろした。自分たちが考えすぎていたなと顔を綻ばせながら、グラスにバーボンを注いで乾杯した。そして警戒体制を解除するように伝えた。軍の内部では、一気に緊張感が消えていった。

「職業病かもしれないな。なんでも疑ってかかってしまう癖が付いたようだ。北の国も少しは軟化してきたようだな。このまま、資本主義社会の仲間入りをしてくれればいいのにな」

「いやー、まったくですね。クリスマスの日くらいは穏やかに過ごしたいですからね。しかし、北の国のサプライズにも困ったものですな。一言ぐらい、先に話をしておいてくれればいいのにと思いませんか」

「ん。待てよ。そういえば、確かに普通なら先に通知があってもいいはずだな。まさか、もしかして」

 軍内部で再び緊張感が走った。警戒体制は解いたばかりである。そこに、いきなり報告が入ってきた。

「報告します。北の国の巨大ツリーから花火が打ち上げられましたが、複数ある巨大ツリーで花火が打ち上げられたのは一本だけでした。その他の巨大ツリーからは、ミサイルが発射されたようです。その数、十三です。発射されたミサイルは各国の首都に向かっていると思われます」

「くそ、やはりそうだったか。まんまと騙されてしまったな。ミサイル迎撃用のパトリオットは間に合うのか?」

「申し上げます。パトリオットにはミサイルが装填されていません。今から装填開始したとしても間に合いません」

「なんだと。では、我が国は、攻撃をまともに受けてしまうのか。そんなことは許されることではないぞ。なんとしてでも、迎撃するんだ。同時に他国にも早急に通知するんだ」

「かしこまりました。他国への連絡はすでに手配済みです。迎撃可能な装備を確認し、早急に対応します。おそらく残り時間は二時間程度かと思われます」

 こうして油断していた大国は北の国の不意打ちを喰らうことになってしまった。まともにミサイルが着弾してしまうと甚大な被害が予想される。しかし、今から避難指示を出してもパニックになるだけで間に合わない。軍司令部は頭を抱えた。そうして悩んでいる間にも、発射されたミサイルは各国の首都を目指してものすごいスピードで飛び続けている。すでに航海中の潜水艦も狙える位置にいる艦は一隻もいなかった。万事休すとはこのことだ。誰しもが第三次世界大戦の開戦を確信した。しかも開戦早々の甚大な被害を覚悟しなければならない。避難指示を出さなかった政府や軍に対して、民衆は怒りをぶつけてくることだろう。そんなことが脳裏をよぎり、政府の要人や軍司令部の人間はなんとか自分の身を守らなければと内心では思い始めてしまった。とうとう、首都にミサイルが到達したという報告が入ってきた。

「報告します。ミサイルは、予想時刻通りに各国の首都の上空に到達。我が国にも到達しました」

「だが、爆発音が聞こえないじゃないか。一体どういうことなんだ」

「はい。それが、ミサイルは到達しましたが、着弾していません。上空で自爆した小さな破片だけが降り注いでいます。そして夜空には」

「なんだ。夜空には、なんだ。何が起こったんだ」

「はい。大きな花火が開くと同時にメリークリスマスのメッセージが現れています」

「な、なんだと。夜空にメリークリスマスだと。一体どういうことだ」

「おそらくは、いつでも攻撃できることを示したのだと思います」

 北の国は、西欧諸国に対し強硬手段の警告を発したのである。この事件をきっかけに、北の国の存在が世界中でクローズアップされると同時に各国は北の国に対して、厳戒体制を取り始めた。しかし、北の国は少しも怯むことなく、次の一手を打ってきた。突然出現した超巨大なクリスマスツリーで何事も起きていないツリーが一本だけ残っていた。最も大きなツリーだ。しばらくすると北の国では地響きが鳴り始め、大きなツリーは綺麗に裂けるように真っ二つになり、人工衛星を積んだロケットが姿を現したのである。大きな炎とともにロケットは空高く舞い上がり、地球の軌道に乗った。そして、北の国から各国に対しメッセージが発信された。

「先日は、クリスマスのお祝いのメッセージを各国にプレゼントしましたが、今回は攻撃用衛星の打ち上げに成功し、地球の外からも各国を狙い撃ちできるようになりました。くれぐれも余計な行動を起こさないように気をつけてください」

 北の国による地球征服の作戦が開始された瞬間だった。

明日に続く


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