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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#32

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第五章 新しい関係


妖精たちの悲しみ

 プロポーズから一気に結婚式まで執り行うことになり、居候だったキヨシがワイン工場の主人になってしまった。ひとしきり、二人を祝う宴も終わり村人たちもそれぞれの家に帰って行った。トルネードからの被害も免れてメリーとキヨシは幸せのオーラに包み込まれていた。

 メリーは日が暮れてワイン樽のところにキヨシと飲むためのワインを注ぎに行った時、妖精たちの小さな声が聞こえて来た。メリーは耳を澄ました。

「ねぇ、ケーサ。もうハーサのことは忘れましょう。ハーサが一生懸命頑張ってくれたからメリーの葡萄畑が無事だったのよ」

「でも、私たちが応援に駆け付けてたら、ハーサは力を使い切ることもなかったと思うの。ねぇ、アーサ、そうは思わない?」

「そうかもしれないけど、今からではどうにもできないわ。ケーサも気持ちを切り替えて。私たちは妖精なのよ」

「そうだけど、気持ちは妖精も人間もそんなに変わらないのよね。だから、悲しいのよ」

 メリーは涙が頬を伝って流れるのを感じていた。その場に崩れ落ちた。

「そうだったのね。知らなかったわ。ごめんなさい。ごめんなさい」

 メリーの啜り泣きに妖精たちが気づいた。

「あぁ、メリー、聞いてしまったのね。ハーサは死んでしまったのよ。でもそんなに悲しまないで。ハーサは悲しまれたくないと思うわ。だって、葡萄畑が無事だったから、メリーたちは結婚することができたんだから」

「でも、私たちのせいで亡くなってしまったんだと思ったら。。。」

「違うわ、メリー。ハーサは自分の役割をイヤというほどわかっていたのよ。メリーの幸せが何よりも最優先することだっていうことを。だから幸せになってね」

「ありがとう、あなたたちは私が小さい頃から支えていてくれたのね。ありがとう。私はキヨシと一緒にこのワイン工場を守っていくわ。だからずっとここにいてね。お願い」

 久しぶりの妖精との会話が思いがけない内容だったが、メリーは自分を支えてくれる人や妖精たちが自分の周りには大勢いるんだと実感した。


つづく


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