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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#33

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第五章 新しい関係


その後のワイン工場

 メリーとキヨシのワイン作りは、何とか軌道に乗ってきた。常時働いてくれる人も三人ほど雇う余裕も生まれて来た。なんとかワインの出荷量も年間五万本を超え、熟成された樽で過去人手不足で出荷できなかった分がプレミアムなワインとして追加出荷できるようになり、十二年サイクルでワインの出荷を計画できるようにまでなっていた。これも妖精ハーサの犠牲の上に成り立っているのだとメリーは感謝していた。そして、待望のジュニアも誕生した。男の子だった。二人は、いろいろと悩んだ挙句、この男の子にケンと名付けた。

「そういえば、あれ以来ケンから連絡が無いけど元気で旅行しているのかな。何だか心配だなぁ」

「そうね、また帰りに寄るっていってもう四年も経ってしまったわ」

「僕らがこうなることができたのはケンのおかげだからな。礼をいいたいよな。立ち寄ってくれたら大歓迎しないとな」

「本当にそうね。おかげで家族もできたのだから」

 初めての子供が生まれ、子育てにも忙しくなり、年を越すたびに次第にケンのことも二人の記憶からも薄れて行った。ワイン工場の方も忙しくなり、過去を思い出すゆとりさえ無くなって行ったというのが現実だろう。

 それに、昔見えていたほのかな灯りも全く見ることが無くなり、その噂さえ村人の記憶から消えて行った。村人自体も世代交代が進み、年寄りたちは寿命をまっとうして天国に召されていくものがほとんどだった。ケンとメリーも村人の毎年の葬式とたまの結婚式への参列もあり、正装の準備だけはいつも怠ることはなかった。もっとも、普段はジーンズの作業服ばかり着ているし、街に行くことも月一回あるかないかだったので、ファッションには無頓着だった。

 そんな環境でスクスクと育って行った息子のケンもテレビすらほとんど見ることもなく、街に出かけることもなく育って行った。まるで中世に生まれた子供のような生活をしていたのだ。ただ、インターネットは山の中とはいえ利用できていたので、情報は全てインターネットで得ていたようだ。それでも、一度も家を空けたことはなくある意味外の世界への憧れを漠然と持って、学生時代を過ごしていた。そろそろ、一人で決断し行動する経験が必要な時期に差し掛かっていた。


つづく  次回から第六章に入ります


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