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11月28日 太平洋記念日 【SS】世紀の発見

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- 太平洋記念日

1520年のこの日、ポルトガルの航海者フェルディナンド・マゼラン(Ferdinand Magellan、1480~1521年)が、後に「マゼラン海峡」と命名される南米大陸南端の海峡を通過して太平洋に出た。

天候が良く平和な日が続いたため、この海を「Pacific Ocean」(平和な・穏やかな大洋=「太平洋」)と名付けた。当時、地球は丸いかどうかは、学説の一つの域を出ず、世界一周することは無謀と考えられていた。マゼラン自身はフィリピンで原住民に殺されたが、彼の船は初めて世界を一周して帰国し、地球が丸いことを証明した。


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【SS】世紀の発見

 地球から遥か遠く離れたイミテという名の惑星がある。惑星イミテでは、自分たちが住んでいる惑星は丸いということを証明するための旅が計画されていた。まるで、地球におけるマゼランが成し遂げた世界一周のような計画だ。無論、イミテの識者たちは地球という星のことを知る由もないので偶然の一致、いや、進化の過程の一致なのかもしれない。

 イミテの住人は、地球人とよく似た姿形をしている。そして、かつての中世時代を思い起こさせるような文明の真っ只中にあるようだった。大昔、大きな火山活動の後にできた、いくつかの大陸が生活の場であり、植物は緑ではなく青く、海は塩水ではなく砂糖水だった。また、太陽は西から昇るし、月は存在していない。つまり、イミテの自転は地球とは反対方向に回っているのだった。

 多くの学者が激論を交わしていた。イミテは静止していて宇宙が回っていると唱えるもの、イミテは平らで端っこに行くと滝になっていて宇宙に投げ出されると唱えるもの、イミテは球体になっていて同じ方向に行けば元に戻ってくると唱えるもの、イミテは円柱状になっていて、南北に行くと広大な平たい海になっていると唱えるものなどがそれぞれの説を熱く語っていたのだ。その中で、一人の科学者が、申し出た。

「ここで議論していても真実はわからない。どうだろう、探検隊を募って実際に船を出して調べてくるというのは」

「おお、それはいい考えだ。貴族たちに出資してもらい、船団を組んで調査してもらおう」

 こうして、イミテ惑星の形を検証するための旅は、計画された。もちろん、まだ見ぬ大陸もあるかもしれないので、準備には万全を期さなければならない。大型の堅牢な船を建造し、船員を訓練するだけで三年を費やした。そして、いよいよ出港の日がやってきた。

「マラゼン伯爵。いよいよ出航ですな。面白い結果を期待しておりますぞ」

「議長殿。お見送り感謝します。いかなる困難が待ち受けていようとも、この船団とともに戻ってまいることをお誓いします」

 船団は本体を率いるマラゼンが東西に一周すると繋がっているということを確認する航路、部下のエナルンド率いる北探検隊が北の極を目指す航路、さらにもう一人の部下であるスイリャン率いる南探検隊が南の極を目指す航路を航海する計画だった。最終的には、三つの船団が合流して帰港するという計画だ。

 こうして船団は港を出ると、それぞれ舵を東と北と南に切り、眩しい太陽の光を浴びながらも、船を押し出すのにちょうどいい風を受けて波を切り、水飛沫を後方に飛ばしながら探検に出発して行った。

 北を目指したエナルンド隊は順調に北上を続けたが、ある地点を通過したあたりから、尋常ではない寒さに襲われ始めた。どうやら球体というより直角に曲がった感覚を船員たちは感じていたようだ。そして船の向きが変わった瞬間にものすごい温度差を感じ、風の冷たさも尋常ではなくなったのだ。エナルンドは考えていた。「北の極は球体の頂点ではなく円柱状の上の面みたいになっているのではないか」と。北を指していたコンパスがぐるぐる回り始めた頃、大きな島が見えた。北の極の大陸だった。エルナンドは上陸を試みるも、あまりの寒さで大陸の中央に行くことを断念し、大陸の端の方に旗を立てて早々に船に戻り、大陸をグルリと迂回することにした。

 一方、南を目指したスイリャン隊はちょっと違っていた。進めば進むほど、少しずつ温度が低下していくのを隊員たちは感じていた。急激に船の体制が入れ替わる場所もなかった。次第に下がっていく温度に少しずつ重ね着をすることで柔軟に対応できた。それにしても、南の極までの距離が長いと感じていた。やっと見えた島影はそれほど大きい陸地ではなく中央がまるで火山のように突き出た岩が特徴的だった。スイリャンは上陸し、中央の火山のような岩場まで行き、探検隊の旗を誇らしげに突き刺して残した。

 本体を率いるマラゼン隊は、東へ東へと船を進めたが、見知らぬ大陸に出会ってしまい、やむなく南へと舵を切り替え、大陸を迂回するように進んだ。大陸の突端は半島のようになっているらしくかなり細く尖っていた。その部分をぐるりと回り、再度航路を東へと修正し進んだ。一月ほど航海した後、またしても大陸が目の前に立ち塞がった。しかし、よく見ると中央は陸同士が離れているように見える。マラゼンは思い切って、中央を進む決断をし、船団を縦一列で進むように指示を出し、中央を横切る形で進んだ。途中で、崖の上からヤリのようなもので攻撃を受けたが、陸から船までの距離は遠く、心配には及ばず突き進んだ。さらに進んでいくと、今度はカヌーのような船の大群に囲まれることもあったが、何十倍も大きな船を見た小さな小舟の集団は何もできずに見送るだけだった。なんとか、難を逃れた船団は、そろそろ食料を補充するため、どこかに上陸しなければならなくなってきていた。

 マラゼンは、大陸を横切った後に小さな島々が点在しているのを見つけるとその島の一つに上陸することを決意。乗組員に準備させた。食料調達のために上陸し、現地で交渉を試みるものの言葉は通じない。それでも、何とか食料確保に成功し荷物を船に積み込んでいる最中、盗賊に襲われてしまった。大部分の盗賊は蹴散らしたのだが、投げられたヤリが不幸にもマラゼンの胸を貫いてしまった。隊員は、大急ぎで本船に戻り、マラゼンの手当に当たったがすでに息を引き取ってしまっていたのだ。同じ船に乗り込んでいたマラゼンの息子が父親の代わりに隊長となり航海を続けることを宣言し、マラゼンの遺体を海に流して葬った。こうして、幾度かの困難を乗り越えながら、二年以上の航海を経て一行は出航した港に無事戻ってくることができた。

 北と南へ向かった船団は先に戻って来ており、報告も終わっていた。最後に戻ったマラゼンの息子率いる本船の隊も報告を済ませた。これで、やっと惑星イミテの形が明らかにされた瞬間だった。発表によると惑星はドングリの形をしているということだった。これが命をかけて航海を成し遂げた大きな成果となり、この惑星の文明の発展に大きな影響を与えることになった。もちろん、マラゼンの功績を讃え、その死を悼む盛大な式典も行われたということだ。


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