【SS】 白い天使たち #シロクマ文芸部
舞うイチゴ、スケートリンクの氷上で無数のイチゴが舞っている。まるで、意思を持って氷の冷たさを楽しむかのように、スケートリンクを所狭しとイチゴが舞っている。
そんなイチゴたちの間を縫って可憐な動きを披露しながら四隅からまるで天使のようなスケーターたちがリンクに登場した。四隅から中央に向かって時計と反対回りの渦を描くように四人のスケーターたちは、徐々に近づき、白い透き通るようなドレスを着たままジャンプする姿は天使そのものに見えた。
滑っているのは、スケートショーを盛り上げてくれるプロに転向したスケーターたちだ。会場からは割れんばかりの拍手が沸き起こった。さぁ、いよいよ、アイスショーの開幕だ。
一瞬の静けさの後、松田聖子のStrawberry Timeの曲がかかった。四人の白い天使たちが氷上で再び舞い始めた。氷の上に映し出された無数のイチゴたちも、再び命を与えられたかのように一斉に踊り始めた。そうこれは曲に合わせてイチゴたちが踊るように見えるプロジェクションマッピングだったのだ。白い氷の器の中で、白い天使を取り囲むような真っ赤なイチゴたちという構図がとても幻想的だ。
観客は全員がアイスショーの完成された美しさに魅了されていた。曲が終わると会場は割れんばかりの拍手に包まれた。白い天使たちは丁寧に礼をすると、何やらカゴを抱えて観客席に近づいていった。それは、最前列の観客席にいる子どもたちへの真っ赤なイチゴのプレゼントだった。一粒だけイチゴを残して配り終えるとスケーターたちは、そのイチゴを頬張りリンクに戻ると、両手を振って挨拶しながら一周してリンクの外へと消えていった。最後までイチゴによる演出を忘れないバーチャルとリアルが融合した素晴らしいアイスショーだった。
了
同じお題で書いたもう一つのショートショート
お題 「舞うイチゴ」で始まる小説
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