11月20日 タブレット通信教育の日 【SS】勉強ゲーム
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- タブレット通信教育の日
東京都新宿区西新宿に本社を置き、日本語ワープロソフト「一太郎」や日本語入力システム「ATOK」などのソフトウェア開発で知られる株式会社ジャストシステムが制定。
日付は2012年(平成24年)11月20日に世界で初めて、学習専用の「タブレット」を利用したスタイルの通信教育「スマイルゼミ小学生コース」が誕生したことから。同社が展開する楽しくて、分かりやすく、長く続けられる専用タブレットだけで学ぶ通信教育で、勉強が楽しいと感じる子どもを増やすことが目的。記念日は2018年(平成30年)に一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。
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【SS】勉強ゲーム
「おーい。智樹。みんなで集まってゲームしようぜー」
「えー、だって今日の宿題、結構量が多いんだけど」
「ばっかだなぁ、だから集まってやるんだよ。勉強ゲーム」
「あぁ、そういうことか。だったら、利彦を誘わないとダメだな。集まる場所は、三郎の部屋でいいよな」
小学校の帰り道、宿題のことが気がかりな三郎が声をかけ始め、一緒に宿題を片付けようという話になっていた。早い話は、頭がいい利彦を誘って宿題をやってもらい、それを残りの二人は写してしまうという作戦だ。いつの時代もずる賢い奴らはいるものだ。利彦も友達の企みを分かっていて付き合っている。それが友達同士の関係を壊さないためだと無意識に理解しているようだった。それでも利彦は友達の将来のために、自分自身で問題を解いて宿題をする癖をつけるべきなのにと内心では思っていた。
利彦には趣味で作ったプログラムを使って、みんなに勉強をさせてやろうという密かな思いがあった。三郎の家に集まって利彦がみんなに言った。
「ねぇ、みんな。どうせなら、みんなタブレット持ってるんだから、それでゲームしながら宿題やろうよ」
「えぇ、宿題は利彦担当でいいじゃん。俺ら、頭悪いし、なぁ、智樹」
「ああ、俺は三郎より頭いいけど、利彦には叶わないしな」
「ばっかやろう。俺とお前はおんなじくらいじゃないか。利彦だけが飛び抜けてんだよ〜」
「まぁまぁ、でもさ、二人ともゲームも好きだけどクイズ番組も好きじゃん。だから、僕はクイズゲームを作ったんだ。これで遊ぶと楽しく宿題ができちゃうんだけどなぁ」
「えー、宿題が楽しいわけないじゃん。でも、利彦が作ったゲームなら、ちょっと興味あるな、やってみるか」
こうして、利彦が作ったゲーム式の宿題対策アプリがみんなで共有されてスタートした。クイズを順番に協力して解いていき、最後までたどり着くと、宿題の全回答をリクエストできて、一覧で表示されるゲームだった。利彦はインストール手順を二人に教えてアプリの説明を始めた。
「タブレットに『宿題』っていうアイコンが登録されただろ。それがアプリさ。でね、このアプリは、歩くことから始まって、問題をクリアするごとに自転車、バイク、車、ボート、飛行機の順で乗り物がグレードアップするんだ、それで日本中を回って帰ってきたらゴール。もちろん、早く帰ってきた方が勝ちだよ。ゴールには、今日の宿題の回答をリクエストできるボタンが準備してあるよ」
「へー、でも利彦が参加したら利彦が一番じゃん」
「僕は、審査員だから参加しないよ。今日は、三郎と智樹の勝負だ。制限時間は一時間だよ。準備はいいかい。じゃあ、ゲームスタート!」
今日の宿題は、算数の計算問題だった。利彦は、予め宿題の内容をほんの少し変更してアプリの設定データとして入力していた。つまり、ゲームをクリアできれば計算問題を理解できているということになるので、宿題の答えを教えたとしても、勉強として身についていることになるはずと考えていたのだった。
最初の計算問題は、三桁の足し算と引き算だ。五問準備されていた。全部正解になるまで繰り返される。間違った場合は、考え方の説明が表示される。短い時間にゲームをクリアしたいと思う集中力を利用した素晴らしい学習方法だ。このアプリを小学生の利彦が作ったというのが、何とも驚きだった。三郎と智樹はだんだん、負けたくないとタブレットと睨めっこをしながら、つまづきながらも問題をクリアしていった。二人とも、いよいよ終盤に差し掛かった。最後の問題は、体積を求める問題。円柱の形の中に入っている水の体積とサイコロのような正方形の入れ物の体積を求める問題だ。三次元になったことで、三郎と智樹は頭を抱え始めた。画面の右下にあるヘルプのボタンをクリックする。すると、面積を求める公式と体積を求める公式が対比して表示された。
「あっ、なるほど。俺わかったぞ」
先に気づいたのは、何と三郎の方だった。ゲームに夢中になる力はすごいなと隣にいた利彦は感じていた。実は、二人のゲームの進み具合を見ながら、アプリとしての改善点も探していたのだ。
『一定の時間が経ったらお助けするメッセージを出した方が効率は良さそうだな。あとは、短い時間でクリアしたら、次の問題の解き方のヒントを表示するというのもいいかも。それにやっぱりポイントを貯めるのは効果的だな』
こんなことを利彦は考えながら、一生懸命にタブレットと格闘している二人を見ていた。何となく達成感を一番感じていたのは利彦だったのかもしれない。利彦は将来を見据えた両親の影響で、小学生になる前からプログラミングの学習を始めていた。張り切っていた両親はいろんな習い事を利彦にさせていたのだが、結局今ではプログラミングのみに落ち着いている。それは利彦にとっても一番楽しいこととなっていたので、利彦のプログラミングスキルは目を見張る勢いで上達していったのだ。
「できたー」
雄叫びを最初に挙げたのは三郎だった。横で智樹は悔しがっていたが、智樹も五分遅れでゲーム終了にたどり着いた。利彦はゲーム終了宣言をした。
「はい、ゲーム終了。勝者は、三郎〜」
「やったー。なんか、面白かったぞ。何で学校だと分かんないのに利彦のゲームだと理解できるんだろ。理解できると勉強って面白いんだな」
「ほんと、俺もそう思う。まさか、三郎に負けるとは思わなかったけど、すごく楽しかった。これ、毎日やろうよ。そしたら、俺たちみんな秀才になるんじゃない」
このあと、智樹と三郎は宿題の解答を見ることを拒否して、タブレットに配信された宿題を開いて解き始めた。しかも楽しそうである。利彦も自分のタブレットで宿題の解答を入力していた。利彦は最初から宿題の解答は準備していなかったようだ。
了
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