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【SS】12.AI風呂  ※クリエイターフェス

我が家では毎日お風呂に入る。最も暑いときはシャワーだけになるが、基本的にバスルームは毎日利用している。今のお風呂は自動でのお湯張りや音声での案内が標準になってきた。これから先はどんなバスルームになるんだろうと妄想したショートショートです。


AI風呂

 お風呂の自動お湯張りボタンを押すと「お風呂の栓はしましたか」と言ってくれる。だったら、自動で栓してくれてもいいのにと思ったりする。それから15分くらいしたら「もうすぐお風呂に入れます」と予告を出してくれる。そしてすぐに「お風呂が沸きました」と知らせてくれる。予告の必要性をあんまり感じない。うるさいだけである。

 いろんな文句を言ってはみたが便利になっていることには間違いない。私が小さい頃は、薪を入れてお湯を沸かした小さなコンクリート製のお風呂に入っていた。それを思えば、考えられないくらい快適だ。しかし、人間という生き物はどこまでも欲求が高くなり際限のない要求を求めるものだ。

 そんなことをお風呂のメーカーも感じ取ったのか、20年後のシステムバスは大きな変化を遂げた。これまでの発想とは全く異なった対応ができるようになったのだ。

 まず何もしないで裸でお風呂に入る。バスルームは程よい温度に保たれているので裸でも寒くも暑くもない、快適な温度だ。そして一言「お湯を入れて」という。すると、バスタブの栓が閉じて自動でお湯張りがスタート。しかも早い、あっという間だ。ものの2、3秒でバスタブいっぱいのお湯が張られた。ひとしきりお風呂タイムを楽しんだ後は、一言「お風呂掃除しておいて」そういうと、人が出たバスルームの中で、張ったお湯が洗い場や壁天井に噴射され自動的に掃除が始まった。最後は排水溝のドロドロが掃除され固形になってゴミ箱に入った。完璧である。

 バスルームを出て、体の水滴をバスタオルで拭いている間に掃除まで終わってしまうのである。次にバスルームに入る人も気持ちよく入れるようになった。

 次なる欲求は、自動で濡れた体を拭いて髪の毛を乾かしてくれることかなぁ。



期間限定マガジン (2022/10/1 -2022/10/31)

#クリエイターフェス #ショートショート #創作 #小説 #ショートショート書いてみた


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