12月26日 プロ野球誕生の日(ジャイアンツの日) 【SS】宇宙野球
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- プロ野球誕生の日(ジャイアンツの日)
1934年(昭和9年)のこの日、アメリカのプロ野球との対戦のため、現存する中では日本最古のプロ野球チーム・大日本東京野球倶楽部(読売巨人軍の前身)が創立された。
同倶楽部は、全日本代表チームの選手を中心にした選手19名により結成された。このチームが練習した場所に由来して、「読売巨人軍発祥の地」の石碑が、かつて谷津(やつ)球場があった千葉県習志野市の谷津バラ園入口脇に設けられており、長嶋茂雄(ながしま しげお)・王貞治(おう さだはる)・原辰徳(はら たつのり)ら歴代の巨人軍の監督や選手らの手形とサイン付きの石のプレートが並べられている。
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【SS】宇宙野球
はるか昔、地球の中の小さな小さな島国では、大国アメリカの野球チームとの試合を実施するために初めて野球チームが結成されたそうだ。千年以上も昔の話である。そしてその小さな島国は、現在我々が住んでいる日本なのだ。すでに、地上で「野球」というスポーツを楽しむ場所はどこにもない。宇宙服なしでは歩けなくなってしまっていたのだ。
だが野球チームは存在している。地球では各国に一チームずつ存在しており、試合場所は地球と月の中間地点の宇宙空間。今では各国にリーグは存在せず、地球代表を決めるためのゲームだけが存在している。代表戦を勝ち抜いたチームは、惑星リーグに参加して、銀河一決定戦に挑むのである。残念ながら今の所、地球チームは銀河系でトップという栄誉を勝ち取ったことがない。
少しだけ宇宙空間で行う野球の説明をしておこう。まず人数だが十五人で一つのチーム編成をする。天井や地面の無い宇宙空間で実施するため、外野が上下に三名ずつ追加されているのだ。よって、自分の位置よりも下の方に打ってもファールにはならない。そして最も違うのは、全員がモビルスーツを着るという事と、グローブは使わないし、ボールの大きさは地上で実施されていた頃と比較すると百倍の大きさになっていて、バットは磁力線を発生する装置に取って代わっている。ボールにも磁力があり、バットでミートすれば反発するのだが、ミートしない場合はバットに吸い付いてしまう仕掛けになっている。ミートしたボールで野手が取れなかった場合は、自動で戻ってくる仕組みも備わっている。それ以外は地上で実施されていた野球とほぼ同じルールが適用される。イニングも九回までだ。ただし延長戦はない。空気の残量を考慮しなければならないためだ。
今日は、地球代表決定戦が開催される。対戦は、日本対アメリカで、常勝国はアメリカだ。今年こそ一矢報いたい日本チーム、その要の選手は大谷だった。歴史の本にも登場する大谷翔平の子孫に当たるらしい。今年の大会で初参加となり、活躍が期待されている。何とか日本を地球代表にしたいという願いを一身に背負っての参加は相当なプレッシャーなのだろう。しかも、着用するモビルスーツも特別に専用に制作され、中に入る大谷選手の動きと完全にシンクロするようになっている。
試合は始まった。両チームとも一歩も譲らない戦いで、塁に出るものの得点には結びついていない。すでに七回まで終わり、これから八回表。アメリカチームの攻撃である。四番打者がバッタースペースに立った。ピッチャーの手を離れたボールは揺れながらバッターに近づく。スピードは時速二百キロ。タイミングを合わせた宇宙空間でのスイングだ。その磁力はボールのスウィートスポットを捉え、足元下へと勢いよく弾き返された。外野が慌てて追いかけるが間に合わない。本ゲーム初のホームランとなり、地球で観戦している衛星放送の画面の前では大歓声が湧き上がった。アメリカチーム、待望の先制点である。
満を持して、日本チームは大谷がピッチャーとして登場。またまた、大歓声が地球上の日本では起きていた。大谷のモビルスーツは、ダイナミックなモーションでボールを投げた。上下左右の揺れ具合が半端ではない。バッターは狙いを定めることができず思わず空振り。そのまま、後続打者も三振となり、八回裏、日本チームの攻撃に変わる。
日本チームの一番打者がうまくボールを捉え、ポテンヒットとなり一塁に出た。チャンスである。次のバッターは大谷翔平の子孫。期待が高まる。アメリカチームのピッチャーも投げにくそうだ。その瞬間、ピッチャーは緊張からか投げ損なってしまった。それを大谷は見逃すことなく、ジャストミートした。大きなボールはものすごい反発力で弾き返され、自動的に戻ってくるように制御されているにも関わらず、見えなくなる場所まで飛んでいってしまった。危うく月面に落ちてしまうところで、月の弱い引力だったことで助けられ、かろうじてボールが戻ってきた。もちろん、文句なしのツーランホームランである。二者生還で逆転。選手達も大喜びである。その後は、何とか押さえ込まれてしまいチェンジ。アメリカチームの最終攻撃の回となったが、完全に流れを自分のものにした大谷の前では抵抗虚しくゲーム終了。日本チームは初めての地球代表という栄冠を掴んだ。負けたアメリカチームは連続優勝を途切れさせてしまったことで、選手全員が肩を落としていた。
日本チームは、初めての地球代表という名誉を受け、これから惑星リーグに挑戦することになる。去年の惑星リーグでは、木星チームが総合優勝を飾っていた。今年は火星チームもかなり強いという前評判である。これから惑星間総当たり戦が始まり、上位三位までのチームで再試合され、銀河系でのトップが決定されるのだ。
もし、地球代表の日本チームが優勝でもすれば、日本チームが地球代表として銀河系の惑星リーグで初めて優勝した日として記念日に掲載されることだろう。惑星リーグは来週から始まる。テレビ放映が楽しみである。
了
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