11月14日 アンチエイジングの日 【SS】不老不死
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- アンチエイジングの日
東京都千代田区丸の内に事務局を置く特定非営利活動法人(NPO法人)アンチエイジングネットワークが2007年(平成19年)に制定。
日付は「いい(11)とし(14)」(良い歳)と読む語呂合わせから。生活習慣病を予防する予防医学の定着と、年齢を重ねてもいききと活躍するための活力となる「見た目の若さ」を保ち続ける方法の認知拡大が目的。自分自身の心と身体に向き合う日としての普及を目指している。
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【SS】不老不死
人類にとっての最大の敵は、老いである。時間と共に老化していく体は、個体差はあれども必ず訪れ死に至る。そのことを忘れるかのように日々を懸命に生き抜いているのが人間だ。日々、戦争に明け暮れたり、人を騙して財を築いたり、悪事を行い刑務所で過ごしたり、慎ましやかに小さな幸せを追い求めて我慢の日々を過ごしたりと人の一生はさまざまである。昔から変わることはない。財産のある家に生まれていれば、人生が変わっていたはずだという人もいると思えば、金持ちの家に生まれたが故に窮屈な生活を強いられている人もいるのである。総じて隣の芝は青いのである。どんな人生を送っていたとしても、いつかは老いていくのである。
中国の秦の時代、皇帝は聞き及んだことを元に配下の者に指示を出していた。年老いていく自分自身をなんとかしたいと切望していたのだ。もっと長く自分の時代を継続させたいという強い願望を現実のものとするために。
「日の出ずる国に不老不死の薬があると聞く。その方たち、探して必ず持ってまいれ。この国を永遠に治めるためにも是が非でも手に入れたいものである」
「ははー、かしこまりました。必ずやご期待に添えるようにいたします」
こうして、不老不死の薬を探すためのチームが編成され、特別な船も建造された。満を持して吉日を待ち、いよいよ船は大陸から離れ航海に出た。たどり着いたのは九州の西にある小さな街だった。不老不死の薬を探すチームは、密かに上陸を試みた。そこで一行が目にしたのは、美しい真珠を取り出す光景だった。
「おお、なんと美しい玉だ。これで首飾りを作れば皇帝も喜んでくださるに違いない。早速、この金と交換をしてもらってこい」
配下のものが金を携え、真珠を取り出している場所のリーダーと思しきもののところへ行った。もちろん、言葉が通じない。身振り手振りで、物々交換の意思を告げながら、金を見せると、喜んで応じてくれた。山のような数の真珠を袋に入れて渡され、喜び勇んでチームのいるところに戻った配下は胸を張って報告した。
「交換をしてまいりました。このように山のような真珠と交換ができました」
「そうか、そうか。よくやった。どれどれ、見せてみよ。ん、なんだこれは、粒の大きさはバラバラ、しかも歪な形のものばかりではないか。こんなもので首飾りを作って持って帰れば、我々は斬首されてしまうぞ。この愚か者め。お前は騙されたのだ」
別の配下のものが別の場所に偵察に出ていた。そして、自分の仲間が、叱責されているのを見て、なんとかしなければと思い、自分が入手した情報をチームに報告した。
「申し上げます。ここから見える小さな山の方に行き偵察してきました。山の麓には多くの若い住民が住んでおり、口々にフロウサンと山のことを呼んでおりました。ただ、この国の言葉は理解できませんでしたので、板に書いてあった文字を書き留めて持ってきました。これでございます」
そこには「不老山」という文字が書いてあった。それを見たリーダーは首を大きく縦に振り、ニヤリと笑いながらみんなに話した。
「どうやら、この山に不老不死の薬が隠されているらしい。住民が若いというのもそのためだろう。それに、この山の名前がそれを表しておる。麓の住民はこの山の守備隊が住民のふりをしているのかもしれない。よし、夜が明けたら、山の反対側から入って不老不死の薬を探すぞ。その際には山の中に入ってくる麓の住民を監視するんだ。きっと、薬の在処に案内してくれるはずだ。今日は腹一杯食って明日に備えておけ。あぁ、それから真珠を持ってきたお前、捜索が終わったらお前の処分を考える。明日はお前も捜索に加わるんだ。いいな」
「かしこまりました。明日、なんとか挽回いたします」
こうして捜索隊は、翌日密かに山に入った。天候は快晴で気持ちの良い風がそよそよと吹いている。森の中で人がやってくるのを待っていると、集団となった麓の女性たちが歌を歌いながら楽しそうに山に入ってきた。捜索隊は、女性たちに気づかれないように少し離れて後をついていった。到着した先はなんと温泉だった。温泉の横に似つかわしくない小屋が建てられていて石臼などが置いてある。そして、捜索隊は茂みの中に隠れて女性たちの行動をし続け、驚くべき光景を目の当たりにしたのだった。
「隊長、あの女たち、真珠を石臼の中に入れて、挽いています。なんて勿体無いなことをしてるんでしょう」
「待て、何か理由があるはずだ。もうしばらく様子を見よう」
石臼で挽いていた真珠は細かい粉となった。ひとしきり粉挽きが終わると女性たちは汗を流すためなのか、きていた着物を脱ぎ温泉に入っている。それを見ていた捜索隊はニヤニヤし始めている。辛い捜索もなんだか報われるという顔つきである。ニヤけた顔で見ていると、またまた驚くべき光景を見ることになった。なんと、汗を流した女性たちは、真珠を挽いた粉を顔や体に擦り込み始めたのだ。捜索隊は口をアングリと開けたまま信じられない光景を見続けた。そして女性たちは、真珠の粉を飲み始めたのだ。隊長は、この光景を見て確信した。
「なんということだ。不老不死の薬とは真珠の粉のことに違いない。昨日、金と交換した真珠を早速粉にして塗り薬と丸薬にしよう。おい、お前、お前の処分は取り消しだ。お前が持ってきた真珠を粉にするぞ」
こうして、不老不死の薬と信じて手に入れた真珠の粉を捜索隊は持ち帰った。真珠の粉は確かに肌に潤いを与えたり、栄養補給に役にたつものではあったが、残念ながら不老不死の薬ではなかった。それは歴史も物語っている。
了
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