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11月4日 いいよの日 【SS】認められたい

日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。


【今日は何の日】- いいよの日

兵庫県神戸市の聴きプロ、北原由美氏が制定。

日付は「い(1)い(1)よ(4)」と読む語呂合わせから。ひとり一人の思いは誰にも否定されることなく、どう思っても「いいよ」と受け止めるのが聴くということ。「いいよ」とほめる社会、「いいよ」と許す社会になればとの願いが込められている。キャッチコピーは「どう思ってもいいよ 受け止めるから 聴きプロがつくったいいよの日」。記念日は一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録された。


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【SS】認められたい

 SNSが当たり前の日常になって久しい。かく言う私もその波に呑まれている一人でもある。時折投稿するだけのユーザーではあるが、それでも「いいね」というマークの数字が多いとつい、ほっぺが緩んで微笑んでしまう。人は誰しも注目されると嬉しいものなのだということを自覚させられる瞬間である。かといって、大衆の前に立って拍手をもらったり、スピーチをして共感を呼ぶというような行為に憧れているわけではない。むしろ逆である。できれば人前には立ちたくないし、人が多いところには行きたくないという性格である。ところが、SNSの世界は不思議な魔力があるのか、自分が投稿した記事に「いいね」がつくと嬉しくなるのである。世の中で注目されている人たちの中には、そのことが、どんどん投稿を増加させていくパワーとなってしまい、なれの果ては「いいね」を貰うことが究極の目的であるかのような投稿も増加して社会問題にもなっている。

 先日のテレビでは、無賃乗車や無銭飲食で日本を旅する外国人のユーチューバーの投稿が問題になっていた。フォロワーの数は二百万人越えというから凄く人気があるのだろう。日本の各地で警官と揉めたり鉄道職員と揉めたりしている場面も平気で投稿している行為は理解し難い。バスに乗って八十円不足し運転手と口論になって、警察が介入する場面も放送されていた。ユーチューバーは「たった八十円足りないくらいでどうしてこんなに足止めをされるんだ」みたいなことを言っていた。金額の大小ではなく、やはり支払わない方が間違っている。そう考えるのは日本人だけだろうか。新幹線ではトイレに立てこもって車掌のチェックを逃れ、運賃を誤魔化そうとしていたり、やっていることが非常識だった。こんな動画が多く再生されてフォロワーを増やしているかと思うと、これからの世の中がちょっと怖くなってきた。

 ネットへの投稿内容はどんどんエスカレートして、無法地帯を広げているかのようにも感じる。現代社会が生み出したネット上の無法地帯である。見ている人たちは、面白ければいいのだろう。見ている方には罪はないと思っているのだから。見ていること自体が疲れ果てた現代社会の中で、ストレス解消になるのだろう。まるで、ローマ時代のコロッセオで奴隷たちを戦わせて喜んでいた民衆と同じに見えてならない。

 そんなネット社会も、当たり前ではあるが、あながち悪いことばかりではない。とかく悪いことの方がニュースになったり、目立ってしまうものである。ネット社会は現実の世界に存在する「距離」をかき消してくれる効果があり、思いを同じくする人たちが、地球上のどこからでも、自分の好きな時間に情報を共有することに大いに役立っているのである。英語を習いたい時には、先生は遠い国にいたとしても、ネットを介して会話する環境を提供してくれる。また膨大な情報が溢れかえっているので、調査したい時はネットにアクセスすることで時間短縮も計れる。それにも増して、同じ境遇にいる人たちがネットを通して励まし合い、生きる力を共有している世界をも築いている事例もある。

 重い病にかかっている子供達やガンにかかっている人たちがいる。それだけでも相当な心の負担を背負って日々の治療に専念しているはずだ。同じ病院の中にも同様に苦しんでいる人たちがいてお互いに励まし合ってはいるが、その輪が世界中に広がることで同じ境遇の苦しさを共有し、大きな生きる力へと変換し病に立ち向かうことができているようだった。とある九歳の患者が言ったそうだ。

「僕たちは生きることを楽しむために生まれてきたんだ。だから、頑張るんだ」

 こんな言葉を聞かされれば、頑張ろうと思ってしまうだろう。素晴らしいネットの活用方法ではないだろうか。多くの人を勇気付けられるSNSの利用は、誰しもが拍手で称賛するだろうし、エールも送ってくれるだろう。

 今では生活のインフラとなってしまったインターネット環境ではあるが、やはりそのインフラを有効に使うかどうかは、一人一人にかかっているのだ。承認欲求を満たすためだけに不愉快な記事を投稿することは好ましくはない。そうではなくて、共感され、共に支え合うような内容に対し「いいね」と言う行為をしたいものだ。

 自宅からでもスマホからでも、容易なアクセスが可能となった現代では、それほど深く考えずに、ネット上に投稿してしまう人が増えてしまったのだろう。人に与える影響や自分に返ってくるリスクを考慮した発信をしてもらいたいものである。また、逆境に負けず前に進むために頑張って発信している人には心からエールと共に「いいね」を送りたい。


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